第二章(5)-暴君関西男再び-
坂野先生の厳しい発言に、静まり返っていた部屋。
今日から船出だというのに、まるで葬式のように重苦しい空気に包まれていた。
「さぁ、帰るなら今ですよ」
追い討ちをかけるように坂野先生の低い声が響いた。
「先生、いいですか」
それは後方で座っていた二十代前半の男の人だった。
坂野先生が「どうぞ」と言うと、その人は顔を強張らせて問い始めた。
「これから頑張っていこうって言うのに、ちょっと厳しすぎませんか。それに皆だって中途半端な気持ちでここに来てはいないと思います」
「そうですか。それなら結構。ただし、覚悟しておいてくださいね。僕を笑わせられない限り、あなた方にチャンスは無いと思っていて下さい」
この坂野先生の言葉で、にわかに生徒たちがざわつき始めた。
すると先ほどの男の人が再び尋ねたのだった。
「先生を笑わせたら、Aクラスへの転属もあるわけですね」
坂野先生は名簿に目をやりながら彼に返答する。
「君は……佐伯君だね。もちろん、僕だって後継者を育てたいことに変わりは無い。公正に判断するから心配は要らない」
その時だった。部屋のドアが無造作に開かれ、一人の男が部屋に入ってきた。
「こんちわーっ」
その男は軽く坂野先生に会釈すると、僕の隣の椅子に大きく足を広げてどっかりと腰を据えた。
「あ……」
僕は頭が真っ白になった。その男はオーディションの日にぶつかってきた、あの忌々しい関西弁の男だったからだ。
「あれ? マジで? お前みたいなんも受かったんか?」
乱暴な言い方に僕はイライラしたが、ただただ作り笑顔を繰り返すばかりだった。
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