裏通りに潜む罠?
「後2日ぐらいでそっちにつけそうよ」
腕のリンカがエマの声を届けてくる。
「あぁわかった。一応5人泊まれるよう宿を確保しておいたから、ついたら連絡してくれ。入り口のところまで迎えに行く」
「了解了解。それじゃまた後で連絡するわね」
最後にそういい残すとリンカは元のアクセサリーのように何も発することはなくなった。
「さてとこの後何するかな……」
先行して王都についたはいいものの、やることといったらギルバーン参加の受付のみ。
しかしそれもすでに済ませてあるので何もやることがなく暇をもてあましている。
ギルドに行って仕事でもとも思ったのだが、下手に怪我でもすると後々エマたちに迷惑をかけてしまうので今はやめておくことにしよう。
そんなわけでやることのない俺はここ数日王都をぶらぶらして過ごすことになった。
王都といっても町は町である。
行商人達が出している出店は、以前いた町とも同じように賑わいをみせている。
「たしかにこの辺うろつくと楽しいといえば楽しいんだけどさすがに同じところばかりは飽きたな」
そう独り言をつぶやく。
確かに町の散策は楽しいのだが、暇をもてあましている俺にとってその作業は夕刻の頃にはすべての場所を行くことができるものだった。
まだ誰かしら知り合いがいれば変わってくるのだが、来たばかりの王都でなじみの店や知り合いなどというものはない。
王都に来たばかりに入った店も、俺と同じような奴が行ったりきたりしているようで、あの看板娘ともなかなか仲良くなることができないでいる。
俺と似たような考えで合席したグレンとはどうなのかというと、何度かその店で会い一緒に食事をするがそれまでだ。
向こうももちろん、こっちも何が楽しくて男とデートしなくちゃいけないのかという結論に達しているためだ。
「せめてコドラつれてくれば良かったか……」
すれ違う傭兵がつれている魔物を見てそう思った。
どんなものにしろ何かしらのイベントがほしいと感じた俺は、表通りからはずれ裏通りの方へ回ることにした。
裏通りは表通りとは違い日の当たりが悪く昼でも薄暗いところがある。
そのためかイベント表通りよりも多い。
ただそのイベントのだいたいは厄介な代物なのだが、そんなものでもないよりはと思い足を進めたのだ。
薄暗い裏通りには人の気配はなく、表通りの方から聞こえるわずかな雑踏だけが鳴り響いている。
(まだこっちで何かあるには早いか)
まだ昼を回って少ししかたっていない、薄暗いといっても目の良いものならすぐに人を見つけられるこの場所ではどうもイベントは期待できそうにない。
「久しぶりに運動でもできると思ったんだけどな」
そうつぶやいた後、はっと思う。
以前ならこんな考えを持つことはなかったはずだが、こちらの世界にきてからどうやら自分の攻撃的一面が突出してきているようだ。
(喧嘩ならガキの頃で済ませたはずなんだがな)
頭をかきながらどこか懐かしく思うこの感覚を沈め、それでもどこで何かしらのハプニングを期待しつつ裏通りを歩いていく。
特に目的もないので、ただぶらぶら歩いているだけである。
はたから見たら怪しい人物この上ないかもしれない。
「何やってんだろ俺は」
冷静になるにつれ自分がおかしく感じ始め表通りの方を見る。
あちらではだれかれかまわず、楽しそうに歩いているではないか。
「やっぱ表通り歩くか」
そうつぶやき表通りのほうへ行こうとした時、右の視界に小さな影が映った。
その影は裏通りの自分が進もうとしていた先にあった。
(なんだなんだ、もしかして)
なんとも馬鹿としかいいようがない。
確かにイベントにあいたいとは思っていた。
それがどうしようもなく面倒なことでも暇がつぶればとも。
君子危うき近寄らず、昔の人はよく言ったものだ。
まったく俺ってのはとんでもなく愚者であるな。
あれはどう見てもトラブル出しかないと思うのに。
頭では理解しても体と気持ちはまったく正反対である。
小さな影を見つけ意気揚々とそちらに向かっていく。
近づくにつれて小さな影は徐々にその形を見せ始め、怒声が聞こえてくる。
その声は裏通りでは響いているものの、人通りが多く雑音の大きい表通りには届いてないようだ。
「さぁ観念して一緒にくるんだな」
「いやじゃわらわは今から遊ぶんじゃ」
「聞き分けのない子だな。そんな子にはお仕置きが必要だ」
なにやら男と女の声、これはもしかしたらちょっとばっかり良い目が見れるイベントじゃないか?
そう思うと俺の行動は早かった。
すぐさま声のする影の方へとダッシュする。
影が人影だとは、ある程度近づいた時に気づいていたが、より近づくことによりその形を明確にし二人の男を映し出した。
(とりあえずは……殴るか)
物騒な考えであるがもっとも単純で簡単だ。
殴った後間違いなら誤れば良い。
男達はいまだこちらに気づいていないようで俺の方を見向きもしない。
それを良いことに、俺は俺の位置から近い男の顔を思いっきりぶん殴った。
走ってきた勢いがたされた拳は、男の意識を刈り取るのに十分な威力を発揮する。
「なっ!」
もう一方の男が異変に気づきこちらを見るが遅い。
すでに次の一撃の準備が整っていた俺は男の顎に強烈なアッパーをお見舞いすることとなった。
殴られた二人は裏通りの路地に横たわりぴくりとも動かない。
一応念のため脈を取ってみたが、死んでいないのでよしとしておこう。
「すまぬな。危ないところを助けられた」
脈を取っている最中助けた女から感謝の言葉をかけられる。
声の割には、ずいぶんと変わった言葉遣いだなと思ったがそんなことよりも男の俺は助けたお礼を考えずに入られなかった。
これから先に起こることを楽しみにしつつ、平静を装いつつ後ろを振り返り女の姿を確認する。
上の上が理想だがそれはなかなかないのでせめて中の上なら良いなと思いをはせながら。
「いやいや別にたいしたことじゃ……」
「なんじゃ? わらわに何かついているのか?」
そう確かにそこにいたのは紛れもなく上の上に分類される女ではあった。
女ではあったのだが後ろに子がつき、俺の妄想を打ち砕く12、3才の女の子だった。
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