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《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―Free Life―
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どうもお久しぶりです。現実世界がかなり忙しくパソコンを触る暇が殆どなかったせいでだいぶ間が開いた更新になってしまいました。遅くなってすいません。


 正直に言うと俺は結構根に持つタイプだ。いやみんな知っているかもしれないが、一応言ってみた。この世界にきて多少、ほんの少しは成長できた気がするけど、根に持つ性格なのはあまり変わっていないらしい。

 何故急にこんな事を言い出したのかは、俺が今何をしているかを聞けばすぐに分かると思う。


 《イベント》が終わってから俺とガロンの関係は回復した。いや、以前以上に仲が深まったと言ってもいいかもしれない。メッセージでやり取りしたり、二人で攻略エリアに潜って珍しいアイテムを探したり、リンの店で夕食を食べたり。とにかく二人でよくつるむようになったのだ。まるで現実の友達のように。まあガロンは攻略組に属しているし、ギルドのマスターをしているようなので毎日遊ぶという訳にはいかないが。まあそれでも数日に一日ぐらいは会う関係になった。だけどどうやらそんな俺とガロンの関係を快く思っていない人もいるようだった。

 ブレオンスタート時からガロンと共に行動していた連中だ。出会った時に俺を信用出来ないって言ってパーティーへの参加を拒んだ連中だ。まあでもそれについては確かに思う所がない訳でもないけどもう終わった話しだし、それについて彼らに何も言うつもりは無かったんだ。いや本当に。



 俺とガロンはあるエリアにある海エリアで釣りをして帰ってきていた。

 俺はスルメが大好物で、こんがり焼いたスルメを七味唐辛子を掛けたマヨネーズで美味しく頂くためにガロンと大量にスルメの材料となるイカを釣ってきた。


「にしてもオヤジみたいだな。スルメが好きなんて」

「いやいやいやいやいやいや。ドクペ+スルメのコンボは最高なんだよ」


 よく家で焼いて食べたなあ。その度に栞に臭いっていって怒られていた。分かってないなあ、あの臭いがいいんじゃないか。あのイカ臭さがね。いや変な意味じゃなくて。


「まあ確かに俺もスルメ好きだし、チータラとかビーフジャーキーとか好きだけど。そのドクペって奴だけはないな。あれは人間の飲み物じゃない。あの鼻がひん曲がりそうになる薬の臭いといい、あの形容しがたい味といい、あれはない」


 聞き捨てならない発言だった。


「なんだと……? 貴様ァドクペを愚弄するか! あの究極にして至高の知的飲料であるドクペを!」

「いやいやあれはむしろ飲んだら馬鹿になりそうな味だよ」

「馬鹿になりそうな味だと……? 貴様ァ! もう百回言ってみろ!」

「いや何回言わせるつもりだよ」


 なんて会話をしながら街の中を歩いている時だった。不意に俺達の前に見知らぬ男が立ちふさがった。いや見知らぬというか、どこかで見たことがあるような無いような、そんな男だった。


「カイバ……」


 その男はガロンの立ち上げたギルド《烈火》の幹部にして、俺に向かって「お前は信用出来ない」といった男だった。彼の名前はノカイバーと言うらしい。ガロン達はカイバとよんでいるようなので俺もカイバと呼ぶことにした。

 カイバは俺の事をギロリと睨みつけながらこう言った。


「もういい加減にしてくれよガロン。こんな得体の知れない奴と絡んでる暇があったらギルドの新参達のレベル上げを手伝ってくれよ」

「……カイバ。今日は俺はフリーの日の筈だ」

「ギルマスがそんな無責任なこと言うなよ」

「……あのな、俺達が《烈火》を立ち上げる時に、ギルマスだから、とか幹部だから、とかはない、自由なギルドにしようって決めたじゃないか。確かに俺達は攻略組の一角だが、その為のスケジュールは予めしっかり決めているだろう? それにお前もたまには息抜きは必要だ、なんて言っていたじゃないか」


 そうガロンが言ったがカイバは納得行かないようで、嫌味をガロンに向けてネチネチという。


「あーカイバさんだっけ? 俺は《烈火》に入ってないから規則とか知らないけど、今の話を聞くと今日はガロンは自由にしていい日なんだろ? だったらそうやって言うのは違うんじゃないか?」

