表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―Free Life―
77/148

74

一周年記念ということで、三話更新してみました。

これからもよろしくお願いします。

 全身を黒く物々しい鎧で包んだ男達が武器を俺達に向け静止するように命令してきた。ヘルムの隙間から鋭い目付きで俺達を睨みつけ、武器を向けて七人の内の三人が武器を手にしながらこちらに歩いてきた。

 剣呑な雰囲気に後ろのアストロ達が息を呑む。


「現在、我々《攻略連合》はこのエリアの攻略に向け、精力的に活動を行なっている。そこにPKギルドや悪質なプレイヤーが介入し、邪魔をすることを阻止する為に私達はエリア前で見張りをしている。お前達は一体どこのプレイヤーだ?」


 近付いて来た男の一人が険しい声を上げる。歳は三十近いだろうか。俺達よりも大人だろう。大きな銀色の槍を片手に威圧的な態度を俺達に向けている。何なんだこいつらは。

 「《連合》の連中は前から『我々は攻略のために力を尽くしているのだから偉くて当然』みたいな所がありましたからね……」とドルーアが小声で呟く。なるほどな……。これはまた面倒な連中だ。


「何をコソコソしている? 我々はこの世界に囚われたプレイヤーを解放するために働いているのだぞ。あまり面倒を掛けないで貰いたいな」


 男が苛立ちを込めた声を出す。その様子にこれ以上黙っている訳にもいかないので、パーティーを代表して俺が口を開いた。あまりこういう話は得意ではないのだが、後ろではカタナがニコニコ笑っているし、『ラケット』のメンバーはオロオロとしているし、《照らす光》の連中は呆れたような顔つきで見ているし、やっぱり俺が話すしか無さそうだ。


「俺達はこの隠しエリアが発見されたと聞いて、攻略するためにやってきた。俺はアカツキという」

 

 俺がそう言うと、男は偉そうに鼻を鳴らす。


「私はここを任されている《攻略連合》第五部隊隊長のアオギリという者だ。それでアカツキ君、悪いが帰っては貰えないだろうか? さっきも言ったが我々はこの世界に囚われたプレイヤーを解放する為に動いている。その為には十分な装備、レベル、アイテムが必要となる。この隠しエリアを攻略することが出来れば、我々の戦力はより強化され、皆がこの世界から解放される日も近くなるだろう」


 アオギリの勝手な言い分に後ろの連中が殺気立つのを感じた。ちらりと横目で見てみると栞と七海が殺気ビンビンでアオギリ達を睨みつけているし、林檎とドルーアはただ笑っているだけだが、明らかに苛ついている。ここでまだ何も言わないのは俺が話している最中だからだろう。

 カタナは顎に手を当てて俺達の様子を楽しそうに観察しているし、『ラケット』の人達も頼りになりそうにない。エッグ1っていう無口な男の人は『ラケット』の中でも冷静そうだが、面倒なのか周りの風景をぼーっと見ている。

 畜生……。ガロンがいてくれたらパパっとまとめてくれそうなのにな……。

 


「えーと、攻略エリアや隠しエリアなどは確か独占してはいけない事になっていると思うんですが?」

「独占はしていないさ。我々はただ帰って欲しいと言っているだけなのだからな。よもや攻略の邪魔をするとは言わないだろうな? 君達もこの世界から一刻も早く出たいだろう? それに、このエリアは現在、第一部隊と第二部隊が探索中だ。彼らは少々荒っぽいからな。巻き込まれるのは嫌だろう?」


 どうやらこのアオギリさんは俺達を通すつもりは無いらしい。あのさあ……。そのヘルムの隙間からじゃよく見えてないのかねえ……。俺はとにかく、後ろにおわすは天下の《照らす光》の主要メンバーなんだけど……。


「いい加減にして下さい」


 と、ここでとうとう黙っていられなくなったのか、栞が口を出してきた。俺を押しのけてアオギリの前にやってくる。


「な……お前、らは」


 栞の顔を見て誰を相手にしていたのか、気付いたらしい。目を見開いて栞とドルーア達を確認し、後ろによろよろと下がった。栞の冷たい視線を受け、アオギリとその部下達が押されカシャカシャと音を立てながら後ろに下がる。

 だがそこですんなりと引き下がる訳にもいかなかったらしく、ゴクリと喉を鳴らした後にアオギリが一歩前に踏み出し、栞を上から威圧的に見下ろす。


「ふ、ふん。誰かと思えば《照らす光》のマスター様じゃないか。後ろには幹部もいるみたいだな。確かにこの森を攻略するのには十分な戦力かもしれんが……これは子供のお遊びじゃないんだよ。後は私達に任せて帰ってはくれんかね?」

