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丸い丸い人生模様
作:一河善知鳥


 小さい頃。姉ちゃんが真っ赤な風船を膨らましてくれた。ふーっ、と姉ちゃんが一生懸命に息を吹き込むとまるまる太って、なぜだかとっても満足そう。重たいから、それは地面にぽとりと落ちる。本当はふわふわ浮かぶ風船も好きだったけれど、ぽーんと投げて戻ってくるほうもあたしは好きだった。―って、結局どっちも好き。風船って、すごく好き。
 だけど一週間もすると風船はしわしわにしぼんでしまった。割れないから、空気は抜けるはずないのに。ぺたぺた触るとあたしは風船の最期を知る。もう満足そうに膨らまない。―だって穴なんてあいてないんだ。

 今になって思う。風船って人間みたい。たくさんある中でたまたま手にとられて誕生。膨らまされて成長、そして閉じられたらもう大人。あとはゆうるりと空気が抜けるのを待っているだけ。
 あたしは大人になって、地面に落ちる理由も、空を飛ぶ理由も知っている。もちろん、しおれてしまう運命も。
 それでも風船が好きなのである。あの日の姉ちゃんの甘い息が入った風船みたいにまるまる太ったかわいい風船が好きなのである。ふーっと、今でも一生懸命になってしまうときの真っ赤な顔。
「ははは、ママが風船みたい」
子どもに言われた。でもやっぱり、そんなこの子も大きな風船が大好きで、一時間でも二時間でも寝そべって上に投げたりしている。
 ふと、いつかこの子にも風船の仕組みがわかるときがきっとくると思った。たぶん、あと五年後か、十年後か、理科の授業でそのことを知る。たぶん、それは取りとめもない授業のひとコマで、きっと今日のことなんてずっと後に思い出す。まるで今のあたしのように。だけど、その日がくるまで、心の風船はどうかしおれないでいてほしい。
 …なんて、すっかり大人になっているあたし。














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