(29)
---------ヒロ目線--------
「あ〜あ翼行っちゃった、本当翼って分かりやすいな〜」
腕を頭に回しあくびをしながらつまらなさそうに目の前の資料を見る
「ねぇ、優等生君この明日の“副会長”からの挨拶って、俺が少し変えても良いんだよね?」
奇妙な笑顔を浮かべ、楽しそうに資料をめくっていく
「少しならアレンジも構いませんよ?
あと・・・・・僕の名前は、本田です。ヒロ様は、何度言ったら分かるんですか・・・・?」
相当“優等生君”と呼ばれるのが気にくわないのだろう本田は、不機嫌そうな顔をして素っ気無く答える
「ごめんごめん♪」
そう言いながら、ヒロは、手元にあった資料にボールペンで何かを書き加え、満足そうに眺め見る
「何を付け加えたんですか?」
あまりにもヒロが嬉しそうなので、本田は少し気になり資料を覗こうとする
「まだ駄目だよ。これ明日のお楽しみなんだから☆」
資料を慌てて隠すとキラースマイルと呼ばれるあの笑顔で本田にウインクした
--------涼子目線--------
体の中の熱が疼いて、そのもどかしさにおかしくなりそうになりながら涼子は必死で寮へと戻る
通常なら4限目の数学を受けに教室へ向かうのだが、今はそんな教室へ行ける状況では無かった
足がうまく前に出ず何度も転びそうになりながら涼子はやっと部屋へと戻った
「・・・・・・また授業サボっちゃった・・・。」
今頃になって不安感が襲ってきたが、もう精神的に疲れていたので考えるを止めた
ベッドに寝転び翼の事を考えると、再びあの何とも言えぬもどかしさが体中を突き抜ける
アタシおかしくなっちゃったのかも・・・・・・・――
今までに無い感情とおかしくなりそうな感覚に涼子は不安感を覚えた
涼子は、そんな不安感を洗い流そうとバスルームへ向かう
下着を脱ぎ、洗濯機に入れようとした時、涼子は今までに無いくらい驚いた
大きなシミが下着にくっきりと跡を残していたのだ
恥ずかしさと自己嫌悪を洗い流すように下着を洗濯機の中に放り込むと涼子はゴシゴシと荒く体を洗った。
--------翼目線--------
「涼子、部屋にいるのか・・・・・・・?」
忘れ物を取りに行こうと寮に戻ると隣の部屋からシャワーの音が聞えてくる
翼は、駄目だと思いながらもそっと耳を壁に当てた
微かに聞える水の音が、とてつもなく官能的に聞え、翼の胸の鼓動を早めさせる
涼子に触れた時のあの感触、肌触り、甘い声が鮮明に甦り、いつかヒロと見たAVの女と涼子を重ね想像してしまう
「俺、何やってんだよ・・・・・・。」
欲望を抑え切れなかった自分に腹が立ち近くにあったクッションに八つ当たりをすると物音をたてぬようそっと部屋を出た
「あー!いた翼何処行ってたんだよ〜?もう会議始まるよ!」
いつでもハイテンションで明るい翔太が翼を呼び止める
「悪い、忘れ物を取りに行ってた。・・・・・・で、それは、何だ?」
スポーツ少年の翔太は会議室にまでバスケットボールやバットなど色々な物を持ち込む
「最近買った新しいラケット!俺何かスポーツ用品持ってないと落ち着かないんだよね」
ニィっと笑うと日焼けした肌のせいか歯が余計に白く見える
そんな無所気な性格が、みんなに好かれ、憎めない所でもあった
「翼ぁー早くぅ!俺早く会議終わらせてテニスしに行きたいんだからぁ!」
授業もお構いなしに翔太は朝から晩まで他のクラスに混じって体育の授業だ
その他の授業はテスト前以外全然受けていないはずなのに、以外にも翔太は学年トップだったりもする
ガチャッ!
