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ちんこ短し恋せよ乙女 作者:真木あーと
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第二節

「起きなさい、朝ですよ?」
 なんだか優しげな声に目が覚める。
 ん? 誰だ?
 俺は親に起こされるまでもなく自分で起きてるので、誰かに起こされるってことはない。
 寝ぼけた目を開いて部屋を見回すと、パジャマ姿の伊澄。
 あれ? なんで部屋に伊澄がいるんだ?
 えーっと……。
 はっ、やばい!
 俺は下半身を確かめる。
 大丈夫だ、脱がされていない。
「甘いわね鷹士。私がその気だったら、あなたはもう三回はちんちんを見られていたわ?」
 さっきとは一転して、なんだか不敵な態度の伊澄。
「お前、何で俺の部屋にいるんだよ?」
「甘いわね、そんな常識的な発想だと、ちんちんを隠すなんて出来ないわ」
「いや、お前こそ常識を考えろよ」
 ちなみに伊澄は朝起こしに来てくれるタイプの幼なじみじゃない。
 どちらかと言うと、こっちが起こしに行くタイプだ。
「で、何しに来たんだよ?」
 俺は苛立ちを隠さずに言う。
「あなたがどれだけ油断しているか、教えに来たのよ」
「暇だなあ、寝起きに来たなら、そのまま見ればよかったんじゃないか?」
「そう思うのが素人の朝香さん」
「お前、後で種村に謝っとけよ」
 ちなみに、種村朝香ってのは、俺たちの同級生だ、まあ、素人なんだろうけどさ、そういう言い方すると、なんかいやらしく聞こえるから、日本語って難しいよね。
「そんなことはどうでもいいわ」
「じゃあ、話を進めろ」
「何の?」
「お前がここに来た真の理由をだ!」
 さすがに寝起きで、テンションあげて突っ込むのは、ちょっとめまいがする。
「それは、ひみつよ」
 すると、なんだか伊澄は可愛く口にてを当てて言いやがった。
「だったら何しに来たんだよ!」
「あなたがどれだけ油断しているか、教えに来たのよ」
「話が戻ったなあ!」
 駄目だ、話が進まない。
「だから、なんで寝てる間に見なかったんだよって話だよ!」
「そう思うのが素人の──」
「それはいいから話を進めろ」
 全く同じ話になってたので俺は強引に止める。
「昨日の鷹士の態度。あれに私はとっても怒ってるのよ。だから、私は鷹士に復讐することにしたの。私はもう、密室であなたのちんちんを見てあげない。教室や街の中みたいなところで、みんなと一緒に見てあげるわ」
 多分、本人は不敵だと思っている笑みを浮かべながら、伊澄が言う。
「お前はアホか」
「自覚はないわ」
「自覚してたらもう少しマシになるのになあっ!」
 まったく、何なんだこいつ。
「あなたはみんなの前でちんちんを見せるのよ。その覚悟をなさい」
 なんだかわけの分からないことを言って、伊澄は部屋を出ていった。
 本当に、何しに来たんだあいつ?
 なんで俺、あんなやつの幼なじみ続けてるんだ?
 俺はため息をついて、一応周りを確かめて着替えを済ませた。
 ちなみに、後で伊澄を迎えに行くとまだ準備が出来てなくて、大慌てで半泣きになっていた。
 低血圧の癖に無理して早起きしてんだろうが、自分の準備してから来いよ、全く。

「今日は絶好のちんちん日和ね」
 光に手をかざし、優雅な口調でそんなことを口走る伊澄。
「もう少し音量を落とせ、ここは通学路だぞ?」
 通学路でも、伊澄のテンションは落ちず、なんだかそのまま時々俺の股間を凝視して「絶対見る。みんなに見せる」とか呟いていた。
 いつもはテンション低いというか低血圧というか、黙っていれば上品なお嬢様なんだが、今日はやけにおかしい。
 こいつ、普通に警察に突き出したら逮捕されるんじゃないか?
