ギルドにて・後
「そっちは終わったみたいね」
エマが近寄ってきた俺に気づき、多少疲れているのか、だるそうに話しかけてきた。
「あぁ、こっちは終わったよ。エマの紹介状のおかげで、ランクはEからになったよ」
「そう、私がSランクだったらもっと上のランクになれたとは思うんだけど、仕方ないか。私だってAランクになったばっかりだし」
エマは少し残念そうにしてみせる。
まぁ、あの説明を聞くにランクが上がったばっかりのやつがすぐに上がるためには、自分のランク以上の魔物を狩る。
まずそれしかないだろうから、そうそう次のランクには上がれないだろう。
そんな話をしていると、前に並んでいた人物が動く。
どうやら、やっと換金の順番が回ってきたようだ。
エマは前を確認した後、ジャケットの胸ポケットから袋を取り出した。
「はい、ジャエナの赤牙3匹分ね」
「たしかに、ジャエナ3匹分受け取りました。少々お待ちください」
エマは袋から牙を取り出し、受付嬢に渡す。
受付嬢もなれたもので、すぐにその牙を受け取り、奥のほうから書類と紙幣を持ってくる。
そういえば、この国では金貨とかではなく、紙が通貨となっていたな。
宿屋を出るときにエマが紙幣のみで会計し、若干のおつりも紙幣になっていた。
この世界は、紙の製造技術はそれなりに高いらしい。
「こちらの書類にサインと、ギルドナンバーをお願いします。…………はい、結構です。こちらが今回の報酬の3ガルン6シーターです」
エマは、差し出された書類に記入し、受付嬢から紙幣を受け取る。
さっきまでのだるさはどうしたのだろうか、現金を受け取るとニコニコと表情に出ている。
どこの世界でも金というのは力の源のようだ。
「さて、お金も受け取ったし、アキラの傭兵手続きもすんだから、今度は傭兵団登録ね」
「傭兵団登録って何をすればいいんだ? 名前なら書けるようになったがほかは書けんぞ?」
「大丈夫よ、ギルド証明書もらったでしょ? あれ見せればいいだけだし」
そう告げると、エマは財布にお金をしまい、二階の窓口に向かっていく。
二階は窓口が3つほどあるが、あまり混雑はしていない。
これならすぐに終わりそうだ。
「傭兵団登録お願いします。団長は私、エマ=ジャイコニーで、副団長がこっちのアキラ=シングウでお願い。団名が……何にしようか?」
意気揚々と、窓口の受付嬢に話しかけていったものの、団名でつっかかる。
あんなに団長になりたかったのに、団名を決めてないのは、どうしたものだろうか。
あまつさえ俺に振ってくるなんて。
俺は少し思案してみる。
考えてはみたものの、これといってピンと来る名前は思い浮かばなかった。
どうせならかっこいい名前と思ったのがまずかったのかもしれない。
かっこいいでは何かとすぐには思い浮かばないため、今度は自分達に関係する名前がいいのではと思い自分が経験したことを思う返してみる。
そして、思い浮かんだのは異世界に来る少し前の情景だった。
「そうだな、夜明けの月ってのはどうだ?」
「おぉ〜いいね〜それ! なんか意味深でかっこよさげ。んじゃそれにしよ。」
俺が出した名称にエマは即決だった。
自分の団名なのだからもう少し考えてもいいと思うのだがな。
でもそのおかげでなぜ夜明けの月と思い浮かんだのか聞かれることがなくて少し安心することができた。
説明するとなると、俺が異世界に来た時に見たものだと答えなくてはならないし、それにいくら異世界に来ることを喜ばしく思っていても20年以上過ごした世界での最後の風景だ、説明しているうちに感慨深くて泣けてくるかもしれない。
まぁ正直に答えなければそんな感情も抱くことはないのではあるが。
「それでは、ギルド証明書の提示をお願いします」
そういわれた俺達は、すぐさま証明書を手渡した。
「はい、結構です。団長、エマ=ジャイコニー、副団長、アキラ=シングウ、団名、夜明けの月で登録します。傭兵団についての説明は必要ですか?」
「いや、必要ないわ。一度、違う傭兵団に入ってたから」
「それでは、こちらが傭兵団証明書です。2枚ほどありますので、団長と副団長が一枚づつ持つのがよいかと思います。以上で、傭兵団登録は終了です。よいお仕事が見つかりますように」
ギルド証明書と、傭兵団証明書が手渡される。
傭兵団証明書は発行された後に仲間が増えてもいいよう、空欄の場所がいくつかあるだけで、ほかのつくりはギルド証明書と似たような感じだった。
それにしても傭兵団について説明をしてもらいたかった。
こちらの世界に着たばかりなので少しでも確かな知識を吸収しておきたいという願望があったので、説明しなれている受付嬢から是非教えをとおもったのだがな。
エマにばっさり必要ないと省略されてしまったのだからしかたあるまい。
その分、後でしっかりエマに説明してもらうこととしよう。
「ん〜〜〜、やっとギルドでの目的を果たせたね。それじゃ今度は武器と防具をそろえましょうか。アキラが使ってた、かったー? っての壊れちゃったみたいだし、素手じゃさすがにきついでしょ?」
「きつい。素手であんなやつらと渡り合う自身は俺にはない」
「それじゃ、次は武器屋にきまりね」
「そうだな、手ごろでいいやつがあるといいんだけどな」
自分に合った武器を考えつつ、俺たちは次の目的地を武器屋に決めギルドを後にした。 |