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ちんこ短し恋せよ乙女 作者:真木あーと
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第十三節

 大久保さんは本当に人生終了しそうだったが、結愛を宥めるのを伊澄が止めたので外からこっそりと見守っていたが、弱り切った大久保さんに結愛が交換条件を持ち出して、東洋太平洋チャンピオンとのマッチメイクに協力する事で許す、という事にしてた。
 あれ、俺の知ってる結愛じゃない。
 可愛結愛という女の子は目立たないけど、可愛くて、だから静かに人気があって、俺も隣の席になって、本当に嬉しかったんだよな。
 その可愛と今の結愛が違いすぎる。
 可愛いと思って結婚したらやたらタフな肝っ玉母さんになるタイプだな。
 ……いや、結婚とかまだ考えてないし。
 まあ、そんなわけで、俺は日本チャンピオンになって早々にそれを返上し、国際ライセンスを取得することになった。
 そして、最初の対戦相手はいきなり東洋太平洋チャンピオンのパナラット・エメカセムというタイ人らしい。
 えっと、俺、三戦目だぞ?
 誰、パナラットって?
 検索したら、女性に多い名前っぽい。
 さすがに相手が女性ってことはないだろうけど、当たり前だけど世界戦になると外国人との対戦になるんだよな。
 言葉も違うんだよな。
 その辺の話し合いをしたいと伊澄が言うので、今日は伊澄の家に集まることになっている。
 いや、日曜日だし、他に用事もないからいいんだけどさ、隣だし。
 だけど、結愛は電車で来るんだぞ? まあ、定期持ってるけどさ。
 ま、日曜はカフェもファミレスも混んでるから、家ってのは一番いいんだろうけどな。
 そんなわけで、午後からのミーティングのために飯食ってると、親父も飯を食いにキッチンに現れた。
「よお、鷹士。久しぶりだな」
「ああ、うん、まあな」
 親父は社長をしている関係上、夜も遅いし、海外出張も多いから、会える機会が結構少ない。
 親父に会えなくて寂しいって歳でもないが、毎日会えればウザったいと思うんだろうが、なかなか会えないとちょっと嬉しいんだよな、これが。
「今日は何してるんだ?」
「えっと、午後から伊澄の家に行くことになってる」
 もちろん、みせちんの作戦会議に行くなんて言えるわけがない。
「そっか、仲いいな、お前と伊澄ちゃん。普通お前らの歳になったら気まずさが先に立って離れるもんだぞ? 大切にしろよ? その関係をさ」
「ああ、もちろん大切にする」
 言われるもまでもないが、俺と伊澄の関係は一年二年じゃないからな。
 俺としてもくだらない理由で関係を崩したくない。
 ま、俺が崩そうとしても伊澄が黙ってないだろうがな、中学の時みたいに。
 親父に応援されていちゃ、もう関係を崩すことなんて出来ないよな。
「ところでさ、お前──」
 親父は話を変え、何気ない様子で切り出した。
「みせちんの日本チャンピオンになったんだって?」
「ぶっ!」
 俺は思わず吹き出してしまった
「な、なんで親父がそれを知ってるんだよ?」
「おいおい、俺を誰だと思ってんだよ」
 誰って俺の親父で……ああ、雑誌社の社長だっけ。
 多分あれだけ人気があるんなら、みせちんの雑誌もあるだろうし、親父の会社がそれを出していてもおかしくはない。
 しまったなあ、こんなに早く親バレしてしまうとはなあ。
 何て言われるかなあ、息子が息子を女の子に見せてるって社長という立場からすれば恥だろうなあ。
「おめでとうは言わない」
 だろうな。
「世界を目指すのに本当に大変なのは、ここからだからな」
 あれ? 応援してくれてる!?
「いや、その、別にさ、そんなに真面目にさ」
「俺は息子がやりたいと思ったことは何でもさせてやりたいと思っている。みせちんをやるなんて相当の覚悟と決心が必要だっただろうしな」
 いや、伊澄に脱がされて誘われただけだが。
「俺も色々な選手(やつ)を見て来たが、みんな相当な覚悟を持って臨んでいた。何しろ、下手をすると再起不能になるんだからな」
 ちんちんがな。
 っていうか、親父、直接取材なんてしてるのか、社長なのに。
「先は果てしないだろうが頑張れ。そして、世界で会おう」
 世界戦になったら取材に来るってことか。
 嫌だなあ、親父に取材されるの。
「分かった」
 だが、それでも俺はそう返事をした。
 送られたのは、エールだから。

「世界戦になれば採点の基準も変わるから、これまでのように満点連発ってことはなくなるわ」
 棚華家の応接間で、伊澄と俺と結愛は世界戦について話し合うことになった。
「それに、文化が違えば喜怒哀楽も違う。見せられ少女がどう選択されるかはとても重要だわ」
 真面目に何言ってんだこいつ、とか冷静に考えると思ってしまうが、もちろん黙っている。
「つまり、世界中の女の子に微笑まれるおちんちんじゃなければならないって事よね?」
 お前も何言ってんだ、とか結愛にも思うが言わない。
「大丈夫よ、ちんちんは世界共通だから」
 意味わかんねえ。
「ていうか、何でお前そんなに詳しいんだよ?」
「ネットで調べたからよ」
「便利だなネット!」
「そうだね、私も結構勉強したよ? 世界ランカーは白人黒人が多いみたいだね」
 そりゃあ、あちらさんは規格外のものをお持ちだろうしな。
「でも、鷹士のちんちんこそが日本の誇りよ。欧米人は生まれたときにちんちんを割礼したりするから、どうあがいても鷹士のようなちんちんにはならないわ」
「そうだよ、鷹士くんは誇りを持っていいんだよ?」
「うん、褒められてる気がしないけど」
 俺の心は少し傷ついている。
「そんなことないよ、だって伊澄ちゃんだって、『初めての時も痛くなさそう』ってふぐう」
 結愛の言葉を真っ赤になって止める伊澄。
「それは秘密! 秘密!」
 珍しく真っ赤な顔になった伊澄。
 やっべ、可愛い。
「結愛ちゃんだって『鷹士くんは断然受け、それも総受けよね』って言ってたわ」
「ほぁちゃぁぁっっ!」
 普段おとなしい結愛から聞いたこともない叫び声が響き、今度は伊澄の口が閉じられる。
 うん、すっかり親友だね。
 てか、お前ら普段何の話してんだよ?
