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ちんこ短し恋せよ乙女 作者:真木あーと
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第十節

 そういえば、事情は聞いたが、どうやって説得するかは聞いてないな。
「可愛さん」
 伊澄が声をかけると、可愛は顔を上げる。
 いつもの可愛なら笑いかけるところだが、今日は表情を変えないままだ。
「棚華さん、亜様くん……」
 まずは謝ろうと思っているのか、可愛は立ち上がる。
 たが、その前に伊澄が動いた。
 可愛の前、コンクリートの地面に正座すると、伊澄は深く、土下座をした。
「え? ええっ!?」
 可愛が驚く。
 そりゃそうだ、長く一緒にいて、伊澄の奇行にも慣れてる俺でも驚いてる。
「ごめんなさい。謝ることしか出来ないけど、ごめんなさい」
「な、何のことか全然分からないよっ! とにかく立って!」
 あまりのことに、驚くことしか出来なかった可愛も、その言葉で我に返ったんだろう、土下座している伊澄を立たせようと腕を取る。
 だが、伊澄は立たない。
「……あなたのお父さんのちんちんを潰したのは、私なのよ」
 伊澄は顔を伏せたまま、俺すらも初めて聞くことを言った。
 え? 可愛の親父さんはみせちんの試合中、見せられ少女に股間を潰されたのが原因で引退したんだよな。
 ってことは、伊澄は昔、見せられ少女として出て、その時に可愛の親父さんの股間を潰してしまったのか。
「あまりのことに戸惑って、思わず蹴ってしまった。後でとんでもないことをしてしまったと思ったけど、私には相手の情報やどうなったかを教えてもらえなかったからどうしようもなかった」
 伊澄は、いつものように淡々と、いや、いつも以上に淡々と話す。
 だが、その目は潤んでいて、今にも粒が零れ落ちそうだった。
 俺は伊澄のこんな表情を見たことがない。
 伊澄は心の底から申し訳ないと思っていたんだろう。
 だが、俺もまだよくは知らないが、選手と見せられ少女は決して互いに個人情報が伝わらないように配慮されているようだ。
 だから、伊澄がいくら相手の状態を知りたくても教えてもらえなかったんだろう。
 今日まで、伊澄は相手がどうなったかすら知らなかった。それが、可愛の父であり、かつ、それが原因で選手を辞めていたとは知りもしなかっただろう。
 伊澄と可愛は仲がいい方じゃない。
 が、そんな同級生に土下座をする伊澄の心境が分かるとは言えない。
 伊澄は俺に謝ることはまずないし、俺が誰かに謝らせた時も、後々までぶつぶつと愚痴って来る。
 可愛に対してもどこか上からの口調で話をしていた。
 そんな伊澄が心からの謝罪を身体で表すように土下座をしている。
「あ、た、棚華さんが悪いわけじゃないからっ!」
 呆然としていた可愛が我に返り、伊澄を立たせる。
「謝ってもどうしようもないし、責任も取れない。でも謝るしかないわ」
「だから、そういうのいいから!」
 可愛はそれでも謝ろうとする、伊澄に強く言う。
「スマホでも言ったでしょ? あなたが悪い事は何もないの。だから、私もお父さんもあなたを全然恨んでないよ?」
 伊澄は黙ってうつむいたままだ。
 だから、沈黙に耐え切れなかった可愛は話を続けた。
「で、でも、どうして、それなのに、今でもその……それに関わっているの? 私なら、絶対関わらないし、話も聞きたくなくなると思うのに……」
 そう言えばそうだな。
 伊澄は過去にそんなことがあったにもかかわらず、今でも関係者ではないが、俺を誘ったりマネージャになったり、積極的に関わろうとしているよな。
 なんでそんな事をしているんだろう?
 その真意が分からない。
「私は、あなたのお父さんのように、この競技で不幸になる人がいなくなればいいと思ってる。だから、鷹士をみせちんに誘ったのよ。全選手が、鷹士みたいになればいいと思って」
「……ごめんなさい、ちょっと意味が分からないよ……」
「分かったわ」
 伊澄はこちらを見る。
 さっきは見えなかったが、目は真っ赤だった。
「鷹士、今からブリッジして」
「え? 何だよ急に」
「急いで」
 まあ、何となくやりたいことも分かったので、俺は素直にブリッジをする。
「見てて、可愛さん」
 そう言うと、伊澄は俺のズボンを下ろそうとする。
 まあ、やるだろうと思っていたから、俺はさせておいた。
 が、伊澄もこう見えて女の子だし、普段男のズボンを脱がせた事なんてないから、その手つきがやたらもどかしい。
 その、慣れていなさが、ちょっと可愛いと思ったり、少し遠慮がちの手つきにちょっと興奮したり。
 するもんだろ、それは!
