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夜明けの月
作:BIRUSU



最初のBランク者


「とりあえずはBランクの魔物を1匹でもいいから狩ればいいんだよな?」

「えぇ、そう聞いていますわ」

 草原に出来た道を進みながら俺達二人は狩り場へと向かっている。
昨日の時点でジェシーがCランクの仕事を10以上こなしたため、ギルド指定の魔物を狩りに来たのだ。
 それにしても昨日の仕事には参った。
昨日請けた最後の仕事キャンプ場所の確保および防衛、本来ならもっと早く終わるはずだったのだが、魔物の肉を焼いてしまったせいでその臭いにつられ数多くの魔物を招いてしまったのだ。
 結局集まった魔物を倒すのに時間をとられ、朝まで寝ることが出来なくなってしまったのだ。
 別に時間終了と同時に仕事を切り上げてもよかったのだが、切り上げようとしても魔物に囲まれてしまっていてなかなか抜け出すことが出来なくなってしまっていた。
もちろん一定期間あの場所を守っていたので、ギルドの仕事としては成功とはなったが報酬が追いついていないのが現状。
埋め合わせとして殲滅証明部位はしっかり取ってきたが、Cランク以上の敵はいなくほとんどがDランク以下だったため換金額はやはり労働にあったものではなかった。
 そんな苦労を知ってかしらずか、エマは朝帰りの俺とリットを捕まえて今からギルド行くわよの一声。
まったく持って勘弁して欲しいものだ。

「アキラ……さん大丈夫ですの?」

「あぁなんとかな。ただできることなら早く済ませて寝たい」

 あくびと目をこする動作が気になったのか、ジェシーが声をかけてきた。
そういえば名前を呼ばれるのは初めてかもしれない。
名前の後少し間があったのは敬称を考えていたのだろう。
俺としては別にそのままアキラと呼んでもらえればいいのだが、一応こんなんでも副団長だ。
ジェシーとしても気まずいものがあるのだろう。
 しかし大丈夫といわれるとはな、まぁこんなぼろぼろの状態の俺がパートナーとして選ばれたのだ、かなり不安なのかもしれない。
 でも、そこは我慢してもらいたいなんせ団長命令での班分けなのだから。
 なぜ今俺達夜明けの月が別々に班を作り行動しているかというと、ジェシーはすでに規定値を達しているため、指定魔物の討伐をしておこうということになったのだ。
そこで今回班を二つに分け行動することになった。
1つは、エマ、リオ、リットの三人で今まで通りCランクの依頼をこなしていくもの。
もう1つは、俺とジェシーで指定魔物の討伐をするものだ。
 ジェシーの実力ならば1人でいっても問題ないとは思うのだが、一応安全のためということでエマに俺がジェシーと一緒に狩って来るようにと団長命令で割り振られることとなった。
そんなわけで今はジェシーと二人でBランクの魔物を探していたりする。
 なぜ魔物の固有名詞で探していないかというと、ギルドからの指定がBランクの魔物なら何でも結構ですといわれたためだ。
このところ急激に繁殖したりしている魔物がいないため、ギルドで指定する魔物がいないというのが、どうやらこのいい加減な指定の理由らしい。
こちらとしては、一種の魔物に絞らなくていいため楽なので別に問題はない。

「Bランクか……ジェシーここら辺でよさそうな奴とか心当たりあるか? まぁ別にどんな奴でもいいんだけど、できれば早く終わらせたいからな」

「……それは私と長い時間一緒にいたくないということですの?」

「いやそういうわけではないんだがな……」

 穏やかだったジェシーの顔が一気に怪訝な表情を浮かべている。
どうも言葉というのは難しい。
 俺としてはうちの傭兵団の女性陣はひいき目に見ても綺麗だと思っているし、一緒にいると目の保養になるし何よりも得した気分になる。
そんなプラス要素しかない彼女達と一緒にいたくないわけないのだが、どうもジェシーには自分と一緒にいたくないのではと受け止めてしまったらしい。
 とりあえずここはそのことを伝えておいたほうがいいだろう。
誤解されたままでいると、こちらにとっても向こうにとってもいいことはないだろうし。

「ジェシー、一つ言っておくが美人なおまえと一緒にいたくないって奴はそうはいないと思うぞ。俺は昨日、ちょっとミスしてな、それで何だかんだで寝てないんだ。それでちょっとばっかり早く帰って寝たいだけなんだ。」

 できるだけ笑顔で、できるだけやさしく話しかける。
誤解を解くんだ、こちらにそんな感情がないことを示す。

「えっ、なぁ……」

 それを聞いたジェシーは驚いた表情で、こちらを見返す。
まだ誤解を解くには、言葉の力が弱いのかもしれない。

「それにもし体調が万全だったなら、町で一日中デートでも洒落込みたいところだよ」

 さすがにこの台詞を言うときは、俺自身恥ずかしさに耐え切れず彼女に背を向けてしまったが、こちらに敵意はなく好意しかないことは伝わったはずだろう。

「それは、その……それじゃこん」

「ジェシー、敵だ」

 ジェシーが言い終わる前に警戒の言葉を発する。
どうやらBランク魔物の登場だ。

「こいつ確かBランクだったよな? しかもちょうどいいことに4匹とは。2、3日で俺やリオ達もジェシーと同じように、こいつらみたいなBランクの魔物からなきゃいけなくなるわけだし、こいつらの殲滅証明部位換金せずにとっておくか」

「それがいいかもしれませんわね」

 自分の話の腰を途中で折られてしまったため、ややぎこちなさが残るものの、戦闘体制にジェシーが移行する。
それに習い、俺もまた戦闘体制へと移る。
敵は4体だ2:2で割り振る感じだろうか。

「それじゃいっちょやりますか。それはそうとジェシー、さっきなんて言おうと思ってたんだ? こいつら見つけちまったから途中で話を中断しちまったが、なんか気になっちまってな」

 相手に警戒を寄せつつも、ジェシーへと話しかける。
中途半端に狩りに慣れてしまったせいか、狩りだけに集中すればいいのにほかのことが気になってしまっている。
今はともかく、あとでこの余裕の感覚を消し去らないとな。

「な、なんでもないですわ! それよりも早く倒しますわよ」

 そういうと一気に敵へと詰め寄り、すさまじい勢いで敵を倒していく。
いったい何が彼女の闘争心に火をつけたのかはわからないが、瞬く間に4体の魔物を屠ってしまった。
 あまりの早さにあっけに取られ一つも役に立つことはできなかったが、でもこれで俺はすぐに寝ることができそうなのでよしとしておこう。
そう思い、せめてこれだけはとせっせと殲滅証明部位を集めるのだった。












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