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夜明けの月
作:BIRUSU



武器屋にて


 街道の一角にあるこの武器屋ではロングソード、ナイフ、カイザーナックルのような物まで幅広く置かれている。
そのため何か1つぐらいは自分に合うものがあるのではと、色々と手にとって見るのだがどれもこれも今ひとつ。
もともとこんな鉄の塊どもを扱うことなんて無かったのだから仕方ないだろう。

「こういうのは、フィーリングが大事だから”これだ!”と思うものがあるまでよく選んでね」

 武器屋について最初にエマにそういわれてたが、今まで持った武器でそんな感情が浮かんでくるのはひとつも無い。
どちらかというと、スポーツ店で売っているバットのほうがしっくりとくる気がしていた。

「どう? よさそうなのあった?」

「ん〜〜〜今のところはどれも今ひとつ。もともと武器なんてあんまり使わなかったからぴんとこなくて」

 現代社会において武器なんてまったく持って必要ない。
必要とする武器といったら、資格に、技術。
これにつきるだろう。
 だがここは異世界、そんなことを思っていても、自分が戦わなくてはいけないことは変わりはない。
とりあえず、オーソドックスなロングソード、ナイフなどの棚のものを一通り見たので、次の棚に移る。

「そういえば、エマの武器ってナイフだけなのか? たしかに、エマみたいな小柄なやつならロングソードや、バスターソード使うのは難しいと思うけど、決定力に欠けないか?」

「ぬぅ……人が一番気にしてることを……確かに私のナイフだけだと決定力にかけるわ。だから、私はほとんど外皮の柔らかい、牙獣系統の仕事ばっかりしてるの。ほかの、鱗とかがある、鱗獣系はパーティー組んでこなしてたし。」

 何でエマが傭兵団の団長もとい、傭兵団を作りたかったのかがわかったかもしれない。
まぁ1人がさびしいからという可能性も捨てきれないが、おそらくはこんな感じだろう。
エマの武器だけでは決定力不足、それを補うためパーティーを組み、仲間にその決定力を補ってもらう、多分こういうつもりだったのだろう。
エマ自身の武器は見るからに牽制、サポート用なのだから仕方あるまい。
エマの決定力を補うため、俺は攻撃力の高いもののほうがいいのだろうな。
 しかし、意外と選ぶのが難しい。
ウォーリアーアクスのような大型の斧にすれば、決定力は十分だが俺はあんなもの扱える自身がないし、ましてや、一般的なロングソードはしっくりと来ない。
はてさて困ったものだ。
 そんな俺の考えを知ってか知らずか、エマは自分の主力武器であるナイフのコーナーをじっくりと眺め自分の武器と見比べている。

「おやっさん、頼むから買い取ってくれよ! 本当にいい武器なんだって!」

「だめだめ、そんなへんてこな武器誰が使うんだって。そんな武器生まれて始めてみるよ」

 カウンターのほうがなりやら騒がしい、どうやら旅の商人が武器を売り込んでるらしい。
俺はへんてこな武器と言うのに心引かれ、カウンターに向かってみる。
そこには、ごちゃごちゃとカウンターに武器? と思われるものが並んでいた。
 武器屋のオヤジが、買い取りを拒否するのも無理はない。
カエルのかぶとの上にハンマーのついているものや、穴あき包丁のように真ん中に穴が無数に開いているロングソード、(穴を開けすぎなのか軽く振っているはずなのに、ぶるぶると剣が震えている。)もとは、おそらく鎌なのだろうが、刃があちこちに張り巡らされまるで、木の枝のようになっているもの、あんなのを使ったら敵よりもまず自分の体を切りそうだ。
 そんな、武器というよりもガラクタばかりの物の中で2つ気になるものを見つけた。
あれはおそらく短銃、しかもリボルバー式のだ。
ここの武器屋を一通り見てきたがあんなものはなかった。
 そしてもう1つ、グローブ形の武器だがなにやら、おかしな形状をしている。
素材は鉄のようなものと革を混ぜて作ったような感じだが、なにやら鉄の部分にいくつか穴が開いている。
まるで何かをそこに装着するかのごとく。
 あまりにも気になったのでその二つについて俺は聞いてみることにした。

「なぁ、あんちゃん。こいつとこいつ、どんな武器なんだい? 値段によっちゃ買うかもしれん」

 その言葉を聞いた、武器屋のオヤジが面白そうにしている。
おそらく変わった客だと思われたに違いない。

「よかったな兄ちゃん。俺じゃなくてそっちのお客さんが買ってくれるってよ。しっかし、お客さんも物好きだね。そんなわけわからんものを買おうとするなんて。まぁ、気に入らなかったら、うちの商品をもう一度選びなおしておくれよ」

 そういうと、オヤジは奥のほうへと行ってしまった。

「で、どうなの?」

「ん、あぁ! まずはこれはな、シュートって言って遠くの敵を倒すもんだ。ここに、こいつ専用の玉を詰め込んで、この留め金をこう、倒してだな、こんな感じに狙いをつけて、ここをおしてやると、このつつから、その玉が一気に飛び出るってやつよ。」