 そんな二人の、話題以外は微笑ましいやり取りを聞いて、俺はため息を吐いた。
「で、パナラット・エメカセムって奴の情報は調べたのか?」
「ウィキにもなかったわ」
 伊澄がタブレットを片手に答える。
「お前の情報源ってそれだけかよ」
「亜様鷹士の項目ならあるわ」
「マジか! ちょっと見せろ」
 俺は伊澄の持っていたタブレットを奪うように取って確認した。
「あ、返して」
 取り返そうとする伊澄を無視してタブレットを覗くと『亜様鷹士 みせちんの有望選手。二試合で日本チャンピオンになるという伝説を残した』と書かれた編集ページが開いていた。
「まだ保存してないわ」
「お前が作ったのかよ!」
 突っ込んでいるうちに奪い返された。
「『キャッチコピーは、微笑みの貴公子』あれ『見た目は大人、ちんちんは子供』だったかしら」
「どうでもいい」
「『永久脱毛のウェアード戦士』でいいかしら」
「勝手に決めんな! 永久脱毛してないし!」
「どうでもいいと言ったくせに我儘ばっかり」
「ネット上に嘘書かれたら誰でも文句言うわ!」
 いつものようなやり取りだが、いつもと違うところといえば、今日はそこに結愛がいることだ。
「じゃ、本当にしようか! 大久保さんに連絡して、今から永久脱毛してもらお?」
「のおおおおおっ!」
 結愛がそう言いながら、スマホを手にしたので、思いっきり取り上げた。
「? どうして? 毎回剃るよりも楽になると思うよ?」
「いや……俺にも日常生活ってものがあってだな……」
「永久脱毛して、『LOOK↓』って刺青を入れるのもいいわね」
「お前、人の話聞いてたか?」
「聞いていたけど無視したわ」
「無視するな!」
「じゃ、電話するね?」
「頼むからやめてくれ!」
 ヤバい、伊澄が二人になった!
 しかも結愛は伊澄より考えが凶悪だ! 俺をどうあっても大久保さんとくっつけたいと思ってる!
「とりあえず落ち着け! キャッチコピーとかどうでもいい! せっかくマッチメイキングしたんだから、東洋太平洋チャンピオンの事を考えるぞ!」
 俺は強引にでも話題を変える。
「でも、情報がないわ」
「ある情報だけで作戦を立てるぞ? そう言えば会場はどこだ?」
 冷静に考えると、国際戦ともなると、海外での試合も多いんだよな。
 俺はパスポート持ってるけど、二人は持ってるのか?
「東洋太平洋チャンピオン戦は、いつもの市民会館よ」
「何でだよ?」
 俺、世界でランクも持ってない挑戦者だぞ?
「タイでやるよりも儲かるからよ」
 そりゃ、納得の理由だな。
 まあ、何だかんだ言ってもこれはショーだし、観客の金払いがいい方がファイトマネーは稼げる。おそらく大久保さんってああ見えて物凄い凄腕のプロモーターなんだろうな。
「まあ、日本でやるならこっちがホームだ。見せられ少女はどこから選ばれるんだ?」
「基本的にその地域の女の子を連れてくるわ。わざわざどこかから連れてきたら怪しまれるだけだし」
「そうか、じゃあこっちのペースで戦えるんだな」
 じゃあなんで作戦会議なんてやったんだ。
「でも、審査の基準が国際ルールになるわ。これまでよりもかなり厳しくなると思う」
 って言っても、これまで満点もしくは実質満点だったんだから、これでやっときちんとした採点がされるって事だろうな。
「厳しくなるだけで、方向性は変わらないわ。笑いは恐怖よりも高得点」
「前から思ってたんだが、どうして笑いは高得点なんだ?」
「それはもちろん──」
 伊澄がタブレットを操作している。
 今調べてんのかよ。
「若い女の子がちんちんを見て、怖がったり恥ずかしがったりすることは普通なのよ。でも、ちんちんを見て幸せを感じたり、嬉しくなったりすることはほとんどない。だから、それが出来るという事は限られた者であり、選ばれたちんちんの持ち主である、って書いてあるわ」
 認めちゃったよ、今調べたこと。
「でも、大抵の選手は喜ばせることが出来ないから、絶望するくらい怖がらせたりするのよ」
 それは、どうなんだろう……?
 いや、俺がそういうちんちんを持ってたとして、女の子に見せて絶望されるって、死にたくなるよね。
「だからこその鷹士よ。みんなが目指す方向を変えて、女の子たちを微笑ませるちんちんを目指して、世界を獲りましょう、その小さなちんちんで」
「うん、しにたくなってきたからやめてくれ」
 俺、何でこんな競技やってるんだろう。
 俺は心の中で号泣しながら、作戦もない作戦会議を続けた。
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