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お気に入り件数一万突破しました。読んで下さっているから、ありがとうございます。これからも稚拙ですが、頑張って書いていきます。

「まさか戻って来るとはね」


 スタミナドリンクを飲んでスタミナが回復した俺は、休憩所に戻って来た。虚空達はまだ休憩所におり、何かを話していたようだ。戻ってきた俺を見て驚いた顔をしている。


「ああ。ちょっと忘れ物をしてな」


 深呼吸。

 息を整えろ。恐怖を噛み殺せ。神経を研ぎ澄ませ。集中しろ。

 この集団の中じゃ囲まれてあっという間に殺されるのがオチだろう。だから勝負は最初だ。全速力で動いて連続で急所を狙って殺す。虚空とあのリュウを殺した男は恐らく簡単に殺す事は出来ないだろうけど、その他の連中のレベルは50代だろう。俺は61レベルだ。

 森での修行を思い出せ。

 ホーンラビットの電光石火の様な突きをかわし、すれ違いざまに切り裂く事を繰り返した時の事を。

 シェルドスコーピオンの攻撃を丸一日かわし続けた時の事を。

 覚醒したブラッディベアーの強烈な一撃を受け流した時の事を。

 孤独な森で一日中修行し続けたあの日々を。

 レベル1の状態であの森に行って帰って来れたんだ。あの糞野郎をぶっ飛ばす事ぐらい、簡単だ。

 さて、殺るか。


 俺、生きて帰ったらリンの脇腹、むにむにするんだ。



「へえ? 何をだい?」

「リュウウウウウウウウゥゥゥゥウのぉお! 仇ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」


 姿勢を低くして全速力で跳ぶ。双剣を構えている男の目の前まで一瞬で辿り着き、《抜刀斬り》で首を切り裂く。男のHPが一撃で0になる。呆けた表情のまま、男の身体が光の粒となって消滅していく。その周りの男達は自分の仲間が何故殺されたか認識出来ず、双剣の男と同じように呆けた表情で突っ立っている。

 一番手前に居た男の顔面を横薙ぎに切り裂き、悲鳴を上げてよろけた所を蹴り飛ばしその隣に居る四人の男達を《フォーススラッシュ》でまとめて切り刻む。この時点で、俺の動きが見えて居るであろう者は虚空のさっきまでのメンバー、そしてリュウを殺した男だけだ。視線が俺を捉えている。だが、指示を出す前に一気に行かせて貰う。


「《オーバーレイ・スラッシュ》ゥウ!!!!」


 太刀を眩いばかりの銀色の光が包み込み、その光が流星群の様に闇を滑る。刃の嵐に周りの男達は為す術無く飲み込まれ、切り刻まれる。ここまでに掛かった時間、約六秒。殺す事が出来たのは五人程度だったが、この世界の痛みは現実と同等だ。斬られる、という痛みに耐えられない男達が泣き叫びながら地面で転げ回っている。当分は動けないだろう。

 無効化出来たのは十二名。《オーバーレイ・スラッシュ》を喰らっても何とか立ち上がっている奴が二人いる。残っているのは後十八人くらいだ。

 このまま連続で攻撃しようとしたが、流石にそうはいかなかった。俺の動きを捉えた槍使いの男三人が三方向から一斉に槍で突き刺そうと突進を仕掛けてきた。これはかわせないな。

 《残響》。

 俺の身体に槍が突き刺さった瞬間、俺は槍使いの内の一人の背後に立っていた。俺が急に消えたことで槍使い達はお互いの身体を突き刺し、絶叫した。だけど三人とも死んでいない。俺の前にいる槍使いの首を後ろから切り裂き、残りの二人は放っておくことにした。構っている余裕が無いからだ。

 

「《双牙・巨獣》」


 巨大なオレンジ色の光で出来た二本の牙が頭上から俺を切り裂こうと落ちてきた。咄嗟に《ステップ》で横に跳んで回避する。標的にかわされたことで巨大な牙が地面を大きく抉った。

 かにやさん、いや、かにやだ。俺から7mほど離れた所から攻撃を仕掛けてきたのだ。双剣が淡くオレンジ色に光っている。

 《双牙・巨獣》。《双牙》の上位スキル。ただ突き刺すだけのスキルだと思っていたけど、こんな風に遠距離攻撃も出来たのか。


「《双牙・巨獣蹂躙》」


 巨大な二本の牙が連続で襲いかかってきた。後ろに跳んで攻撃を回避するが、すぐさま次の牙が襲いかかってくる。《見切り改》と鍛え上げた敏捷性で前後左右に走り回って攻撃を回避するが、牙に足下を削られバランスを崩し、地面に倒れ込む。そこに二本の牙が。


