僕変身ヒーロー、親友達は怪獣
書きたい物を書いた結果。
「母ちゃんのバカヤロー!」
そう言いながら13才位の私服の少年が家を飛び出て駆けていった。
ちなみに走り抜けていったのは俺の親友だ。
俺の名前は早田俊、僕の親友で同じ13才で家も近所なので遊びに来た所だ。
何があったのだろう?
「こら!俊夫!待ちなさい!...あら俊君こんにちは」
「こんにちはおばさん、何かあったんですか?」
俺は玄関から顔を出した親友の母親に挨拶をしながら何かあったのか聞いてみる。
「え?...あ、いやね何でもないのよ俊君、気にしないで」
「はぁ...分かりました」
まあ気にはなるが、あまり人の家の事を聞いてもいけないのでそれ以上聞かない事にした。
「うちの馬鹿息子どこに行ったか分かる?」
「確かあっちの方に行ったと......」
そう僕が言ってその方向を指差した瞬間、<ドカーン!>と大きな音が町の方から聞こえてきた。
「何だ?」
大きな音のした方を見ると、そこにはビルの大きさと同じ位の大きさの怪獣が出現していた。
「俊夫!?」
「あの馬鹿いきなり何やってるんだよ!」
そう、今出現した怪獣は俺の親友が<怪獣化>で変身した姿なのだ。
彼は先祖代々血筋で<怪獣族>の血を引いていて怪獣に変身し巨大化できるのだ。
ちなみに変身すると、<怪獣族>のエネルギーが体の外部を覆いそれが厚い大きな鎧となって現れるのだ。
まあ変身した時の姿は、本人の性格や行動、イメージによって左右されるらしい。
「ちょっと止めてきます!」
「お願いね俊君」
僕は俊夫の方に走り出すと、周りに人が居ないのを確認した後懐からペンライトのような物を取り出し、それを上に掲げながらスイッチを入れる。
その瞬間僕の体は光りに包まれ、体は大きくなり体の外見も変わり変身が終わる。
「ジュワ!」
そして変身が終わったそこにはよくあ巨大な変身ヒーローが佇んでいた。
赤と白...いやシルバーだっけ?まあ昔からよくテレビの特撮で放送されているあれである。
俺は早速俊夫に話しかける。
「おお!ワルドラ7が来てくれたぞ!」
「頑張れー、ワルドラー」
他の人々がそう言いながら僕に声援を送ってくれているのが分かるけど...毎回大した理由で戦ってないんだよなぁ...
この前は和美ちゃんの癇癪を何とかする為に変身したし、その前は近所のよっぱらいのおじさん静めるのに動いたし...
これ世界平和とかじゃなくて、うちの近所の人が暴れてるのを鎮めてるだけだもんなぁ......
まあとにかく今は俊夫を落ち着かせるのが先だ!
「ジョワ!(俊夫!お前いきなり何やってんだよ!)」
「ギャオーン!(うるせー!お前に俺の気持ちが分かるもんかー!)」
そう言いながら俊夫は力任せに腕を振る。
すると同じ大きさのビルがいかとも簡単に崩れ、その大小の瓦礫が下へ落ちていく。
「ジョワワ!(俊夫!何があったのかは知らないけど落ち着け!話してみろ)」
僕はそう言いながら俊夫の肩を抑える。
まあ傍目から見たら特撮ヒーローと怪獣を抑えているようにしか見えないだろう。
「ガオー(お前に言ったってわかんねーよ!)」
「ジョワ(いいから言ってみろよ?)」
すると俊夫はポツリと喋り始めた。
「ガァ......(500円)」
「ジョワ?(は?)」
「ギャオオオオオーーーン!(母ちゃんに欲しいカードゲームあるから小遣い500円アップしてくれって言ったら......怒られた。頭にきたから町を壊すんだー!!)」
「ジョ!ワーーーーーーーーー!(ふ・ざ・け・ん・なー!!)」
そんなアホな理由でこいつに町を壊させてたまるかーー!
しかも500円UPできないからって鬱憤晴らすために<怪獣化>するとか信じられんわー!!
そりゃおばさんも言いたがらない訳だよ!
「ダァーーー(そんな理由で<変身>してあばれてんじゃねー!)」
「ギャオー!ギャオオーン!(うるせー!お前に500円の重みが...レアカードの重みが分かってたまるもんかー!)」
「ジョワー!(分からんわーーー!)」
そんな理由で町を壊される人の身にもなってみろよお前!!
つか知られたらフルボッコにされるぞお前!!
これは早くこいつを抑えてこいつの家に連れて帰らなければ......
けど、毎回毎回何でうちの近所の連中は騒ぎを起こさないと気が済まないんだろう?
