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更新が遅くなってすいません。
書き溜めて前みたいに連続更新しようかなあ、なんて考えてます。
振り返り尻餅を付いている男の首目掛けて突きを繰り出す。武器で防がれたので連続して突く。男は俺の突きを防ぎきれなくなり首に突きを喰らう。刃が男の首に刺さる前に表面のバチッと音がして弾かれた。プレイヤーに痛みを与えないためのシールドか。弾かれたとはいえしっかりと男のHPバーは四割程減少した。急所である首を攻撃して一撃死を狙っていたのだが上手くいかなかった。クリティカルヒットなんてそうそう出せる物じゃないからな。虚空達の時は今思い出せば有り得ないほど上手く急所を攻撃できていたみたいだ。
痛みは無かったようだが衝撃は伝わるようで男は悲鳴を上げて後ろに倒れこんだ。チャンス、と思い追撃しようとした所で《見切り改》に攻撃が来るという反応が合ったので後ろに大きく跳ぶ。次の瞬間、今俺がいたところに大きな斧が振り下ろされて地面を大きく抉った。それだけではなくその部分を中心にして地面が爆ぜた。
「うお!?」
今の攻撃は何かのスキルみたいだ。咄嗟に《ステップ》で回避したが間に合わず、爆風に巻き込まれて吹き飛ばされる。HPが僅かに削られた。倒れていた男は爆発にモロに巻き込まれた様だ。砂煙でどうなったかは分からない。
太刀を地面に突き刺してバランスを立て直し、吹き飛ばされた俺を狙っていた双剣の男の攻撃をしゃがんで回避する。そして立ち上がると同時に太刀を抜き、双剣の男を斬り上げる。男は身体の前に双剣をクロスさせてそれを防ぎ、片方の剣で太刀を弾いてもう片方の剣を俺の胸目掛けて突き出してくる。それを喰らう前にガラ空きの腹を思いっきり蹴り飛ばし、男が前屈みになって怯んだ隙に太刀で顔を横に斬る。シールドに太刀がぶつかり弾かれる感覚。それに構わず返す刃でもう一度顔を斬る。バチバチと電気が弾けるような音が連続し、男のHPが半分以上減少した。もう一撃加えようとしたがその前に体勢を立て直されてしまった。反撃を警戒し身構えると双剣の男がいきなりビクン震え、同時にバチッとシールドが傷付けられた音がした。双剣の男のHPが0になり光の粒となって外に転送されていく。
消えた男の後ろから現れたのは黒髪ポニーテールの女だった。突き出された槍が双剣の男を彼女が倒したという事を物語っている。どこか濁った二つの瞳が俺に向けられ、彼女の口元に笑みが浮かんだと思った瞬間には槍先が俺の目の前まで迫っていた。《受け流し》で回避し斬りつけようとするが、彼女の姿が再び掻き消える。
――速い!