「なっ」


 太刀を上に構えて二本の牙を受け止める。押しつぶされそうになったが歯を食いしばってスキルが消滅するまで耐えきった。流石に無傷とは行かず、HPが僅かに削られてしまった。だけどこの程度なら何の問題もない。

 

「おらァてめぇらぁあああ! あの野郎をぶち殺せええぇえええい!」


 リュウを殺した片手剣の男が指示を出し、男達が武器を構えて押し寄せてくる。俺も太刀を強く握りしめ、叫びながら突っ込む。虚空やあの男はやはりリーダー格のようで、後ろの方に立っているせいで攻撃する事が出来ない。だからまずはこいつらぶっ飛ばすしかないな。


――――――――――――――――


「ぐぅ……」


 《真空斬り》で男達を牽制して《ステップ》で後ろに下がる。

 HPは既に五割以上削られていてオレンジゾーンに突入していた。致命傷は受けていないが、身体の至る所を斬られており、動くたびに鋭い痛みが走る。合間合間に回復アイテムを使用してHPと体力を回復していたが、アイテムが全て無くなってしまった。だが相手は体力が減ったら後ろに下がって回復し、再び戦う、を繰り返しているため、あれから二人しか倒せていない。徐々に体力を削られていき、囲まれて逃げる事も出来なくなっている。


「まぁまぁまああああ、たぁあった一人にしちゃぁあ、おめぇはよぅくやったぜえぇえ。褒めてやるよぉおお。この俺ぇ、けだまく様もびぃいっくりだぜええぇえ」


 片手剣の男――けだまくは俺を見て舌なめずりしながら大声でそう言う。いちいち気持ち悪い奴だ、と突っ込む余裕すら今の俺にはない。スタミナは残り半分ちょっと、HPは四割程度。まさに絶対絶命。このまま行くと死ぬだろうなあ。でも想像してたよりも怖くない。恐怖よりも脱力感の方が大きい。

 

「おらぁあ!」

「しまっ」


 《オーバーレイ・スラッシュ》で蹴散らした男の一人がいきなり起きあがり、斧で殴り付けてきた。避けきれない。ここまでか。斧がゆっくりと近付いてくる。

 ああ、走馬燈、起きないんだな。

 ごめんな、リュウ。

 ごめん、栞。

 

「暁さん!」


 斧が俺の頭を『かち』割る直前、何かが前に入り込んだ。槍で斧を防ごうとし、槍が真ん中からへし折れ、それの、リンの頭を抉った。

 リンが崩れ落ち、頭上のHPバーが恐ろしい勢いで減少していく。レッドゾーンまでいき、そこで減少は止まった。


「リン」


「ちっ、このが――――ぎ」


 斧使いの首を斬り飛ばし、崩れ落ちたリンを抱きしめる。


「なんで」

「えへへ……ごめんね? 」




「おらああああああああああああぁぁぁ、今の内に二人まとめてぶち殺しちまいなぁあああ!」


 

 リン。

 リン。

 リン。

 リン。




 身体からドロリとした何かが噴出した。

 俺達を殺そうとしていた男達の動きが止まる。どうやら、気付かないうちに《巨青熊の威圧》を発動していたみたいだ。俺よりレベルが下の男達は身体を強張らせて動きを止めている。虚空とけだまくは《巨青熊の威圧》は受けていないようで、動きが止まった部下達を見て驚いている。

「う、あああああ!!!!」


 動かない男達の間を通って森の茂みに近付いて行き、その中に入れる。傷を負っても状態異常にならない限りHPが減っていく事はない。

 

 こいつらを皆殺しにした後にでも回復させれば問題ない。


 威圧の緊張から解けた男の一人が大剣を振り上げ、襲いかかってきた。首を軽く傾けて回避する。頬を僅かに刃が掠り、HPがレッドゾーンまで削られる。


 




 ――――称号【赤い紋章】の発動条件が整いました。

 ――――称号【赤い紋章】を発動します。









「殺す。てめえら全員、ぶっ殺してやる」

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えっ? まだ殺す気じゃなかったの?
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