無視したら被害は拡大するだろうし...全く頭が痛くなるよ。
とにかくこいつを何とかして町を守らなくては......
「ジョワ!」
僕は掛け声をかけながら俊夫を抑える為に組みかかる。
「ガァ!」
すると俊夫の奴、そうはさせじと暴れ始めた。
くそ!こいつ力は僕よりも強いので暴れる俊夫を抑えきれない。
そして暴れる俊夫と僕に巻き込まれ近くのビルがガラガラと崩れ落ちる。
ああ!また建物が壊れた。
作ってくれた人達ごめんなさい。
「ジョッワ!(俊夫!ビルを作るのだって大勢の人の力とか費用がいるんだぞ?)」
「ガオー(俺の金じゃないから知らないし、関係無い)」
ああもう本当に我儘なやつめ。
そうこうしている内に、町での戦い(?)は数分経っていた。
そして僕の胸にある丸いレンズのような物質がピコ、ピコと光を放ち、点滅し始めた。
くそ!不味い、制限時間が近づいてきた。
変身する巨人の例に漏れず、僕も変身した時の制限時間はあまり無い。
最近は制限時間が多い人も出始めたようだけど、僕はまだまだ未熟なので少しだけだ。
そうこうしている間に俊夫は僕を振り切って、また町を破壊し始めようとしていた。
くそ!こうしている間にも僕らが動く度に周りの建物が壊れていくっていうのに......
僕は必死に、俊夫にチョップやキックをしながら動きを止めようとしながら俊夫に語りかける。
「ダァー!(何でこの年でこんな事で変身してお前達を僕ら家族が止めなきゃならないんだよ!いい加減にしろぉ!)」
「グオオォオ!(知るかー!俺達はただ暴れたいだけなんだー!)」
「ジョッワ!(だからそれを止めろって言ってるんだよこの馬鹿!)」
「ギャオー!(馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ、ばーか、ばーか)」
ビシィ!...(怒りマークが浮き出た擬音)
この野郎......人が下手に出てりゃあいい気になりやがって......
よし分かった。
そっちがその気ならこっちにも考えがある。
「ジョワ!(俊夫!いい加減に暴れるのをやめろ!)」
「ギャオン!(いやだ!まだ俺は暴れたりないんだ!)」
「ジョーワ(我儘言うな!止めないなら...)」
「ギャオ?(止めないならなんだよ?)」
「ジョワン(...今後お前に宿題は見せない)」
「ギャ、!ギャオオン!(ちょ!おま!それ卑怯だぞ!!)」
「ジョワー、ジョワ!(たかがお小遣いUPして貰えないからって暴れるやつにはそれで十分だ!)」
「ギャオー(くっそー......)」
悩んでる悩んでる。
俊夫の奴はいつも(子供は遊ぶのが仕事だから勉強なんてしなくていいんだよ)とか言ってる奴で、自分から進んで宿題をしようとはしない奴だ。
まあ、宿題を忘れる度に先生に怒られたり親に怒られたりしているのだけれど......
「ギャオー...(たかが宿題ぐらい...)」
「ジョワ(宿題しなかったら先生と親に怒られるぞ?)」
「ギャ...(そ...それは......)」
俊夫の顔が真っ青になる。
うん。余程効いたんだな、動きが止まっている。
僕は俊夫から離れると腕を交差させて、その場所にエネルギーを集約させる。
「ギャオ!(はっ!しまった!)」
俊夫も気が付いたみたいだがもう遅い、僕のエネルギーを集約させた場所から光線が俊夫に向けて放たれる。
一応言っておくと、この技は殺人技ではない俊夫とかの<怪獣族>のエネルギーを中和する効果があるのだ。
つまり、この技を使って俊夫の外部エネルギーを破壊し、本人を元に戻すのが僕の役目だ。
後、この必殺技を浴びた外部の怪獣族エネルギーは何故か爆発を起こし、内部の人間を別の場所に転移させるという機能も備わっている。
そしてその後1週間は変身不可能ときている。
まあ、1週間なのは僕が未熟だからなんだけど...父さんとかなら1ヶ月単位で変身不可能に出来るからなぁ。
だから正体がばれる心配はほぼ無い。
「ギャオーン(ちくしょー!)」
そう言いながら俊夫は光線を喰らった後、爆発した。
ふー...手間をかけさせやがって。
「ありがとうー、ワルドラ7-!」
「ジョワ!」
僕は急いで空へ飛び立つと、誰も居ない場所で変身を解き元の姿に戻った。
「さて、家に帰ろうか......」
こうして僕の1日は終わりを告げるのであった。
ちなみに。
あの後、元に戻った俊夫は自分の母からきつーくお仕置きされたのだという。
「俊夫!あんたって子は!!」
「母ちゃんご免、悪かったってー!」