彼女は攻撃が受け流されると同時に槍を引き戻し《ステップ》で俺の死角に跳んだ。見れない程ではないが滅茶苦茶に速い。斜め後ろから攻撃が来るのを《見切り改》で確認して振り返りながら太刀で槍先を弾く。
「っ!」
彼女の槍先が青く光った。スキルを発動させたのだろう。物凄い速度で槍が俺目掛けて何度も突き出される。《フィフススタブ》の様だ。俺は太刀の刃で槍を弾きながら後ろに下がり《フィフススタブ》を回避する。五回全て避けられると思っていなかったのか、女の目が驚きに見開かれた。スキルを使えばしばらくの待機時間が出来る。そこを逃す手はない。《フォーススラッシュ》を発動し、四連続で斬り付けてやる。女は槍でそれを受け止めようとするが俺の力の方が上だったようで、受け止めきれずに後ろに吹っ飛んだ。直撃させる事は出来なかったが、彼女のHPは今ので一割程削る事が出来た。
吹き飛ばされた彼女はさっきの俺のように槍を地面に突き刺して体勢を整えたと思うと、槍を軸にしてその場で一回転し、その勢いを利用して俺に突っ込んできた。その攻撃を防ぐために《受け流し》を発動する。
「な」
槍がまるで蛇のようにうねった。受け流せる位置に突き出されていたはずの槍先は大きく軌道を変え、太刀の上から俺の胸に向かってきた。あまりに予想外の事で反応が遅れ、《ステップ》で後ろに跳ぶが回避しきれずに僅かに胸に刺さる。バチリと音を立ててシールドが槍を弾いた。同時に胸に軽い衝撃が走った。
地面をズザザザと滑るようにして後ろに下がる。当然、目の前の彼女以外のプレイヤーにも警戒を怠らない。彼女の手にしている槍の形状を見て今何が起こったかが理解できた。
「三節棍……」
彼女の手にしていたのはただの槍では無かった。先ほどまでは確認できなかったが槍には三つの関節があり、そこを鎖で連結されていた。さっき槍が蛇のような動きを見せたのは関節を利用したからだろう。恐らくあれは稀少武器だろう……。
彼女は俺の驚いた様子を見て少し自慢気な顔をすると槍の両端を掴みグッと押した。するとガチンと音を立てて関節が消えた。どういう構造になってるんだ、あれ。今彼女が持っているのはどう見てもただの槍だった。今のように三節棍にしたり普通の槍にしたりとモードチェンジみたいな事ができるのだろうか。
「……あの槍の動き。《瑠璃色の剣》のサブマスター《ふにゃふにゃ》のらーさんか!」
遠くから俺達の戦いを見ていた男が彼女を見て呟いた。
《ふにゃふにゃ》。らーさん。掲示板で一度名前を見たのを覚えている。掴みどころの無い体捌きと蛇のような槍の動きから来ている《ふにゃふにゃ》という二つ名は確かに目の前の彼女に相応しい。《瑠璃色の剣》というギルドにいる三人の二つ名持ちの内の一人……。成る程。さっきまでの男達とは比べ物にならない程に強いのも頷ける。
「らーさんって言うのか」
眼の前の彼女に向かってそう尋ねると自分の名前を相手が知っていたのが嬉しかったのか幽鬼の様な虚ろな表情が一転し、ふにゃふにゃとした蕩けそうな笑みを浮かべた。その急激な変化に思わず呆然としてしまう。
「えっへっへっへー。そうだぜ。私は《ふにゃふにゃ》のらーさんさ(*´ω`*)」
そうらーさんは自慢げな笑みを浮かべる。何か語尾に顔文字が付いてた様な気がするが俺の気のせいだろうか。らーさんはふにゃふにゃとした笑みを浮かべながら槍をブンブンと振り回して見せる。何だろう。可愛いんだけどちょっとうざいな。
「ふふふ。さてと仮面君。続きと行こうじゃないか(・д・) 」
らーさんはそう言うと表情をさっきのような無表情に戻すと再び突っ込んできた。今のやり取りで毒気を抜かれていた俺は対応しきれず、何とか太刀で槍先を受け止めるが力負けして後ろに押し飛ばされた。HPが僅かに減る。らーさんは追撃の手を緩めない。
突き出される槍が青い光を放ったと思うと、その槍先の回りを半透明な何かがグルグルと回り始めた。何だこれは。風か?
「《ストームスタブ》!」
《受け流し》でも防ぎきれないと思った俺は《ステップ》で斜め横に跳んだ。そしてその判断が間違ってなかったという事を知る。突き出された槍先から凄まじい勢いで風が噴出され、それがグルグルと回転しながら直線に進んでいく。直ぐ前で戦っていた何人かのプレイヤーがそれに巻き込まれて吹き飛ばされていた。
マジかよ。何だ今の。
「あらら。躱されちゃったか。動かないでよね仮面君(◞≼◉ื≽◟◞౪◟,◞≼◉ื≽◟)」
口調はふざけているけどらーさんが身体から出している雰囲気はとんでもなく鋭利だ。冷たくて鋭い殺気が俺に襲い掛かってくる。
やばいな……。
顔文字が縦書きだと表示されないみたいです…。すいません…。