「じゃ、学校なら言っていいのよね?」
「駄目だ、まあ、お前の馬鹿さを知ってる連中だけの中ならいいけどな」
「私が馬鹿だと思っている人間はどこにもいないわ」
「お前がそう思うならそうなんだろうな、お前の中ではな!」
 残念なことに、こいつの性格はみんながよく知っている。
 「一見上品で、行動が馬鹿」という部分が、「一見上品だが、行動が可愛い」にすり替えられて覚えられており、誰からも愛されるか嫌われるかの両極端な奴だ。
 今のクラスでは誰もが愛する側に回っているから困る。
 ちなみにうちの高校は二年前まで男子校だったが、少子化の影響で共学になった。
 で、学校のそばには俺たちの住む団地があり、その周囲にはいくつもの団地が固まっている。
 そこにちょうどいい共学が出来たということで、女子が挙って受験した。
 だから、すぐに男女ほぼ同数になったらしい。
 更に俺らの中三の頃には、近所のお嬢様高で不祥事があり、一年間体育系文化系含めて対外活動を自粛する事になった。
 だから、急にうちの学校を受験する女子が増え、その分男が弾かれて、女子が七割という事態になってしまった。
 まあ、別に男子がいないわけじゃないから問題はないんだけどな。
 とにかく、女子の比率が多いわけだ。
 その大抵は伊澄を受け入れて仲良くやっている。
 それは俺にとっても喜ばしいことだ。
 伊澄は中学時代にはあまり友達がいなかったからな。
 まあ、それも仕方がなく、中学生の精神年齢では、伊澄のこの性格を許容出来ないんだろう。
 それを考えると、生徒の側が成長して、今、こいつがクラスの中心にいることは幼馴染としても喜ばしい。
 だが、クラスの中心にこいつがいるからこそ、こいつに嫌われると、クラスの女子全員に嫌われることになりかねない。
 実際、過去にそうなりそうになった事は山ほどある。
 俺はこいつがそういう暴走をしそうになると、止める役割を担っている。
 それでクラスの平衡が保たれている。
 が、それだけに俺がターゲットになった時に、誰も守ってはくれない。
 これが要注意だ。
 伊澄がただの馬鹿ならいいんだが、こう見えて周到に用意して動くことがあるからな。
 前に、理科の神田先生がカツラじゃないかという話になって、何とかしてカツラを取ろうと思ったあいつは、クラスメートを使って先生を油断させ、見事カツラを取ることに成功している。
 そこに至るまで、俺に秘密裏に事を運ぶだけの頭脳はある。
 で、協力させられた女子生徒は、頼まれたから協力したけど、自分が何の目的でやっているのかを知らなかったらしい。
 これが一番恐ろしいところだ。
 普通、人ってのは自分が何でこんなことをやるか、全体の計画を聞いて、その人の役割を聞いて、面白そうだから協力するものだ。
 だが、伊澄の場合は「何だか分からないけど、棚華さんならきっと面白い事をしてくれる」と期待され、みんな喜んで協力してくれるのだ。
 つまり、俺の股間を見るために、周りにそれと知らせずに協力させるということもあり得る。
 それは怖い。
 だが、だ。
 伊澄は男子生徒の股間ガードを甘く見ている。
 女の子があんな短いスカートで鉄壁のガードをしているのと同じように、男には股間を無意識にガードするという本能がある。
 俺がちんちんを見せるためには、ズボンを脱がなければならない。
 だが、ズボンはベルトでガードされている。
 俺のベルトは外すのに少なくとも数秒を要する。
 しかも俺が抵抗すればそう簡単に外されることもない。
 俺だって腕力が強いわけじゃないが、女子に負けるって事はまずない。
 これでも何とかしたければ、女子全員で俺に襲いかかってズボンを脱がすしかない。
 だが、さすがに女子に俺のズボンを脱がせろ、なんて言ってもみんな躊躇するだろう。
 世の中では伊澄という女子は特例で、普通の女子は男の衣服に触るのすら緊張するような子達ばかりだ。
 まあ、伊澄にしても俺が特例ってだけで、普通の男が相手ならそんな感じだろうけどな。
 こんな不利な状況でどう出る、伊澄?