会議室には、もう約半数の人数が集まっていて、皆それぞれ話を楽しんだり、資料を眺めていたり和やかな空気の中で心地よい時間を過ごしていた
「会計長と生徒会長只今参上だよ――んッ☆」
まるでヒーローごっこをしている子供のような決めポーズを取り、またあの無邪気な笑顔でみんなに挨拶する翔太
会議の中の大半は老年層で、他の学校の校長や市長だったりもする
「コホン・・・・・皆さん宜しいですか?これから我が校“神門坂私立高校”今年度の予算を決定したいと思います。」
校長の一言で徐に始まる会議は、先程の和やかな空気とは一変し、張り詰めた空気が流れる。
「では、我が校の会計長。福山翔太がみなさまに我が高校の現状をご説明致します。お手元の資料2ページをご覧下さい。」
先程とは、声のトーンも話し方もまるで同一人物とは思えない程変わる翔太。
その様子を翼は満遍の笑みで見ていた。こういったメリハリの利く男だからこそ、翼は翔太を生徒会に入れたのだ
「我が校は、経済的には危機という訳ではありません。しかし、だからと言って無駄遣いなどで多額の援助金を無駄にするという愚かな間違えは犯してはなりません。
そこで、この学校に必要な物を生徒にアンケートを取った結果、生徒達が交流を持てる大きなホールや、運動不足にならぬようトレーニングジムなどの意見も出てきました。」
「しかしッ!それは生徒達の意見であり、教育に必要なものかどうか・・・・・・。」
翔太のやり方に賛成しない隣の学校の校長が反論をする。
するといつものように、表情一つ変えず単調に答える翔太
「この学校を心地よく快適な学校にする為には、1番生徒の意見を取り入れるべきなのではないでしょうか?
僕は、生徒会やら校長やら偉い人達が勝手に教育に必要無いなどと言って縛られた校則に使徒達が捕らわれてほしく無いんです。」
いつ聞いても完璧で筋の通っている翔太の意見に誰もが関心し、反論した隣の学校の校長は少し悔しそうな顔をした
「それでは、生徒達の意見をまとめた資料が5ページに掲載されておりますので目を通しておいてください。
全工事費を約1000万円とし、いかに低コストで工事を進めていくかは、僕に全てお任せ下さい。
それでは、校長、後の会議の進行を宜しくお願いします。」
そう言うと翔太は、翼の隣に用意されてある自分の椅子へと戻る
「ぅ〜すごぃ緊張したよぁ〜・・・・・。」
翼の耳元で皆に聞ええぬよう小さな声で話す翔太は、もうすでに完全OFFモードの翔太に戻っている
「緊張感見せず、相変わらず完璧だった。」
正直な感想を言ったまでなのに。またまたぁ〜とおどけてみせる翔太を見るとまだ自分の完璧さに気付いていないらしい
完璧な翔太と違ってオドオドと少し戸惑っている校長の姿はやはり翔太の後だと見苦しい
長々とした会議が終わったのはもうあれから1時間近く経った頃だった
「以上、会議を終了します。」
疲れの溜まった表情で情けなく校長が吐くと皆一斉に立ち上がりリラックスし始めた
「はぁ〜相変わらず会議って疲れるよ〜」
会議室内まで持ち込んだラケットのガットを調整しながらあくびをする翔太
「俺なんて朝からずっと会議詰めだぞ。」
「本当翼毎日ご苦労さんだよ〜・・・・・
・・・・・―ってそうだ、ヒロって本当に生徒会に入ってくるんだろ?しかも副生徒会長なんてよくやるよな」
それは、翼も驚いていた。生徒会に入るには翼からのスカウトか生徒達の推薦が無いと入れない
仮に生徒会に入れたとしても最初は皆雑用係として使われる、いきなり副生徒会長などとは過去にない例だった
「それにさぁ、ヒロが生徒会入ったの涼子ちゃん狙いなんだろ?翼大丈夫かよ〜?」
「涼子は俺専用のペットだ、誰にも譲る気など微塵も無いから安心しろ。」
勿論涼子を取ろうとする相手がヒロだろうと容赦はしない。
「ハハハ!翼ならそう言うと思ったよ、
あ!でも一つ忠告ね?あんま涼子チャン虐めると嫌われちゃうよ?」
何処かで聞いた事のある台詞、それは、今日亮に言われた言葉と全く同じものだった
「俺ってそんなに涼子虐めてるか・・・・・・・?」
一人呟く翼だった
|