「子供のお遊び? 笑わせないでください。さっき否定していましたが、これは間違いなく『エリアの独占』ですね。独占することはいかなるギルドやパーティーであろうとしてはいけないと、『第一回』の会議で決められたはずです。《攻略連合》はそんな規則も守れていないようですが、子供はどっちですか?」


 栞が冷たくそういった瞬間、アオギリが手に握っていた槍を栞に向ける。ギリギリと歯ぎしりをし、目を怒りで見開いている。


「が、餓鬼があまり大人を舐めるなよ……」


 周りに控えていたアオギリの部下達も、武器を構えてこちらに近付いて来ている。

 おいおい……栞よ……。もうちょっと穏やかに事を進めてくれよ……。

 先程よりもより剣呑な雰囲気に、「どうするんだよ」と《照らす光》勢に視線を送るが、三人ともまるで緊張感のない笑みを返してきた。それどころか何故か三人とも後ろでビクビクしているアストロ達の方へ「大丈夫ですよー」と言いながら歩いて行ってしまった。……話し合いに参加するつもりは無さそうだな。

 やれやれ……全く。


「大人大人といいますが、ただ私より無駄に長く生きているというだけでしょう? そんな人に何かを任せる事はできませんので。そこをどいていただけますか?」

「ッッ!!」


 案の定というか、何というか。栞がそう言い捨てた瞬間にアオギリが逆上した。声を上げながら栞に向かって手にしていた槍を突き出した。




「それ以上はやめとけよ」


 栞が剣を抜くよりも早く、二人の間に割り込んだ。突き出された槍を横から掴み、強引に動きを止める。突然の乱入にアオギリは怒鳴り声を上げ、槍を突き出そうとするがそうはさせない。


「う、うぎぎぃ」


 アオギリが腕に力を込めるが、それでも槍は動かない。

 第五部隊と言っていた所から予想はしていたが、やはり大した実力じゃないな。話によると《攻略連合》は七の部隊でなりたっていて、数字が小さいほど実力が高いらしい。やはり第五部隊の隊長じゃこの程度か。


「現実じゃどうか知らねえが、この世界じゃ歳なんて関係ねえよ。雑魚は引っ込んでろ」

「ぐっ……貴様……何だこの力は」

「その人は今回のイベント三位、《赤き閃光フィアスレッド》もしくは《仮装乱舞シルバーマスカレード)》!! 貴方が勝てる相手ではありませんよ!」


 後ろからなんかアストロが言ってる。それに対してアオギリも「なん……だと……」とか言ってる。

 隊長が抑えられたのを見て部下達が動き出す。どうしたものかと思っていると、部下達の目の前を青い光が地面を削りながら通り過ぎていった。《真空斬り》か。

 動きを止めた部下達の前に、太刀を手にしてカタナが出てきた。


「もう面倒だね。僕は面倒事が嫌いなんだ。大嫌いなんだよね。だからアカツキくーん。こいつら斬ってもいいかな?」


 邪気の欠片もないような、無邪気に見える笑みを浮かべながらカタナがそういった。そのあまりに何でもないような様子が恐ろしかったのか、男達は武器を納めて後ろに下がっていった。

 それでアオギリも冷静さを取り戻したらしい。槍に込めていた力を抜いて、後ろに下がっていった。もう何もしてこないだろうと思ったので、槍も放しておく。


「えーと、まあ、そういうことで」


 アオギリ達にそう言って《ブラッディフォレスト》の入り口に向かう。カタナは残念そうに太刀を背中に納め、着いてくる。


「別に貴方が割って入って来なくても、あの程度の男はどうにでもなりました」


 栞が俺の方を見ずにそういった。

 あー……それもそうだな。咄嗟に身体が動いちゃったけど、余計な真似出すぎた真似だったな……。恥ずかしい。


「でも……ありごにょごにょ」


 栞は何かモゴモゴと言うと、歩く速度を上げて一番乗りで《ブラッディフォレスト》の中へ入っていってしまった。それにカタナが続く。今回殆ど台詞の無かった『ラケット』のメンバー達も中に入っていった。

 

「流石ですね、アカツキさん」


 ドルーアが笑いながら言って来た。うるさい。


「やっぱりお兄さんですね」


 林檎がお嬢様スマイルを浮かべながら言って来た。やかましい。


「……格好良かった」


 七海がなんか顔を赤くしながら言って来た。…………。


 もうなんか疲れた。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんだこりゃ? この手の話ではよく湧いてくるタイプのキャラクターだけど、本人たちは本気でそう思ってるのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