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 決勝戦が決着し、第三回イベントは終了した。

 優勝は栞。準優勝は玖龍。三位は二名で俺と、《照らす光》の幹部である《雷刃》ドルーアが入賞した。俺達はフィールドに転送され、観客達の前に立たされた。ドッとあがる観客達の歓声に内心ガチガチに緊張したが、他の三人が堂々とした態度で手を振っていたから俺も頑張って手を振った。かなりぎこちない感じだったが、変な風に思われて無かったか心配だな……。小学校の頃、何故か歌の指揮を任されて皆の前で指揮をしたが、緊張のあまり窓を拭くようなカクカクした動きになってしまい、みんなに笑われたのを思い出して凹んだのは内緒。

 栞がちらちらと俺を見ていたのは気のせいだろうか。

 それから入賞者に《イベント》の賞品が配られた。当然優勝者である栞が一番レア度の高いアイテムを貰っていたが、三位である俺もそこそこな物を手に入れることが出来た。

 

 その後、選手は選手用のワープゲートを使用して、各自の拠点に戻る事になった。ルークとワープゲートを使う前に会う約束をしていたので、ワープせずに待っていると何人ものプレイヤーに声を掛けられた。

 最初に声を掛けてきたのは《ふにゃふにゃ》のらーさんと《犬騎士ドッグナイト》の剣犬だった。二人は俺を見つけると入賞を祝う言葉を掛けてくれ、その後他愛もない話をして、また会おうと約束して去っていった。これでらーさんと剣犬二人とフレンド登録することが出来た。


 それからルークを探してキョロキョロしていると、今度はカタナに声を掛けられた。


「アカツキ君、入賞おめでとう。準決勝じゃあと一歩だったね」

「ああ、ありがとう」

「戦う前にあの《流星》と話していたけれど知り合いか何かかな? まあそれはいいや。いやぁ、君と彼女の《オーバーレイスラッシュ》、銀色で綺麗だったよ。これで二人目の《流星》誕生かな?」


 そう言ってカタナは何とも言えない笑みを浮かべると、「じゃ、また今度」と言い残して去っていった。

 結局、よく分からない男だった。あの戦いぶりから只者じゃない事は分かるが、あいつは強さとかレベルとかそう言う物じゃない、もっと別の何か、異常で異様で異質な『ナニカ』を持っている様な気がしてならない。それが一体何なのかと言われれば、上手く説明することは出来ないのだが。


 それからしばらくして、俺はルークに会うことが出来た。ルークに声を掛けられ、振り向くと彼女の横に《震源地》玖龍が立っていた。俺を見下ろす様な巨体と全身から滲む圧倒的な威圧感に内心ビビったが、いきなり玖龍が「すまなかった」と頭を下げてきたことにもっとビビった。

 それから連絡先を交換し、後日しっかりと話し合うことになった。今はまだ、リンと彼らを会わす事はしないでおこうと思う。いつか、リンが完全に立ち直った時、またしっかりと話そう。

 

「ああ、アカツキ君。三位入賞おめでとう」

「あ、いえ、玖龍、さんこそ準優勝おめでとうございます」


 思わず敬語でさん付けしてしまう俺マジチキン。マジチキ。


「ありがとう。だがさん付けはしなくていい。呼び捨てにしてくれ」

「ああ……はい」

「それにしてもアカツキ君、君は強いな。あの《流星》をあと一歩まで追い詰めたのだ。少し状況が変われば優勝していたのは君だったかもしれない」

「いや……俺なんかあいつの足元にも及びませんよ」

「……謙遜することはない。君の実力は確かな物だよ。それにうちのサブマスを倒したんだからな。もっと誇っていい」


 玖龍さ、玖龍がそう言うとルークは「次は負けないから!」とまるで子供のように俺を睨みつけてきた。可愛いなあ。

 そう思いつつも、俺は自分の失言に気付いた。ただでさえ戦う前にあれだけ話していたのに、あいつなんていったら知り合いだってことがバレバレじゃないか。玖龍もそれに気付いたようだったが、何も言わずに流してくれた。


「それにしても《流星》、前よりも遥かに強くなっていたな。俺もうかうかしていられない。帰ったら鍛え直すか……。今度はアカツキ君とも戦ってみたいものだ」



 二人としばらく話し、俺は用事も済ませたことだしワープゲートで帰る事にした。緑色の門の手前にまで来て、ワープする街を選択していた時、不意に後ろから肩を叩かれた。振り返ると、《雷刃》ドルーアが立っていた。

 《雷刃》ドルーア。俺はこいつを知っている。《イベント》の予選で戦ったあの男だ。いや、それ以前にも会っている。栞と再会して思い出した。俺が《ブラッディフォレスト》に落ちる前に栞と行動していたパーティーの中にいた一人だ。


「アカツキさん、ですよね」

「……そうだが」


 栞の仲間が俺に何の用だろうか。


「俺は高校に入ってから栞と知り合ったからよく分からないんですけど、中学からあいつとつるんでいた《風姫》って奴に栞はよくアカツキさんの事を話していたらしくて、一応、栞とアカツキさんの関係はなんとなくですけど知っているんです 」

「……」

「それで、なんですけど。今日、準決勝で戦う前に栞と話してましたよね?」

「ああ……」

「どういうやり取りがあったのか知らないんですが、その、良ければあいつとフレンド登録してやってくれませんか? 後、俺達とも……」

「どういうことだ。なんで俺が栞とフレンド登録を?」

「栞は貴方と別れた後、何度も街やエリア、墓地で貴方の事を探していたんですよ」

「…………」


 栞が俺を探していた。

 あいつが、俺を?


「それで、多分あいつはアカツキさんの事を気にしてると思うんです。だからフレンド登録してやってくれると……あの、いいと思うんですけど」

「…………。俺は良くてもあいつが承認しなければ登録は出来ないだろう?」

「多分、いや、絶対、あいつは承認すると思います」

「…………」

「お願いします」

「……分かった」


 ドルーアとフレンド登録した後、ドルーアにIDを聞いて栞と栞のリア友三人にもフレンド登録申請を送る。栞からは何の反応も返って来なかったが、すぐに三人からは連絡が返ってきた。 

 このドルーアも入れて、栞のクラスメイトであるリア友四人は《照らす光》の幹部をしているらしい。《雷神》《風姫》《炎剣》《水槍》とかなり有名な二つ名持ちの名前が一気にフレンドリストに乗る。


「すぐには返って来ないと思いますが、栞はフレンド申請を承認します。だからメッセージとか送ってやって下さい」


 そう言ってドルーアは頭を下げると、ワープゲートを使って去っていった。


 

――――――――――――


「お帰り、お疲れ様、お兄ちゃん」

「ああ、ありがとう」


 宿に帰ると、リンが大量の料理を作って待っていた。

 料理を食べながら、リンと今日の話をする。


「格好良かったよ」


 そう言って笑うリンを見ると、切ない気持ちが湧いてくる。それと同時に、こいつは俺が守るんだ、と口には出さないが、俺は固く心に誓った。

 リンは俺が守る。



 その夜、栞に出していたフレンド登録申請が承認されていた。



 


 ――優勝おめでとう。

 

 ――ありがと。


 





《イベント》編終了です。かなりグダってしまってすいません。



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