 健康な男ならさ!
 そして、三十秒くらいかけて、伊澄は俺のズボンとパンツを足首まで下ろす。
「あ、ま……っ!」
 油断した。
 冷静に考えたらここは公園のど真ん中で、しかも伊澄に可愛と、女の子に囲まれた中。
 少し興奮して半アップのそれをブリッジで露出することになる。
「……っ!」
 一瞬、目を背けようとした可愛だが、ちらり、と見て、その後は目隠しの手を下ろした。
「………………」
 可愛の瞳が、変わった。
 その瞳は、やんちゃ坊主に手を焼いているが、それでも可愛いからしょうがないな、という時の瞳だ。
 その瞳からは、どうしようもない愛おしさが伝わってきて、俺は幸せな気分になった。
「フルアップ確認」
 しまった!
 俺、学年一二の美少女を前に、毛を剃りたてのちんちんを、見やすいようにブリッジで見せて、フルアップしてるなんて。
 ただの変態じゃないか。
「これで分かった?」
「その……、亜様くんって……剃っちゃったの……?」
 照れた赤い顔をして、興味津々でそんなことを聞いてくる可愛。
「微笑ましさを強調するために、そこらのホモのおじさんに剃らせていたわ」
 確かに字面だけならそのままだがな!
「え……?」
「ちょっ! 引かないでくれ! そういうんじゃないから!」
「今の可愛さんの顔は、『え? この辺にホモなんているの?』っていう、期待の表情だったわ」
「違っ! 棚華さんっ!」
 さっきまで、謝っていた側と、宥めていた側が、いつも間にか攻める側と攻められ……反撃する側になった。
「もうっ! 棚華さんってばっ!」
 ぽかぽか叩いているが、伊澄も痛そうには思えない。
「痛い」
 痛かったらしい。
「あ、ご、ごめんなさい」
 まだ顔は赤いが、やり過ぎたと思ったのか、可愛は謝った。
「大丈夫よ」
「強く叩いちゃったかな? ごめんね?」
「ホモが嫌いな女の子はいないから」
「そっち!? もう、棚華さんはっ!」
「痛い」
 なんか、目の前で微笑ましいコントが繰り広げられているけど、俺、何でこんなところで下半身露出してブリッジしてるんだろう?
「とりあえず」
 伊澄が可愛の手を止めて言う。
「これを見て、可愛さんは潰したいと思う?」
 話が俺の股間に戻ってきた。
「そんなことない。どっちかというと、育ててあげた……違っ! そう言う意味じゃなくて!」
 可愛は混乱しているようだ。
「……私がやっていることは、贖罪でも何でもない。あなたのお父さんがそうなってしまったのは謝ってもどうしようもない。私は責任も取れない。これはどれだけあなたやあなたのお父さんが許しても、いえ、許すからこそ、私は私を許せない」
「そんな! だから、棚華さんが罪悪感を持つ必要なんて全くなくて!」
「でも! それでも持ってしまう! これはどうしようもないの!」
 伊澄の声に涙が混じる。
 可愛が伊澄を抱き締めて慰めている。
「……だから、私のような、そして、あなたのお父さんのような人間が二度と生まれないようにしたい。それには競技をなくすこと、弾圧することを考える事は出来ない。それはまた新しい不幸を生むから」
 可愛の胸の中、伊澄は話を続ける。
「だから、鷹士のちんちんが有効なの。これがあれば、誰も不幸にならない。みんなが幸せになれる。微笑みのちんちんなのよ」
「微笑みの……うん……」
 なんか二人が愛おしそうに俺の股間見てるし、おそらく感動的な場面なんだろうけど、何だこの流れ?
「このちんちんが強さの主流になれば、悲鳴で驚いて蹴り上げてしまう見せられ少女もいなくなる。みんなが幸せになれる」
「……うん」
 いや、お前らの見てるの俺の粗末なちんちんだからな?
 希望の何かじゃないからな?
 あと、そうじろじろ見るなよ。
 美少女二人に見られると……興奮するだろうが……!
