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夜明けの月
作:BIRUSU



傭兵の女達


(こ、これはきついかも。)

 アキラ達と別れてから数分、短時間しか過ぎていないのに感じるのだ。
これからパーティーまでやらねばいけないのは相当きつい。
私が苦労しているのは、ほとんどの入団希望者がミーハーということだ。
 Aランクの傭兵は以前も話したとおり、数は少なくおまけにそのAランクの称号を持っているのは女の私である。
 そんなわけで、私は彼女達から羨望のまなざしで見つめられた上、サインだの握手だのをせがまれ、それに答えるたびに『きゃーきゃー』と騒がれる始末。
おまけに、レベアルを倒したアキラの事を目当てで来た女もいるみたいだし。

(こんなんで、倒せるのかしら。)

 久しぶりの大人数のパーティー戦だったため多少の不安を抱えてはいたが、すでにその不安は私の心の中で膨れ上がり今では2倍以上だ。
できる事なら今すぐ帰りたい。

「エマさん、スヌーの行動パターンを教えてくれませんか?学校で習った事ぐらいしかスヌーについて私は知らないので。」

 色々と、疲れてきた私にまじめな質問が展開された。
たしか、この子はリオって名前だったか、髪型は茶系統のショートカットで身長は140ぐらいと小さく、そして何より印象的なのが、自分の身長ぐらいあると思われる大きな大剣を背負っていることだ。
まだあどけなさが残る顔立ちとは違い、その表情はいたってまじめである。
この子とアキラ狙いのジェシーって子だけは私にサインと握手を求める事は無かった。

(なんかもう、この子だけ入団させたい気分だわ。)

 まだ10分少々しか経っていないのに、入団候補が一人のみに絞られてしまっている。

「そうね……一応知ってると思うけどスヌーは草食の魔物で食べられる心配は無いわ。ただ、彼らは縄張り意識が非常に強くて、敵だと思ったら一直線に突進してくるわ。対処法としては見つから無い様に不意をついて攻撃するか、あえて自分が的になり攻撃が当たる瞬間に避けて自爆させるかかしら。今日は人数が多いから不意をつくのは無理そうだから、自爆を狙う感じかな。」

「わかりました。なにか彼らをひきつける手段はありますか?」

「たしか、やつらはひらひらしてる物を見ると突撃してくる傾向があるわ。そうねあなたが着てるフード付きのマントとかであおったら間違いなく突っ込んでくるわね。」

 リオは自分のマントを見つめなにやら考え込んだ。
しかし、すぐさまその行動は中断させられる。
考え込んでいるリオの横から茶々が入ったのだ。

「大丈夫よ、そんな事しなくても私が倒してあげるから。あなたと団長さんはただ見ていてください。そして私の勇士を1つ残らずアキラ様に伝えていただければ結構ですから。」

 ふふふふと聞こえそうになるぐらい、妄想全開のジェシーを見つめた私はもうなんて言葉にあらわしていいのかわからなくなり、困り果ててしまった。

(アキラもこんな子に好かれるなんてご愁傷様。)

 巻き込まれる事を避けるため、あえてそこは突っ込まずとりあえず黙っとこう。
ほかの子達もなにやら世間話に夢中で、まったく持って緊張感は足りないし本当に大丈夫なのだろうか。
そんな心配をぬぐう事が出来ないまま、狩場に到着してしまった。
 辺りには、つい最近掘り返されたような穴が無数に出来ている。
それもそうだろう、ここはスヌーに襲われた畑なのだから。
 スヌーが犯した罪は、農作物荒らし。
それはもうひどいありようだったらしく、荒らされた農家の人は今年の収入を期待できなくなってしまったらしい。
おまけに、止めようとした農家の主人は角で突かれ重傷を負ってしまったという。
 ちなみにスヌーは獣系の魔物である。
2本の角を持ち、4足歩行をする魔物だ。
はっきりいって牛が小さくなったという感じ。
 攻撃方法はいたって単純、突進のみである。
ただ突進しかしてこないとはいえ、単純だからこそ威力は大きく、下手すれば命を落としてしまう。
 夜明けの月主催でのパーティー戦で死人はごめんだ。
 ここは1つ、気合を入れなおさせ自分の身は自分で守ってもらわねば。
そう思った私は、浮かれ気分を一掃するため注意を促す。

「みんな、よく聞いて。スヌーは突進さえ当たらなければ怖い魔物じゃないわ。だけど、油断してると痛い目にあうから覚悟してね。」

 すこしドスを聞かせたのが効いたらしく、無駄話がやむ。
これならまともに狩りが出来そうだ。

「大丈夫ですわ、私がすべて狩って差し上げますから。」

 1人いろんな意味で飛びぬけてるシェリーに苦笑いを浮かべつつ、狩り開始の音頭を取る。

「よし、それじゃ狩りを開始しましょう。情報によるとスヌーは5匹で1つの群れとして行動してるらしいわ。こっちの人数のほうが多いから1匹に対して2人以上で当たるようにしてね。」

 皆がうなずき、緊張感が高まってくる。
狩りをするのに世間話なんて一切いらない。
ただ騒いでるだけなら、町娘にだって出来る。
私達は傭兵なのだ、戦えてなんぼの商売なのだからこうでなくては困ってしまう。

「それじゃ、こっちで割り振る……暇は無いみたいだから隣にいる人と組んでね。」

 私が見つめる先にはなにやら、5つのシルエットが現れた。
相手側もこちらに気づいたらしく、鼻息を荒くし今にも突っ込んでこようとしている。

「みんな怪我には注意してね。それじゃいくわよ。」

 作戦をしかっりとたてないまま狩りが始まったことに、多少の不安が残るもののこちらのほうが数では圧倒的に多い。
油断さえなければ問題ないだろう。
 確かに戦闘での問題はあまりなかったがスヌーよりも厄介な出来事に出会ってしまうと、この時の私には思いもよらなかった。












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