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ルークさんは女の子です。れっきとした女の子です。男の娘じゃありません…。ええ…。

 刃を交差させてお互いに押し合い、力が均衡している事を悟り俺達は後ろに跳んで一旦距離を取る。

 それからダッシュしてルークに接近し、太刀を思い切り叩きつける。ルークは盾を突き出して太刀を受け止めた。ガキィンと激しい音を立てた俺の攻撃だがルークは全く動じていない。完全に防がれた様でHPに何のダメージも入っていない。ならば、とルークが攻撃してくるよりも先に連続して太刀を振る。カタナがやっていたように相手に攻撃の隙を与えずに攻め続けてやる。

 高速で振った太刀が盾にぶつかって音を立てる。完全に攻撃を防がれている。だが構わずに盾の外からルークを狙うようにして、連続して太刀を振る。ルークは向かってくる攻撃を盾を左右に動かし、一撃の漏れ無く防いでいく。

 なんて堅さだ。全く攻撃が決まらない。これだけの攻撃を入れていると言うのにルークのHPは全く減っていない。一切の攻撃をあの盾に弾かれてしまっているのだ。どうする。このまま攻めつづけても効果はあるのか……?


「がっ!?」


 迷いが生まれ、俺の攻撃にほんの一瞬の間が生まれた。ルークはその隙を見逃さず、左手に構えた盾を思い切り前に突き出した。不意を突かれたせいで太刀が弾かれ、それを握っている右手の制御が利かなくなる。太刀を落とす事はしなかったがそれによって致命的な隙が生まれてしまう。

 ルークの右手に握られていた剣が発光し、高速で前に突き出された。顔のど真ん中目掛けて突き出されたそれを首を傾けて回避しようとするが間に合わず、刃が肩のシールドにぶつかり激しい衝撃が走る。更に俺がよろめいた所にルークの盾が再度突き出される。咄嗟に左手を身体の前に出して防御の姿勢を取るが、重たい衝撃が左手を抜けて全身を貫く。

 敢えてその衝撃に逆らわず、後ろに跳んでルークから距離を取る。ルークは直ぐに詰めて攻撃することが出来るのにそれをせず、俺を品定めしているような目付きで見ている。悔しさを感じながら俺は体勢を立て直していつでも対応出来るように身構える。


 《移動城壁パーフェクトウォール》ルーク。……強い。今までイベントで戦ってきたどのプレイヤーよりも強い。俺の攻撃を全て防御し、一瞬の隙を狙って鋭い攻撃で攻めてくる。

 どうやって攻めればいいんだ。


「そっちが来ないのなら私から行かせて貰うぞ!」


 どう攻めれば良いのか迷っていた俺に痺れを切らしルークから攻撃を仕掛けてきた。盾を正面に構えたまま猛スピードで突っ込んでくる。クソ、迷っている暇はないか。

 盾がぶつかるギリギリまでルークを引きつけ、そして直前で回りこむように左に移動する。ルークの正面は盾で防がれているし、右には剣が握られている。ならば盾も剣もない死角から攻撃してやればいい。並のスピードでは盾を避けるので精一杯だろうが、俺の俊敏は嫌というほど鍛えられている。一瞬でルークの左面に近付き《フォーススラッシュ》を打ち込む。青い閃光が迸り、ルークの横腹を斬り付ける。シールドにぶつかる感覚を太刀を通じて感じると同時に次の一撃をルークに叩きつける。流石と言うべきか、一撃は直撃したが二擊目は盾によって防がれてしまった。しかし、ルークは最初の一撃で体勢を崩している。太刀を受け止めたルークは僅かに後ろに後ずさった。そこに一歩間合いを詰めて残りの攻撃を叩きこむ。ガガガッと盾と刃がぶつかる音が連続し今まで完全に防がれていた攻撃が僅かに通って行く。ルークのHPが僅かに減少するのを確認する。

 スキルを打ち終わった俺に一瞬の隙が生まれるが、ルークはまだ姿勢を立て直していない。盾の中心目掛けて太刀を思い切り突き出す。今までの様に完全に攻撃を弾かれるのではない、僅かだが衝撃がルークに通った感覚が伝わってくる。


「おおおおおおおぉぉぉ!」


 そこから最初にしたように連続で太刀を叩きこむ。盾と刃が連続して激しくぶつかり合う。その攻撃の全てをルークは盾で防いでいくが、先程とは違いその表情は厳しい物になっている。体勢を立て直す暇も無く繰り出される連続攻撃を受け、ルークは徐々に後退っていく。その間も僅かだが確実にルークのHPは減っている。そしてルークのHPが一割半程削れた時、打ち込んだ太刀に今までで一番の手応えが伝わってくる。


「っ」


 半端な体勢で攻撃を受け続けたルークが遂に耐えられなくなり、盾で防がれたものの衝撃の殆どが彼女に伝わっている。

 ――――今だ!

 太刀の柄を両手で強く握りしめ、俺は《断空》を発動した。振り上げられた太刀が青い光を放ち、ルークの盾を上から斬り付ける。青い光が盾の上から下まで駆け巡った。ルークは攻撃を受けきれず、後ろに吹き飛ばされる。それでも地面に倒れる様な事はなく、衝撃に逆らわず姿勢を低くし、ルークは地面を滑るようにして数メートル下がって止まった。

 今のルークと俺の間には6メートル程の間が出来る。

 スキルを発動してから次のスキルを発動するにはしばらく時間が掛かる。《断空》を発動した俺は後数秒間スキルは使えない。だが今が攻め時だ。俺はルークに向かってダッシュする。走っている間に次のスキルの発動が可能になる。


「お、らぁああああ!」


 《オーバーレイドライブ》を発動した。銀色の光が俺を包み込む。このスキルの威力を引き出すには助走が必要だ。今まで走って付けていた分のスピードを利用し、銀色の尾を引きながらルークに突っ込む。銀色の線が盾を飲み込み、遅れて衝撃による激しい音がフィールド全体に撒き散らされる。刃を盾で受け止めているルークのHPがゆるやかに減少していく。

 まだまだ……!

 柄を握る手に力を込め、盾の奥の奥へ衝撃が抜けるように前に出す。だがそこでルークはその衝撃を逃がすように身体と盾を傾けた。盾にぶつかっていた刃がその表面を滑って行き、やがてルークから完全に外れる。行き場をなくした衝撃はそのまま正面に突き進んでいき、フィールドの壁にぶつかって爆音に似た激しい音を立てながら銀色の光は霧散した。俺はそのまま刃を地面に叩きつけてしまい、動けなくなる。その俺の背中にルークの攻撃が突き刺さった。鋭い衝撃が走り俺は前に吹っ飛んで無様に地面を転がった。今ので残りのHPが六割程度まで減らされてしまった。

 

「うおっ!」


 地面に倒れている俺に向かってルークが剣を振り下ろした。横に転がってその攻撃を回避し、すぐ横に突き刺さった刃を見てゴクリと息を飲む。

 次の攻撃が来るよりも先に、俺はもう一度転がってルークから距離を取り、何とか起き上がって体勢を立て直した。

 俺の残りHPは六割。ルークの残りHPは残り五割と言った所だろうか。

 肝心のルークのカウンタースキルはもうしばらくは発動しないだろう。そのスキルは一度使うと蓄積したダメージは無くなってしまうようだし、もう少し……もう少し戦況が進んでから使ってくる筈だ。そのタイミングを見極められなければ、俺はその一撃で負けるだろう。


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― 新着の感想 ―
目的があるにしても、こんな場所で切り札使いまくり。こういう試合ってPKギルドの連中も見てるよな?
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