ギルドにて・前
「お待たせしました。こちらの用紙がギルド認定書になりますね」
ギルドについて約30分、思いのほか混んではいたが仕事の依頼や、換金に訪れた者がほとんどだったらしく、新規の俺はあまり待たずにギルドの傭兵認定を受けることが出来た。
ギルドといったら、薄暗い室内でタバコをふかした厳つい男どもが、仕事の内容に目をぎらぎらさせてたむろしているものだと勝手に想像していたが、そんなことは無くギルドは綺麗に清掃され清潔感にあふれており、訪れている人々もきちんと窓口に並び整列している。
まるで銀行や市役所といった感じだった。
そんな市役所のようにたくさんある窓口の1つ、ギルドの傭兵認定と引退を行なっている場所で俺は今手続きを行なっている。
「傭兵のランクですが、Aランクのエマ様の推薦があるため、Eランクとさせていただきます。ランクについての説明は必要でしょうか?」
「ああ、お願いするよ」
「かしこまりました。それではこちらの用紙をご覧ください」
エマのランクがAということは昨日の次点でわかっていたが、いかんせん情報が足りずランクについて今ひとつぴんと来なかった俺にとって、この対応は非常にありがたい。
残念ながら、昨日の授業だけでは文字を完全に把握することが出来なかったため、まだ読む事は出来ない。
だが、受け取った用紙には絵が描いてあるので何とかフィーリングである程度は感じ取ることが出来そうだ。
「ご覧の通り、ランクはG〜始まっており、よりAに近づくにつれランクが高くなるようになっております。しかし例外的にS、SS、SSSがございますが、こちらはAランクの上になります」
「ふむ、それでランクの利点というのは?」
「はい、ランクの利点は仕事内容にかかわってきます。たとえば報酬が多いけど危険な任務などはBランク以上のものしか受けられなかったりします。また、逆に報酬は少ないが、危険度が少ないものなどはGランクからでも受けることが出来ます。つまりランクが高ければ高いほど、どんな仕事でも受けることが出来るということです」
受付嬢が親切に指し示しながら説明をしてくれている。
しかし、文字を読むことが出来ない俺にとっては受付嬢の口答による説明がすべてである。
そのため用紙を見なくても別にいいのだが、ただこの年になって文字が読めないというのは恥ずかしい限りなので、読めないことを悟られないよう目でそれを追い、多少ごまかしながら説明に耳を傾けている。
「なるほど。で、そのランクはどうやったら上げることが出来るんだい?」
そう答えると受付嬢は用紙を裏返し、先ほどと同じようにその内容が書かれている部分を指し示し、笑顔で説明してくれる。
「はい、ランクを上げるにはいくつか方法がありますが、もっともシンプルな3つを説明させていただきます。1つは、自分と同ランクの仕事を10回以上こなし、ギルドが指定した魔物を狩る方法です。もうひとつは、自分のランクよりも高い魔物を3体以上狩る方法です。そして最後に、自分のランクより高い仕事を5回以上こなすことです。本来は自分より高いランクの仕事は請けることはできませんが、パーティーを組むことにより、そのパーティー内で最も高いランクの持ち主と同じランクの仕事を請けることが出来ます。以上が、一般的なランクのあげ方ですが、最後の上げ方は強者に依存してしまい、実力以上のランクをつけられてしまうことがあるので気をつけてください。ランクは傭兵一人一人の強さのステータスのようなものにもなっていますので」
「なるほどね。ところで実力以上のランクがつけられて何か困るようなことがあるのかな? 今聞いた話では、ランクは高ければ高いほどいいみたいに聞こえたけど?」
ランクが高ければどんな仕事でも請けられる。
その利点しか感じなかったためこのことが非常に気になった。
もしデメリットがあるならばしっかりと聞いておかないと、後で痛い目を見ることになってしまう。
どんなことにでもいえることだが、契約などは慎重に慎重を重ねることが必須である。
「はい、ギルドにはある一定以上のランクになるとたまに拒否が不可能な仕事を依頼されることがあるからです。もしこの依頼を拒否すると、契約違約金が発生してしまいます。仕事の重要度でこの違約金の値段は変動しますが、かなりの出費になることは間違いありません。ちなみに、違約金が払えない場合はギルド認定書剥奪となってしまうので十分気をつけてください」
「それは怖いな。ランクについてのデメリットはさっきの説明でわかったけどギルドからの拒否不可能な依頼ってどうやって通達するんだ? Aランクぐらいになると人数もだいぶ少なくなるだろう? そんな奴等が都合のいいときにギルドに訪れるってわけではないだろうし」
昨日、酒場でのエマの言葉から推測するに、おそらくAランク以上の傭兵というのはかなり少ないと思われる。
そんな数少ない高ランク者と、どのように連絡を取るのか俺には疑問しか浮かばなかった。
疑問を打ち消すにはやはりこちらの世界の住人に聞くしかないだろう。
もし、一般的に流通しているシステムだったりしたら、かなり恥ずかしい思いをすることになるがそれも仕方あるまい。
なにせ、こちらの世界の知識があまりにも少ないのだから。
「えぇ、稀にちょうど依頼があった時に高ランクの方が訪れてくださるときもありますが、基本的には、このリンクを使います。このリンクですが、Bランク以上になられるとギルドから配布されます。これで、高ランク者との連絡を取ることにより解決しております」
受付嬢は俺の質問に一つ一つ丁寧に答えてくれる。
どうやら見た目がイヤリングのような形の物、『リンク』で連絡をとるらしい。
思い返してみればエマも右耳にリンクと思われる物をつけていたような気がする。
どういう原理で連絡を取ることが出来るのかはわからないが、なにやらあちこちで、それに似たもので会話をしている人々を見るので、おそらく携帯電話みたいなものだろうか。
使い方も聞いておきたかったが、どうやら一般流通物らしいのでこれ以上の質問はさすがに恥ずかしいと思いしないことにする。
詳しくは後でエマに聞いてみよう。
「ほかにご質問は?」
「いや、ないよ。ありがとう」
「そうですか、それではよいお仕事が見つかりますように」
軽くお辞儀をし俺は受付から離れ、換金所に向かう。
換金所はかなり多くの人が来るため、ほかの窓口よりも若干多めに用意されてはいるがそれでも混雑している。
そんな換金所には、昨日狩った魔物を換金するためにエマが並んでいる。
エマの並んでいる位置は3番目、最初着たときは20人ほど前にいたのでだいぶ進んだほうだろう。
さすがに待ちくたびれたのか、エマはちょっとばっかり疲れている様子だが、あと少しで換金できそうなので問題はないだろう。
とりあえずはエマと一緒に並んで待つとしよう。
自分のことが終わりやることもないし、換金の仕方にも興味があるのでこの選択が一番いいはずだ。
まぁ、ほかの選択肢にはギルド内に設置されている椅子に座って待っているしかないのだが。
2択の答えが出た俺は、エマの横に並び一緒に待つこととなった。 |