「はぁあ。あのさ、部外者は黙っててくれないかなぁ。そもそもあんたのせいでこうなってんだからよ、ちょっとは申し訳なさそうにしてくれよ」


 ああこれはもうムカつきましたね。


「おい、お前いい加減に――――」


 ガロンがそう言ってなだめようとするが、俺はカイバの勝手な言い方にキレてしまっていた。


「えっとあれだー、カイバさんとやら。そんなに言うんなら俺と決闘しようぜ。俺が負けたらガロンとはあんまり関わらないようにする。その代わり俺が勝ったらガロンとは今まで通りに付き合うってことで」


 そう言うとカイバは怯んだように口を閉じる。なんてったって俺は《イベント》で入賞してるし、その途中でガロンに勝っているからな。怖気付いて当然だろう。


「グチグチ口で言うよりも決闘でちゃっちゃと決めたほうが楽でいいだろ? 俺は早く釣ってきたイカでリンにスルメを作って貰いたいからさ」

「それは……」

「それとも俺と決闘するのは嫌か? まあでも仕方がない事かな。だって俺は《イベント》で三位だしね。怖気づいても仕方がない、恥じることはないさ」


 なんて言えば当然の如く、カイバは乗ってきた。こういう奴は現実でもたくさん見てきた。教室や俺の属していた剣道部、至るところで見てきた。こういう奴は自分の思い通りに行かないとすぐに怒り、正論を言われると怒り、見下している相手になにか言われると怒る。そんな奴らだ。

 現実では出来る限り逆らわないように穏便に行くように過ごしてきた。どうしたら機嫌を損ねないかとか、そういう事を観察して見極めてきた。だから煽り方も心得てる。

 ま、こいつの場合は凄く単純だから俺じゃなくても相手に出来るだろうけどね。


「あんま調子のんなよ。入賞したかなんか知らねえけど勝手なこと言ってんじゃねえ」

「じゃあ決闘するってことでいいかな?」

「当然だ」


 ということで俺とカイバ君は決闘することになりました。



――――――――――――――――


 決闘は街のど真ん中で行われることになった。決闘を見学に来たプレイヤーが俺達の周りを囲んでいる。まだ決闘を始めた訳でもないのになんだよこの人数……。

 野次馬の中には呆れた顔のガロンの他にも、決闘すると聞いて店を放り出してきたリン、呼んでも無いのにどこからかやってきたカタナなど、見知ったプレイヤーも何人かいた。《照らす光》の幹部であるドルーアもその中にいやがる。いったいどうやって決闘するなんて事を聞きつけたんだよ。ドルーアは隣にいるなんか仮面をかぶった黒髪の女の人と話しているけど、彼女もギルドのメンバーなんだろうか? 仮面の女の人は何というか凄く見覚えのある人のような気がするが、カイバが話し掛けてきたので思考を切り替える。


「おい、決闘のモードはHP制でいいな」


 HPが0になるまで戦うモードだ。0になっても、当然死にはしない。


「ああ、それでいい」


 カイバの武器は……槍だ。胸糞が悪いことに虚空と決闘した時の事を思い出すな。あの時は負けたが、今回はぶっ潰すつもりで行かせてもらうとしようか。


 そして決闘が始まった。

 カイバはまあ攻略組のギルドの幹部というだけあって、そこそこの実力を持っていた。虚空は相手の隙を見つけて一気に攻撃するというスタイルだったが、カイバは隙なんてお構いなしで激しく攻めるというスタイルだ。

 決闘が開始すると同時にカイバは気合いを出す叫び声をあげながら、猛烈な勢いで槍を突き出してきた。後ろに下がってそれを回避するとカイバはそれを許さずすぐに間合いを詰めて攻撃してくる。

 ふむ……やはり相手からある程度距離を取りながら攻撃ができる槍は厄介だな。だけどまあ、厄介ってだけでどうにかならないって訳でも無い。

 俺は姿勢を低くし、前に進む。カイバの突き出した槍が髪を掠めていくのを感じながら懐まで潜り込み、がら空きの腹に向かって蹴りを叩きこむ。障壁があるから痛みは無いだろうが、カイバはうめき声を上げる。そこへさらに足を引っ掛けて地面へ倒す。

 こんなことせずに普通に攻撃すればいいのだが、俺は根に持つタイプなので嫌がらせだ。


「どうした?」

 

 倒れたカイバを見下ろしながら馬鹿にしたようにそう言うと、足に向かって槍で突いてきたので後ろに下がって軽く避ける。

 その間にカイバは立ち上がった。


「馬鹿にすんじゃねええ!」

 

