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夜明けの月
作:BIRUSU



酒場にて


 歩みが速まったため会話の後5分ほどで町に付くことが出来た。
そして俺の空腹を満たすため、食事が出来る酒場に向かうこととなった。
本来なら食堂のほうが俺としてはいいのだが、いかんせん深夜である。
開いている店は酒場か宿屋ぐらいだ。
 エマが酒場のウエスタンドアを開くと、一斉に視線が集まってくる。
さまざまな格好のやつらがいるがみんな共通していえることは、顔が強面だという事だ。
目線をあわせた瞬間、目の前にこぶしが飛んでくるのではないかと思わせる。
平和主義者の俺としてはかなりガクブルである。
そんな俺の心中を察してかエマがつぶやく。

「基本的に無視してれば、何もなんないから大丈夫よ」

「わかってはいるが、ある意味さっきのジャエナよりも威圧感があるぞ」

「はいはい、それはないって。ここにいる人たちのほとんどがCクラスよ? まず一人じゃジャエナなんて狩れないわ」

 ちょっとした会話があったが、エマがAクラスだからといって大きな声でこの会話を成立させなかったことに安堵した。
はっきりいって、大声であんな会話をしたらお前らは弱い、とレッテルを貼り付けるようなものである。
エマが一般的な常識を持っていてよかったと心底思う。
いくらジャエナより弱いとはいっても、はっきりいって俺は怖い、怖すぎる。
 そんな会話をしているうちに、エマは空いていたテーブル席を陣取り、俺に座るように促す。
俺が座ると、テーブルに置かれていたメニューを差し出した。

「どれでも好きなの頼んでいいよ。さっきの奴等で報奨金も入るだろうし」

「それじゃ遠慮なく……すまん、文字が読めないの忘れてた」

 非常に残念なことに、文字がまったく読めない。
会話が成立していたため、不思議には思っていたが、まぁこんなものかと思いこれなら文字も読めるんじゃないか? と安易に考えていたので、ちょっとショックが大きい。

「エマ、適当にうまそうなの頼んでくれないか?」

 読めないなら仕方がない、彼女に頼るしかあるまい。
飯をおごってもらうこと自体頼り切っているのにさらに、貸しを作るのは癪ではあるが、俺の腹が食物をよこせと怒鳴り散らすので気にしないことにする。

「そういえば、記憶喪失なんだったわね。文字も忘れちゃってるなんて結構不便ね。後でギルド手続きのときに名前を書く必要があるから、自分の名前くらいは覚えないとね」

「そうだな、っといってもどう書くのかわからんから、エマに聞くしかないんだが教えてくれるか?」

 彼女はにんまりと笑っている。
どうやら、頼りにされるのが好きらしい。

「よろしい、お教えしましょう。とりあえずは食事の注文だけして、後はメニューを見ながら文字をおぼえましょう」

 そういって彼女は、右手を上げてウエイターを引き止め注文する。

「コカ肉のから揚げと、タッブのスープ、後はソルムを4つとエール2杯お願い」

 ウエイターはすぐさま注文を手帳に書き込み、軽い会釈をして酒場の奥のほうへと消えていった。
 エマは注文が終わるとこちらに向き直り、手に持ったメニューを向ける。

「今頼んだコカ肉のから揚げってのがこれね」

 メニューを覗き込んでみると、文字と思われるものが9個ほど書いてある。
これを見ただけだと断定は出来ないが、日本語と同じようにひとつの文字に対しひとつの読み方があるようだ。

「一番最初の文字、これね、これが(か)よ」

 そう彼女はメニューを指をさす。
今のことから完全にこの世界は、日本とほぼ同一の文字形態をとっていると思われる。

「なるほど、そうするとこれが(ら)か」

「そそ、ひとつの文字に対してひとつの音がある感じよ」

 はっきりいってこれには助かった。
文字と音声が対となっているのなら、日本語のひらがなと変わりはない。
これなら予想以上に早く覚えられそうだ。
ただ、日本語のように漢字がないためか、名詞ごとにスペースをあけて書かれている。

「次は、タッブのスープなんだけどこれをよく見て。」

「ブの文字が2つ並んでるな。」

「そう、よく気がつきましたね。なんて説明したらいいのかな、ちょっとした跳ねるようなアクセントのところは同じ文字を2つ並べて書くの」

 どうやら(っ)の部分は微妙にアルファベットのような形態を取っているらしい。

「なるほど、だが例えば、(ココ)って名前のやつがいた場合、同じ文字を2つ書かなきゃいけないだろそうすると(ッコ)ってならないか?」

「いい質問です。アキラ君そういう風に並べて同じ文字を読ませるときは、上にこんな感じに線を引いてあげるの」

 エマはメニューに書かれている文字をさしながら軽く指を動かす。

「なるほど……なんとかおぼえられそうだ」

「そう? それはよかったわ。まぁ覚えられないって言われても、自分の名前だけはしっかりと覚えてもらうけどね」

「おまたせしました」

 ちょうど、エマによる1年生国語の授業が終わったときに、ウエイターが頼まれた料理を運んできた。
熱々の料理は空腹も手伝って、かなりうまそうに感じる。

「それじゃ、料理もきた事だし乾杯しましょ。私たちの新たなる門出に」

「あぁ、そうしよう」

「それじゃ、かんぱ〜い」

 俺達はそれぞれエールを持ち勢いよく乾杯をした。
その後、気分のよくなった2人はエールをジャンジャン頼み、酔いつぶれてしまった。












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