 心の中でそんなことを考えながら、俺と伊澄は学校に到着した。
「みなさん、ごきげんよう」
 クラスに到着すると、当たり前のように全員に挨拶をする。
 お前は教師か。
 それに挨拶を返す者、軽く笑いかける者、ほとんど無視する者。
 そして、友達の中に埋もれていく伊澄。
 俺は伊澄から離れて自分の席に行く。
「おはよう、亜様くん。今日も棚華さんと登校したんだね」
 隣の席の可愛(かわい)が挨拶をながら微笑む。
「まあな、あいつの家、俺の向かいだし、起こしに行ってるからな」
「ふーん……そうなんだ」
 可愛の顔が少し歪む。
 うん、そういう、嫉妬みたいな態度をされると色々期待してしまうよな。
 彼女は可愛結愛(ゆめ)
 名前の通り可愛い女の子だが、伊澄みたいに目立つ人間じゃなく、言い方は悪いが、目立たない可愛さだ。
 まあ、普通ってのは性格面だけの話で、可愛さだけで言えば、伊澄と同レベルだ。
 ただ、そう目立った性格じゃないので、伊澄がいるクラスでは沈むってだけで、普通のクラスにいれば、人気一位の女の子だろう。
 長めのストレートの髪はさらさらで、肌も白いし清潔感もある。
 そんな子にさ、ちょっとでも伊澄と仲がいい事を嫉妬されてる風な態度取られると、ちょっとくらい期待してしまうのも仕方がないだろう。
「そう言えばさ、可愛は──」
「亜様くん、ごめんっ!」
「うおっ!?」
 可愛と小粋な朝の会話でもしようかと思っていた時、いきなり背後からそんな叫びと共に、胸の下あたりに手を伸ばされた。
 って言うかこれ、普通に後ろから抱きしめられてる!?
 声は女の子のものだし、背格好もそんな感じだし、背中になんだか柔らかいものが当たってるし!
 更に言えば、目の前にいる可愛が驚いた顔をしてる。
 これは男の俺がいきなり女の子に抱きしめられたからだろう。
 などと冷静に分析している間に、可愛の背後からは伊澄が忍び寄っていた。
 俺がそれに気づいた時には、もう俺の目の前に伊澄がいて、俺の制服のズボンを掴んでいた。
 この時、俺は、伊澄の計画の全貌を知った。
 伊澄が何故朝、俺の部屋にいたのか。
 それは細工をしたかったからだ。
 俺の、そう、俺を守る最後のガードである、このベルトに。
「観念することね!」
 既にドヤ顔の伊澄は俺のズボンを引き下げる。
 ベルトはあっけなく弾け飛び、俺のズボンは足首まで下ろされ、それに引きずられて、パンツも落ちる。
 そう、俺は教室のど真ん中、女子が七割の教室の中心で、下半身に纏うものを失ったのだ。
 教室中の視線が、俺の股間に集まっているのが分かる。
 ……え? なんだ、これ?
 股間の涼しさよりも、何か熱いものを感じている。
 これは、見られることによる、興奮……?
 い、いや! そんなはずはない! 俺は露出狂の変態じゃない!
「これは、やっぱりウェアード(包茎)!」
 一番間近で、俺の股間を凝視している伊澄が叫ぶ」
 認めん!
 俺は認めんぞ!
 こんな……。
 こんな包茎を見られて興奮しているなんて……っ!