 何らかのスキルを発動して突っ込んでくる。どうやら単発突きスキルのようだな。うーん。やっぱり虚空の方がこいつよりやりにくかったなあ。実力的には確かにこいつも相当な物だと思う。実際、攻略組のメンバーなのだから強いのだろう。だがそれは飽くまでモンスターを相手にした場合の話だ。モンスターとプレイヤーとでは戦い方が異なってくる。《イベント》戦で何人もの実力者と戦ったがモンスターとの戦闘に慣れすぎて辛かったな。ある程度は慣れたけどさ。こいつは戦いが始まった時から冷静さを失っていた。怒りがプラスに働く場合もあると思うが、今はマイナスに働いている。

 こんな風に俺に観察されている時点で勝負はもう着いているようなものだ。

 カイバが落ち着いて、冷静な状態で俺との戦いに挑んでいたらまたいろいろ変わってきてたんだろうな。ま、煽ったのは俺だけどさ。

 さて。鬱憤もさっき倒した時にすっきりした。

 だから、


「もう飽きた」


 槍が俺を捉えるより先に《断空》でカイバを頭から両断する。


「う、ぁ」


 再び地面に倒れるカイバ。

 《断空》がモロに入ったことでカイバのHPが一撃で0になったようだった。何とも歯ごたえが無い勝負だった。周りの野次馬が決着がついたことで歓声を上げる。

 




「……悪かった」


 驚いたことに、決闘が終わった後にカイバに謝られた。てっきり怒って罵声を浴びせられるか、何も言わずに立ち去ると思っていたが……。


「イライラして勝手な事言いすぎた。得体の知れない、なんて言ってすまなかった」


 そう言ってカイバが頭を下げてきた。一瞬どうしていいか分からなくなったが、俺にも一応非があったので謝ることにした。


「いや……俺も挑発するような事を言ってすいませんでした」


 そう言って俺も頭を下げておく。

 

「じゃあ今回の件はこれで解決な? カイバ、俺も出来るだけギルドの為に働くようにするからさ」


 そう言ってガロンが最後にまとめた。

 


 それから俺とガロンとカイバはリンの店に言ってスルメを作って貰い、三人で美味しく食べた。カイバはさっきまでのことが無かったようにというか、全然違った態度にフレンドリーに俺に接してきた。その接し方は俺に復讐するために仲良くなろうとしている、とかそう言う感じじゃ無いと思う。


「にしても強えなぁ……。瞬殺されちまったよ」

「そりゃアカツキは俺を倒してるしなぁ。クソ、今度俺とも決闘しろよ! 次は俺が勝つ」

「俺も負けたまんまじゃ居られねえ! 強くなって俺も次は勝つ!」


 ……。

 それから三人で色々話をして思ったけど、どうやらカイバは本気でギルドの事を考えているようだった。ギルドを強くして、自分の仲間が死なないようにしたいらしい。そういえば、確かガロンの仲間が大勢死んだという話をイベントの時に聞いたな……。

 自分勝手な嫌な奴、という認識は改めなければならないみたいだ。熱くなりやすいけど仲間思いの調子者。そんな感じだろうか。それに、俺との決闘が終わってからすんなりと自分の非を認めた所も俺の知っている自分勝手な奴らとは違っていた。なんていうか、大人って感じだった。まああの暴走は大人っぽいとは言えないけど、冷静になってからの切り替わりの早さはあいつらとは違う。

 因みにカイバは23歳らしい。俺よりも年上だ。チャラい感じがするけど。

 

 俺が見てきた自分勝手な奴らも大人になればカイバのようになるのだろうか? それとも、カイバはもともとこういう大人な面があったのだろうか?


 どちらかは分からないけど、とにかく今言えるのは、スルメは仮想世界でも美味いという事だな。

 


 




 その日の夜の栞とのメッセージ。


『今日、決闘したみたいですね』

『ああ、ちょっとな』

『そうですか』

『ああ』



 毎回なんかこんなぎこちないメールになるのは何故だ……。


 

日常編ということで、暫くの間こんな風に色んなキャラとの交流を書いて行きたいと思います。今回はガロン編というよりはカイバ編でしたね。暴走することもあるけど仲間思いな面もある、そんな奴でした。

今後はカタナ君と遊んだり、リンとイチャイチャしたりする予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] …ストーカーじゃねぇか!妹何やってんだww (意訳:良いぞもっとやれ!ww)
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