 これは、かなりいい武器を見つけたかもしれない。
この世界で銃に出会えたのだから。

「なるほど、それで、威力と玉はどうなんだ? 玉が無くちゃそいつは意味がないだろ。それに威力はどれぐらいなんだ?」

「玉は、ここに30発分あるぞ。んでもこいつは特注品でほかの店には売ってないけどな。威力のほうは、木の幹に5cmはめり込むぜ」

 商人は、手でどれくらいめり込むか表現しながら玉を見せてくれる。
木の幹に5cmもめり込むなら上等だ。
剣や斧の攻撃には劣るものの、やわらかい敵には致命傷を負わせられる。

「なるほど、そいつはわかったが、玉が特注じゃこいつは使い捨てになっちまうな。そんなんじゃいくらなんでも買えんぞ?」

「まぁまてって。こいつは特注つっても、意外に作るのが簡単なんだ。こいつは二つの型で出来てるんだが、そいつに鉄を流し込んでやって冷えて固まったら、バクロの実を詰めて、その二つをあわせてやれば出来上がり。今ならこの型もつけるからお願い買って」

 最初のほうは説明口調で自信満々だったが、説明が終わると同時に懇願である。
よほど自分の商品が売れないのだろう。
まぁ、あんなんじゃ誰も買わないと思うがな。

「とりあえず、そのシュートってのはわかったが、もう1つのそのグローブのほうはどうなんだ?」

 俺は銃の説明には納得し、もう一方のグローブのほうを指差しそちらの説明を促す。

「あぁ、これなんだが汎用性を高いように作ったらこうなっちまってな、でもこいつはすごいんだぜ? なんせ、この専用キットを全部つけることが出来るんだから!」

 そういって、おもむろに鞄を取り出す。
なかには、取っ手の部分がすべて同じ形のものが入っていた。
剣や、爪のような形のもの、ムチと3種類入っている。

「この全部の武器をつけることが出来るんだぜ? すごくないか? な! なぁ! 頼むからすごいって言ってくれ。お願い」

「あぁ、すごいすごい。すごいのはわかったから、顔を遠ざけてくれ」

 ものすごく顔をちかづけられたため、かなり引きつつもすごいといってやる。
ここでボロクソ言ったら、泣きそうなので。

「とりあえずは武器については把握したが、あいにく俺は1ガルンしかないし、すべてセットじゃなきゃ買わん」

 この1ガルンは、エマからもらったものだ。
エマの話によると3ガルンで大体3日は暮らせるかな? といっていたので単位的には万と変わらないぐらいだろう。
 だが問題なのは武器の値段だ。
 武器屋に入ってわかったことだが、一番安いナイフで5シーター、一番安いロングソードで8シーターと、かなりお値段が高いことだ。
 エマにいいのを選んでといわれてはいるが、まずそんないいものは買えん。
そんなわけだから、ある意味ガラクタ売りの商人に賭けた部分もある。

「あぁ! それでいい! それでいいからお願い買ってくれ! 金がなくて3日食ってないんだ!」

 上には上がいる15時間で空腹で音を上げた俺がいたが、こいつは3日か、そりゃ多少のプライドは捨てるか。

「よし、それなら買おう」

「うぅ〜ありがとう〜! 本当にありがと〜!」

 思わず抱きつかれそうになるが、それはごめんこうむる。
ただでさえ男に抱きつかれるものいやなのに、こんな涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔のやつに抱きつかれたくはない。
なんだかんだでほかの奴が見たらガラクタに思われるかもしれないが、武器を調達することには成功した。
 武器購入報告のため、ナイフの棚で財布と格闘してうなっているエマの方へと向かう。

「武器が決まったぞ。ちょっと特殊な武器だが意外と使いやすそうな武器になった」

「ん、ってそれガラクタじゃないの! そんなのどうするのさ!」

「まぁそれは見てのお楽しみって事で。俺にとってはかなり使いやすいと思うから問題ないと思うぞ」

「むぅ……自分がいいならいいけど、ちゃんとそれ使って戦ってよ?」

「あぁ」

 ここの世界の人にはあまり理解されないものらしいが、この武器たちはかなり優秀だろう。
 そう考えると、意外にあの商人は後々成功するかもしれないと思ったが、ほかの商品を思い出しその思いをかき消した。

「とりあえず武器はこれで決まりだ。で、残るは防具屋か。」

「そうね。私は別に今のままでもいいけど、アキラのその格好はさすがに変だし。着替えましょう。」

 ここにくるまでに色々と外を歩いたが、あっちこっちから視線を感じたのでやはり異質なのだろう。
 ようやくなじんできたスーツを手放すのは忍びないが、あまりにもこの世界には合わないのでこれを下取りしてもらって違う服を買うとしよう。
服としては異質だが、生地はそれなりにいいはずなので、そこそこにはなるだろうし。
そんなことを考えながら、俺たちは新たな目的地、防具屋へと急ぐ。












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