「ぐっ! や、やめろって」
 どっちだか分からないけど、撫でてきたので俺は身体をびくん、と揺らした。
「あ、ごめんなさい。つい……」
 謝ったのは可愛だった。
 可愛ってついで男の股間触るような奴だったっけ?
「では、私も」
「ふんぎゃぁっ!」
 伊澄は、フルアップした俺のそれを、思いっきりつかみやがった!
 無遠慮なつかみ方と冷たい手のせいで、俺は、俺はもうっ!
「やめろ! それはマジでいろいろヤバいからやめろ!」
 赤ちゃんが出来る汁が出ちゃうから!
「少しくらいいいじゃない。マネージャーとしてコンディションも確認しなきゃならないし」
「そんなもん自分でするっていうか、する必要ないからな?」
「あ、ずるい! 私も!」
「私もじゃねえし!」
 何故だか可愛まで参戦して、俺はブリッジを崩して防御に入らざるを得なくなった。
「無駄よ!」
 伊澄が俺の腹に逆馬乗りになる。
 俺が胸から腹に、伊澄の柔らかさを感じて混乱している間に、伊澄が手放した俺の股間を、可愛が掴んでいた。
 どうして?
「離して。これは私のだから」
「違うの! これは誰のものでもないの!」
「俺のだよっ!」
 伊澄と可愛は俺の股間の取り合いを繰り広げていた。
 何これ?
 何で俺、女の子二人に、学年一二の美少女二人に股間を奪われ合ってるの?
 あ、ヤバい。
 そろそろヤバい!
「ちょっと! 離せって! マジで! マジで!」
 俺の切羽詰まった声は攻防を繰り広げる二人に無視される。
 激しい攻防は、俺の股間を刺激し続け、そしてこのシチュはどうあっても俺を興奮させることしかなかった。
「あ」
 そして、俺の皮性のドラゴンは、白い火を吐いた。
 その後俺は、伊澄より長い間土下座をしたのは言うまでもない。

「わかった。これからは亜様くんに協力するから」
 俺の色々が収まった後、俺たちは三人で駅に向かう。
 俺と伊澄は歩きだが、可愛は電車だからだ。
「うん、って、協力って何するんだ?」
「んー、とりあえずは棚華さんと同じかな。亜様くんの試合の──」
 そこまで言って話を止める、可愛。
「あのさ、これから二人の事、名前で呼んでいいかな?」
「名前?」
「うん、鷹士くんに、伊澄さん。私も結愛って呼んでいいから。駄目?」
「いや、俺は、いいけど……」
「私も構わないわ」
「うんっ! じゃ、よろしくね、鷹士くんに伊澄さん!」
 嬉しそうに笑う可愛、いや、結愛。
 そのまま、伊澄と結愛で、俺の今後について話をしているうちに、駅に到着した。
「それじゃ、また明日」
 結愛がそう言って手を小さく振る。
「ああ、またな、結愛」
 俺が言うと、結愛は嬉しそうに改札へと走って行った。
 そう言えば、結愛が俺をどう思っているのか、言ってた気がしたけど……結局どうなったんだっけ?
 まあいいか。
「本当に、いい子ね、可愛さん、いえ、結愛ちゃん」
 家に向かって歩いている最中、伊澄が口を開いた。
「まあな、でも、お前が悪い奴ってわけでもないぞ?」
「違う。私は結愛ちゃんや鷹士みたいな人に支えられて生きてる。みんな私のために色々我慢してる」
 分かってんならやめろよ、なんて思うが、それが出来ないからこういう奴なんだろう。
 それは俺も理解している。
「それはさ、みんなそうしたいと思うからそうしてるんだから気にするな。そう言うことを気にするお前は、もうお前じゃない気がするぞ?」
 言ってることはひどいが、そこは俺と伊澄だから普段からこういう会話してるからな。
「でも、結愛ちゃんとは、もう喧嘩したくなくなってしまったわ」
「それは、悪い事じゃないな」
「ソウルメイトになれると思う」
「それは、スピリチュアル的な意味か?」
「直訳すると、心の友」
「途端に安っぽくなったな。ああ、分かってるさ、肉体が滅びても友達ってやつだろ?」
「そうね……でも、いつか戦わなければならなくなると思う」
 何言いだすんだこいつは、とも思ったが、伊澄の表情があまりにも真剣だったので、茶化すことは出来なかった。
「俺としては、お前らが仲いい方がいいな」
「そうね。私もそうしたいわ」
 伊澄の言葉には、何故だか悲哀を感じてしまった。
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