「あ! アップ(勃起)!」
 だが、身体は正直だ。
 俺のそれは、見られることで大きくなり、頭を持ち上げるまでになった。
 俺はそれを隠そうとはしなかった。
 心の底から興奮しているのを感じる。
「こ、これは……」
 伊澄がさっきまでと違い、少し神妙な声で何かを言う。
トゥルー・ウェアード(真性包茎)!」
 伊澄の興奮の息が、俺の股間にも吹き付ける。
 もう、全てを認めるしかない、か。
 そうだ、俺は真性包茎で、しかも見られて興奮する人種だったのだ。
 ああ、もう全て認めよう。
 可愛は一瞬見るも、目をそらした。
 他の子もそうだが、中にはじっと見てる子もいる。
 だが、その目は、汚い物やグロテスクな物を見た時の目じゃない。
 可愛くて微笑ましい何かを見た時のそれだった。
 伊澄は至近距離でしゃがんで見ている。
 こいつは拳骨をくれてやる。
 そして、その後は、死のう。
 俺が死を決意したその時。

 ぐいっ

 俺のズボンが持ち上げられた。
「ぎゃぁぁぁぁっ!」
 そしてそれは俺のおっきしたマイサンにベルトを思いっきりぶつけ、俺はのた打ち回った。
 死ぬほど痛い。
 これが生きてるって事か。
「ご、ごめんなさいっ!」
 俺のズボンを持ち上げた可愛が思いっきり謝る。
 俺は気にするな、むしろ助けてくれてありがとうと言いたいが、それどころではなく、ただ、床を這いずってのた打ち回っていた。
「鷹士! やっぱりあなたは私の思っていた通りの人だった!」
 そんな中、この騒ぎの張本人は俺に謝るどころかなんだか興奮していた。
 こいつ、もう、痛さ爆発と言われてもいいから、泣くまで殴ってやりたい。
「鷹士は、ギフテッド(与えられし者)だったのね!」
 何、興奮してるんだこいつ?
 痛みが治まって来た俺は、この全力の羞恥を全力の怒りに変えて、これから伊澄に報復することだけを考えていた。
「鷹士!」
 その報復相手の顔が、間近に迫る。
 近いって!
 息がかかるくらいの距離に、興奮した伊澄の顔。
 伊澄は俺の身体の上にまたがって押し倒すような姿勢で俺に迫っている。
 ちなみに俺の股間は半隠れ半アップ状態だ。
 まずい、このままじゃまじゃまた全アップになってしまう!
「みせちんに、なってみない?」
 鼻が擦れるくらいの距離で、伊澄がわけの分からない事を言う。
 いつもそばにいるから知ってるけど、伊澄の匂いっていい匂いなんだよな。
 そんな間近でそんな事を言われると……。
 そんな事?
「みせちんって、何だよ?」
 俺はそこだけが気になって、聞き返す。
「それは、ちんちんを──」
「だめぇぇっ!」
 説明しようとした伊澄が、俺の目の前から消える。
「きゃぁぁっ!」
 伊澄は悲鳴を上げながら吹き飛ぶように俺の左側に転げる。
 寝転がった俺の位置からはもろに伊澄のパンツが見えたが、すぐにスカートを押さえた。
 自分は見るが人には見せないってわけかよ。
 いや、それよりも……。
 今、位置的に考えて、可愛が押したのか?
 あのおとなしい可愛が、伊澄を?
「あ、おい、大丈夫か、伊澄?」
 俺は転んだ伊澄に声をかける。
「たたた……」
 伊澄は元からバランスの悪かった姿勢から転んだので、腰か尻を打ったようだ。
 そして、痛がる伊澄の脚が見える。
 躾けられている伊澄は無意識にスカートを押さえているが、そこからちらちらとパンツが見えてしまう。
 伊澄の今日のパンツはディープブルーだった、渋い。
 ここで、お前らしいな、とか言えたらいいんだが、生憎俺はそんな心境ではないし、股間フルアップ状態で女の子のパンツを見ているというこの状況が、なんかもう色々駄目だった。
「はいみんな、席に座れー」
 担任教師の登場に、俺は慌ててズボンを上げ、パンツを見られて少し恥らっていた伊澄も立ち上がって席に戻って行った。
 そして、何事もなく、ホームルームが始まった。
 もちろん、そう思っているのは先生だけで、生徒たちは今朝起きた異常事態をまだ飲み込めずにいた。
 俺はもう、死にたいとだけ思ってホームルームを過ごした。
「……大変、だったね」
 ホームルームと一限目の間の短い時間、可愛が話しかけてきた。
「まあ、な。あいつといるといつもこんな感じだが、今日のはひどかった」
 さっきまで死のうと思っていた俺だが、可愛の手前、いつもの延長だから問題ないという事にした。
「……あのさ」
「ん?」
「……ならないよね?」
「何に?」
 可愛がもじもじと頬を少し赤くしながら言い淀んでいる。
「?」
「……なっちゃ駄目だから、ね?」
 言っている意味が分からず聞き返そうとしたら、一限目の先生が来て、話はそれで終わった。
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