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《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―Free Life―
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発売日が近くなって来ました…。

毎日更新は発売日までします。それ以降は少し更新速度が落ちると思います。

「この肉まんはこの私が貰った(一口)!」

「そうはさせるか! 肉まんは僕がいただく!」

「あこれ違う肉まんじゃなくてあんまんだ(呆然)」

「あ、あんまんは今はいらないです」


 パーティ会場に着くと既に料理が並べられており、箸を手にしたらーさんとカタナが恐ろしい勢いでそれを食べていた。それを見た剣犬がらーさんの頭を小突きつつカタナにもやんわりと注意をする。その後ろで剣犬が見ていない間に瑠璃が猛スピードで料理を口に詰め込んでいるのは見なかったことにしよう。

 パーティ会場には《照らす光》のギルドメンバーが多数おり、料理を食べている者もいれば料理を運んで持ってきたりしている者もいる。料理は自由に自分で取り分けるバイキング形式のようだ。

 会場の様子を見ていたドルーアに話しかけると、栞が話をする前にらーさんが暴走してご飯に手を付けてしまったから皆も料理を食べているという話をしてくれた。いや何してんねんらーさん(呆然)。

 もう少しで参加する人が全員集まるようなので、それから栞が皆の前で話をするようだ。

 ドルーアの話によると《不滅龍ウロボロス》や《連合》のギルドメンバーはパーティには来ていないようだ。《不滅龍》は色々忙しいようだし、《連合》は毎回パーティのような行事には参加していない。《照らす光》はパーティをしていていいのかと聞いた所、新しい街やエリアには探索隊を出しているし、何よりこうして皆の士気を上げる事も大切らしい。

 ドルーアと話をしている間、リンは並べられている料理を見て「な、なかなかの腕前……」と一人で唸っていた。どうやらここの料理の出来は凄いらしい。確かにこの会場に置かれている料理はどれも美味しそうだ。それに色々な種類が揃っている。

 しばらくドルーアと雑談していると不意に会場が静かになった。どうやら呼ばれたプレイヤーが全員揃ったようだ。栞が会場の中心に立って皆に注目されている。


「今日は私達《照らす光》のギルドホームに来てくださりありがとうございます。《照らす光》のギルドマスターの栞です」


 栞はよく通る声でそう挨拶し、それから堅苦しい話を詰まること無くスラスラと話していく。二分程喋ると「それでは今日は楽しんでいってください」と言って話は締められた。栞の話を聞いていたプレイヤー達は色々な人と雑談しながら《照らす光》の料理人が作った料理を自分の皿に乗せていく。

 栞と少し話したくて姿を探すと攻略組のプレイヤーと思われる何人かと何かを話していた。ドルーアが言うには色々なギルドやパーティのトップが挨拶をしにいっているようだ。もう少ししたら終わるから先に食べておいたらどうかと勧められた。

 栞と一緒に食べようと思っていたんだが……。

 リンが皿を手にお預けを食らった犬の様な顔で俺の方を見ていたのでドルーアの言葉通りに先に食べておく事にした。先に食べてても良かったんだぞ、と言うとお兄ちゃんと一緒に食べたいのと返された。可愛い奴め。

 リンと一緒に料理を見て回り、美味しそうなのは片っ端からトレイの上の皿に乗せていく。皿に乗せると料理はそのプレイヤーの所有物になるようなので、人の皿から勝手に取って食べる事は出来ない。だかららーさんとカタナはあんなにがっついていたのか……と呆れならが納得する。あいつら食い意地が張ってるな。


「お前さん、確か《イベント》の入賞者だろ? 今回のボス攻略でもかなり活躍してたよな」


 料理を物色している途中で男性のプレイヤーに話し掛けられた。誰かと思って顔を見ると掲示板でも色々ネタにされている《海賊王》さんだった。最近分かったけど名前はPairetuというらしい。容姿から察するにPiratesっていう名前にしようとしてPairetuになったんだろう。一部の人からはパイレツさんという名前で親しまれているようだ。なんかものすごい悲しい気分になる。なんでだろうね……。


「あ、はい。どうも」

「いやーいい戦いぶりだった。確か名前はアカツキって言うんだろ?」

「はい」

「じゃあよお、お前、俺の仲間にならねえか!?」

「あ、結構です」

「即答ッ!?」


 このパイレツさんはいろんな人にこうして「仲間にならねえか!?」と言って回り、尽く断られているんだとか。それでも彼自身が強いし仲間もたくさんいるようだけど。掲示板には「昔ヒットしてた漫画の影響だろww」と書かれていたけど多分そうなんだろうな。俺も中学校の頃は名作漫画を読み漁ったもんだ。

