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 斬られた痛みが消え去り、全身がとても軽くなった。頭は怒りで湧いていると思いきや、自分でも驚くほど冷静だ。

後ろを振り返り、大剣の男の首を切り裂く。男が悲鳴を上げて崩れ落ちると同時に、背後から攻撃が迫ってきている事を《見切り改》で知り地面を強く蹴ってジャンプする。俺が今までいた場所で片手剣が空振るのを確認し、太刀を下に構えてそのまま落下する。俺に気付いた片手剣の男が上を見上げ、口を開け顔に驚愕を貼り付ける。その口の中に太刀を突っ込み、喉の奥まで押しこむ。片手剣の男は激痛に白目をむき、光の粒になって消滅した。

 俺が地面に着地すると同時に、頭上から斧が振り下ろされた。そこそこに早い。太刀を頭の上に構えて斧を防ぎ、力を込めて弾き返す。そして体勢を立てなおして一歩後に下がる。

 斧を振りおろしてきたのはカケヒだった。歯を食いしばりキチガイみたいに目を見開いて俺を睨んでいる。


「ふぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 獣の様な叫び声を上げ、斧を振り回しながらこちらに突っ込んできた。一見滅茶苦茶に見えるカケヒの行動だが、斧は攻撃力が高い。あんな風に出鱈目に振り回されたら迂闊に近付くことが出来ない。だから俺は立ち止まり、《間合い斬り》を発動した。振り回されるカケヒの斧を見つめ、間合いに入った瞬間に斧に太刀を全力で叩きこむ。刃が斧にめり込み粉々に砕く。武器を破壊されたカケヒは顔を歪めながらも立ち止まることが出来ず、勢い良く近付いてくる。


「な、なんなんじゃお前ぇえええええええぐげ」


 太刀を振りかぶって勢い良く振り下ろす。カケヒは真っ二つに切り裂かれ、光の粒になって消えていった。


「てめえええカケヒをおおおおおおおおおお」


 カケヒを殺した事でスマートが怒声を上げながら、剣の刀身を青く輝かせながら飛びかかってきた。何かのスキルを発動しているようだ。それと同時にけだまくも背後から攻撃を仕掛けてきた。同時攻撃か。

 二方向からの攻撃が俺に当たる直前に右に一歩移動し、かわす。そして空振ったせいで隙だらけの二人の身体に太刀を叩きこむ。スマートの腹を引き裂く感覚と、硬い何かに弾かれる感覚。けだまくは咄嗟に盾で攻撃を防いだようだった。それでも威力を殺しきれなかったのか、勢い良く吹っ飛んで近くにいた仲間の身体に激突した。

 けだまくは仲間を下敷きにしたまま苦しそうに咳き込むと、俺を見て舌舐めずりをした。まだ何か奥の手を隠している、そんな予感をさせる笑みを浮かべるとアイテムボックスから縄を取り出した。ワープロープか!


「おおぉぉい虚空ぅ! 俺様ぁもう帰るぜえ! こいつらはやるから好きにしなぁ! かにやぁあ! 退くぞ!」


 そう言うとけだまくはワープロープを使用した。奴の身体が緑色の光に包まれいく。逃がすかよ。姿勢を低くして地面を蹴り、一気にけだまくの所まで跳ぶ。まだワープは終わっていない。太刀を振り、その首を狙う。けだまくが盾を突き出す。関係ねえ、盾ごと首を切り裂いてやる。盾に刃がめり込んで――――水飛沫を上げた。

 

「なんっ!?」

「また遊んでやるよ小僧」


 盾を斬った筈なのに刃はけだまくには届かなかった。けだまくの全身が緑色の光に覆われ、消失する。クソッ、逃げられた。かにやもワープロープを使用したようで、緑色の光に覆われてこの森から消失した。それに続くように何人かの男がワープロープで離脱した。


「あの野郎共ォ、逃げやがったなぁ!」


 虚空が消えた二人が居た場所を見て苛立ちを隠さず舌打ちをすると、背中に背負っていた槍を構えて俺を睨みつけてきた。

 

