大剣と細剣
読む「足と目線をよく見て。足で突撃のタイミングを目線で位置を特定して」
私はパーティーのメンバーにスヌーの行動の読み方を教えつつ、後ろへと下がる。
これはあくまでも入団試験、私自身が奴らを相手にしたら意味が無い。
「ほらくるわよ。左右に避けて後ろの柵に体当たりさせて」
彼女達は言われたとおりに戦闘をこなすものの、ここぞというタイミングでの決定打に欠けている。
今の行動も、柵に頭をぶつけたスヌーに対し斬りかかるチャンスだったのだが、彼女達は斬りかかろうとはしない。
おそらく、現状で一番のチャンスはスヌーが自爆した直後、このタイミングを逃しているようでは団員もとい、傭兵失格に近い。
(あの子とあの子、そしてあの子もダメね)
完璧に傍観モードに移行した私はペンをとり、用紙に書かれている名前の脇に×印をつけていく。
(やっぱり、女の子の傭兵ってここぞという時に弱いのよね)
自分も女なのだが、あまりにもチャンスを生かせていない彼女達を見てそう思う。
「ふう」
軽くため息をついた私は、注目株のリオに視線を移す。
どうやら、集団とは少し離れた位置にいるようで、いまだに狙われていないらしく、こちらはこちらで攻撃のチャンスがないようだ。
(この子はいいかなと思ったんだけどダメなのかな)
そう思っていると、彼女がマントを脱ぎ始めひらひらとはためかせ始めた。
あまりにも、狙われないので痺れを切らしたのだろう。
自ら誘い込むつもりらしい。
(おお! これは面白くなってきたわね)
その行動に、期待を膨らませた私はじっと彼女をみつめる。
ようやくリオの行動に気づいた一頭のスヌーが、鼻息を荒くし一直線に突っ込んできた。
距離はどんどん縮まり、後5mといったところまで近づいてきたのだがリオは避ける行動をいまだに取っていない。
「リオ! 避けて!」
回避するにはすでに遅いとわかっていてもあせった私はすぐさま、リオに回避行動を取るよう大声を出す。
しかし、彼女はその場から一向に動こうとせず、代わりに腕を背中に背負っている大剣までもっていき一気に振り下ろした。
振り下ろされた大剣は、突っ込んできたスヌーをまるバターを斬るように真っ二つにし、二つに斬れたスヌーの体は、リオの横を通り抜け柵にぶつかるとそのまま引力に逆らうことなく崩れ去った。
「おお! かっこいいー!」
私は危険を冒して攻撃したことを咎めることもなく、そのあまりにも綺麗だったその一振りに素直に賞賛の意を表した。
私でも、あんな攻撃が出来ないのですごいと思う。
それにしても、あの体であんな大剣を振り回すなんて下手したらアキラよりも力があるんじゃないだろうか。
「なかなかやりますわね。次は私の出番といったところかしら?」
そういったのは、アキララブのジェシーであった。
どうやら、近くにいたものと2人組みになるようにといったため、リオと一緒になったらしい。
かなりの自信たっぷりに私達に見ていればいいといっていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
リオから今度はジェシーへと視線を移し観察する。
ジェシーの武器はリオとは対照的にあまりにも細い剣、レイピアである。
レイピアを胸元近くに持ってきたジェシーの構えは、立ち振る舞いからして優雅で、今から社交ダンスでも始めるかのようにきっちりとしていた。
(おお! あんまり期待してなかったけど結構掘り出し物かも)
そのビシッと決まった立ち振る舞いを見た私は、第一印象を改めることになりそうだ。
「さあ来なさい! この下種どもが!」
あまりにも高圧的で、相手の神経を逆なでする挑発がスヌーへと向けられた。
その挑発に2匹のスヌーが反応し、勢いよくジェシーへと突撃してくる。
それを確認したジェシーは、何を思ったか勢いよくスヌーのほうへと駆け出した。
距離は一気に縮まり、ぶつかる! そう思った瞬間ジェシーは勢いよく地面をけり空へと舞い上がった。
そして突っ込んできたスヌーに手をつき、体操選手が跳び箱を飛ぶように回転しジェシーの体がちょうど逆立ちした形になった時に、スヌーの首筋へとそのレイピアを突き刺した。
急所を突かれたスヌーは、走りながら崩れ去りぴくぴくと痙攣し、仕舞いには動かなくなった。
突っ込んできたもう一頭は目標物が急に消え、戸惑いその動きにブレーキがかかる。
「こっちですわ」
その声に反応し振り返ったスヌーだったが、振り返った直後に首にレイピアが突き刺さる。
体勢を立て直したジェシーがレイピアを投げはなっていたのだ。
「ほーほほほ! どうかしら? こんな事あなたに出来て?」
そういいながら、リオのほうを振り向くがすでにそこにはリオはいなくその言葉は虚空へと消え去った。
「ちょっと! あなたちゃんと私の話を聞きなさい!」
無視されるのがすごく嫌いらしい。
無視されたジェシーは微妙になみだ目になっている。
もしかすると、挑発的な態度を取っているのは実は誰かにかまって欲しいだけなのかもしれない。
(口は悪いけど、悪い子じゃないっぽいわね)
私は第一印象で彼女の名前の横に記入した×印を斜線で消す作業を行う。
そして、ほかのメンバーへの観察に移る。
しかし、いまだに手をこまねいている様子で、チャンスを生かそうとすらしていない。
(うわ〜〜〜こっちは全滅ね。とりあえずはあの2人だけかな。)
その2人なのだがなにやら言い合っている様子。
言い合ってるというか一方的にジェシーがリオに難癖つけてるっぽい。
「いいですの? 今度からはしっかり私の活躍を確認なさい。でなければ誰がアキラ様に私の勇士を伝えるというのです」
「危ないわよ」
「ちょ、ちょっと何するのよ!」
リオがいきなりジェシーを突き飛ばした。
大剣を軽々しく振るうリオの突き飛ばしは、軽く押しただけなのにジェシーを結構な勢いで飛ばしている。
だがそれでよかったのだろう、ジェシーのすぐ目の前をスヌーが一直線に通りぬけていった。
あのまま動かなければ、間違いなく直撃していただろう。
通り過ぎていったスヌーは、そのまま柵にぶつかり動きを止める。
そこをリオが大剣を振るいしとめ、ジェシーへと向き直る。
「ふん、一応感謝しますわ。ですが最後の一匹は私がしとめますわよ」
「私がやるわ」
「そう、なら早い者勝ちね!」
お互いに得物をを構え、突撃してくるスヌーを迎え撃つ。
すでに、ほかのメンバーは避けることに疲れて彼女達に任せている様子だ。
(うん、き〜めた)
自分よりも強者2人に迎え撃たれたスヌーは、その生を許されることなくこの世から消え去っていった。 |