 パイレツさんはその後もハイテンションで色々言って来たけど、愛想笑いでやり過ごした。正直早く他の料理を見に行きたい。ようやく話が終わって解放されたと思ったら、他のプレイヤーも色々話し掛けてきた。「うちのギルドに入らないか」とか「パーティに入って欲しい」だとか「やあやあアカツキ君!」とか何人かのプレイヤーに勧誘されたけど、全てやんわりと断っておいた。俺は今の所は決まったギルドに入るつもりはない。時々は知り合いのパーティに入れて貰ったりするが、基本的にはソロで動いていきたいと思う。

 戦人針の話では大きなギルドには裏切り者を仕込んでいるようだしな。《目目目ブラッディアイ》も同じような事をしているとも言っていた。俺がギルドに入ればリンも一緒に入ることになるだろうし、虚空の時の様に裏切られるのはゴメンだ。リンはいらないけど俺は欲しいとか言ってたギルドもあったけど、それは論外だ。俺はこのゲームがクリアされるまでリンと一緒にいると決めたからな。


「なんか最近アカツキ君僕に冷たくないかな……?」

「あはは。こんにちは、カタナさん」

「おいカタナてめぇ俺のリンにちょっかい出してんじゃねえぞ!」


 俺の周りをチョロチョロしていたカタナをしばらく無視しているとリンに話し掛けにいきやがった。この野郎リンには触れさせんぞコラ。


「そんなぁ……アカツキくぅん」


 ふにゃふにゃした動きで俺に手を伸ばしくっついてくる。やめろ気持ち悪いくっつくなお前はらーさんか。酒を飲んでいるのか少し呂律が回っていない。

 ブレオンにも飲み物として酒はある。飲むことによってある程度『酔う』事が出来るようだが、どれだけ飲んでも現実世界の様にダランダランになることはない。β版では『未成年は酒アイテムに触れることは出来ない』様になっていたのだが、今はその規制も取り外されている。俺は酒はあんまり好きじゃないから飲まない(ドクペがあればそれでいい)。リンにも飲ませない様にしている。

 それにしてもカタナって何歳なんだ? こいつの現実世界での情報を俺は全く知らない。聞いても上手い具合にはぐらかされるし。


「アカツキくぅん」

「ええい鬱陶しいぞお前はホモか!」


 そんなにベタベタしてきたら料理が落ちるだろうが! 料理は落ちたらその場で消滅してしまうのだ。もったいないからそんなことにはしたくない。


「いっやぁアカツキくん今回のボス戦格好良かったねえ! まさに主人公ッ! って感じだったよぉ」

「はいはいそうだね」

「そんな邪険にしないでよぉ。ボス戦前も軽くスルーされて僕寂しかったんだぜ?」

「分かったからベタベタするな!」


 カタナはあははと笑いながら腕を組んでくる。やめろこいつ酔うとホモになるのかおい。


「アカツキくんは格好いいなぁ。殺しちゃいたいぐらいだよ」


 顔を赤らめてこいつ恐ろしい事を言いやがる。


「お前なんかに殺されてたまるかってんだよ。おら離れろ。ホモホモしいぞ」

「ホモも何も僕女だし」



「ファッ!?」


 え、なにえ? 嘘なにそれえ? カタナちょえ?


「元々背は高かったし、外見をちょっと弄っただけで男みたいな外見に出来るんだよぉ」

「は、はお!?」


 動揺のあまり口から訳の分からない言葉が飛び出す。料理を取り落としそうだった。リンも「えっ」て顔でカタナを見ている。

 確かに外見が男っぽければ女だって男に見せることが出来る。だけど、え、何嘘でしょ?


「おいおいどうしたんだいアカツキくん。僕が女の子だってことがそんなにショックかい?」

「嘘でしょ!? え? 嘘でしょ!?」

「カタナさん……女の子だったんですか!?」

「あはは、さてどうでしょう。今のは嘘かもー。あははははー」

「あ、ちょっと待てカタナおい!」


 カタナはそう言うと笑いながらどこかへ言ってしまった。残された俺とリンは呆然とした表情でしばらく立ち尽くす。

 後日、カタナに聞いても「え、そんな事言ったっけ?」とかなんとか言って答えてくれなかった。ただふざけていった、と言うのもカタナの性格上ありえる話だし、男のふりをしていた女というのもありえそうな気がする。結局カタナの性別はその後明かされる事は無かった。

 まあ酔った勢いの戯言だろう。カタナの性別は男だ。男なんだ。男に違いないんだ。

 あの時カタナに一瞬驚きではない意味でドキッとしたのは多分恐らくいや絶対に気のせいだろう。

 

 

次回もパーティの話。


書籍版の新キャラがそのままヒロインになってしまったけど、リンはWeb版と同じようにメインヒロインになれるのだろうか…。

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