「こいつのHPはもう殆ど残ってねえじゃねえか! そんな死に損ないに手間取りやがって! 僕が殺してやる! てめえらは引っ込んでろ!」


 虚空の仲間は残り五名ほど。五名は虚空の言葉に頷くと、邪魔にならないよう後ろに下がった。大分逃げられちまったけど、こいつらは全員逃がさない。虚空をぶっ殺して残りも一網打尽にしてやる。


「君も随分と人を殺したなあ! ええ? レベルアップしたんじゃないか?」


 虚空は嫌らしい笑みを浮かべながらそう言った。揺さぶりを掛けるつもりか? 残念ながら俺はお前らを殺すことに何の抵抗もねえよ。


「ああ。お前らみたいな雑魚を殺すだけでレベルアップ出来てラッキーだよ」


 笑みを浮かべていた虚空の表情が引きつった。


「ぶっ殺す」

「俺の台詞だ糞野郎」


 虚空の身体が青い光に包まれた。そして彗星の様に青い尾を引きながら突っ込んでくる。《コメットインパクト》か。一気に片を付けるつもりか。面白れえ。


「《オーバーレイスラッシュ》」


 こっちも一気に終わらせてやるよ。刃からいつもとは違う、黒みを帯びたどこか禍々しい光が溢れでた。ドロリと淀んだ黒銀の光が俺の全身を覆う。青い光を浴びた虚空に黒銀の刃で対抗する。青い光と黒銀の光がぶつかり合い、火花を散らす。《コメットインパクト》は重い一撃で相手を貫くスキルだ。対してこちらは連続で斬り付けるスキル。こちらの方が不利だが、そんな事は気にしない。槍先と刃が打つかり、俺は勢いに負けて後ろに下がる。虚空は下がった分だけ突っ込んでくる。構わずに連続で槍先を斬り付ける。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ラスト三回、黒銀の光が青い光を斬り裂いた。次の一撃で槍を持った虚空の右手を斬り、最後の一撃で左肩から右の脇腹まで斬り付ける。虚空は槍を落とし、斬られた勢いで吹っ飛んだ。地面に叩きつけられ、激痛に叫ぶ。虚空のHPはまだ四割程残っている。右手を抑えて地面をのた打ち回る虚空の右足に刃を突き刺してやる。


「ぐぎ――がっ」

「黙れ」


 悲鳴を上げようとしたので顔面を思い切り踏み、黙らせる。俺は虚空の顔を踏んだままで質問した。


「お前さっき《目目目ブラッディアイ》所属って言っただろ。詳しく話せ」


 流石に踏んだままでは喋れないだろうから足を退けてやり、右足に刺さったままの太刀を引きぬいて虚空の首に添える。余計な事をしたら即殺す。


「ぼ……僕達はっ、《不滅龍ウロボロス》の中に紛れ込んで、情報を《目目目ブラッディアイ》に流すように、言われたからっ」

「誰にだ?」

「しっしらない! 僕はけだまくに勧誘されて《目目目ブラッディアイ》に入って、それであいつが上からの命令だって手紙を持ってくるんだ! だから誰かはわからないっ!」

「そうか。けだまく、の《目目目ブラッディアイ》での立場は?」

「幹部、だと奴は言っていた。それ以外は知らない!」

「他に《目目目ブラッディアイ》の情報は?」

「ぼ、僕が知ってる事はそれだけだ! 知ってるメンバーだって今日この場に居た奴だけなんだ!」

「そうか」


 俺は太刀を構える。


「ま、待て! 助けてくれ! し、死にたくない! 嫌だ! やめろ! うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 死ね。

その顔面に刃を突き刺した。



 























「もうやめて」


 気が付くと俺はリンに後ろから抱きしめられていた。目の前には身体のあちこちを斬られて今にも死にそうになっている男が三人。もう二人ぐらい居た気がしたけど、どうやら殺してしまった後らしい。

 男達三人は涙を流し、武器を放り捨てて助けてくれ、と命乞いをしていた。

 リュウを殺したくせに勝手だと思った。

 


 

パーティー編もこれで終わり。

次からイベント編に入る予定です。

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