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「は?」


 意味が分からない。何で? 今の今まで普通に会話してたじゃないか。それなのになんでリュウが死んだんだ? 急展開過ぎて頭が着いてこない。な、なんだこれ。なんなんだよ。

 光の粒となって消えたリュウの後ろから、片手剣を突き出している男の姿が現れた。全く知らない男だ。虚空のパーティーの中には居なかったぞ。な、何で。


「おいおいおいおいおいおいおぉおい! んで麻痺ってんのに動けるんだぁああ? 太刀使い殺し損ねちまっただろうがよおお。しかもその太刀使いは麻痺ってねえしよお! おぉいかにやぁあ! ちゃんとあのお茶飲ませたんだろうなあ!」


 男が顔を歪めて大声でかにやさんの名前を叫んだ。どういう事だ。なんで、リュウを殺した男がかにやさんの名前を? 麻痺ってなんだ? お茶を飲ませたって、どういう。

 後ろを振り返ると、リンが椅子から転げ落ちて倒れていた。HPが変色しており麻痺状態になっている事を表していた。急いで駆け寄って揺するが動く気配がない。


「おかしいな。全員に麻痺薬を入れたお茶を飲ませたんだが」


 かにやさんがテントから出てきて、男の言葉に答えた。かにやさんの後ろから、スマートさんとカケヒさんも付いてきていた。


「……どういう事ですか。かにやさん」


 かにやさんは俺の質問を無視し、背中に背負っていた双剣を抜いて構えた。スマートさんもカケヒさんも武器を出し、俺を見たまま構える。


「お前らあああぁ、もう出てきていいぜ!」


 片手剣の男が大声で叫ぶと、周辺の森から武器を構えた男達がゾロゾロと休憩所に現れた。

 な、なんなんだよこれ……。《察知》に反応は無かった筈だ。なのに、なんで。


「わりぃが太刀使いぃぃ、ちょぉおいと俺達にぶち殺されちまってくれよおぉお」


 片手剣の男が舌なめずりをしながら、こちらににじり寄ってくる。かにやさん達も、森から現れた男達もゆっくりとこちらに近付いてきている。周囲を囲まれている。逃げ場が無い。


「な、何なんだよお前ら! なんで、なんでリュウを! 近付いてくるんじゃねえよ!」


 リンを抱きかかえて男達に叫ぶが、奴らは嫌らしい笑みを浮かべただけだった。

 嘘だろ……。こいつら、俺達をPKする気か? な、なんで。ふざけんな。なんで俺達が殺されなきゃならないんだよ。

 そ、そうだ。ワープロープを使って街まで戻れば――――。


「そぉおうは問屋が卸さねぇえってなあぁ!」


 片手剣の男が嬉しそうにそう叫ぶと“何か”が起きた。全身を舐められるような、気持ちの悪い感覚。次の瞬間、使用するために手に持っていたワープロープが消滅してしまった。

 なんだよこれ。いったいなにしたってんだよ。


「くひひひひっ。俺達みたいにPKしまくってるとよぉおう、《標的補足ロックオン》って言うべぇえんりなスキルが使えるようになっちゃうんだよなぁああこれがぁあ! おめぇえらはぁあ、しばらくの間脱出系のアイテムは使えねえぇえんだよなあぁあ! くひひひひひひひひ」


 《標的補足ロックオン》だと……。なんだよ、それ。そんなスキル聞いたことねえよ。ワープロープが使えないって、そんな。ふざけんなよ……。

 奴らが大分近付いてきている。リンを抱いたままじゃ戦うことすら出来ない。どうしたらいいんだ。どうしたら。どうしたら……。


「暁君! 大丈夫か!」


 その時、森の中から虚空が飛び出してきた。男達を突き飛ばして俺達の方に近付いてきている。


「こ、虚空! なんなんだこいつらは! リュウが、リュウが殺されて! かにやさん達もこいつらの仲間で!」

「休憩所まで近付いてきたら知らない男達が沢山居たからしばらく様子を伺っていたんだ!」


 虚空はいけ好かない奴だけど実力は確かだ。虚空と力を合わせれば何とかここから脱出出来るかもしれない!

 虚空がすぐそこまで近付いてきた。二人でリンを囲むように男達を相手取れば何とかなるかもしれない。そんな事を考え、リンを地面に降ろそうとした時だった。

 俺の前から《見切り改》に反応があった。おかしい。前から来ているのは虚空だけの筈だ。そう思い、虚空をよく見ると。

 ――――おぞましい笑みを浮かべながら、虚空が俺に向かって槍を突き出してきていた。


「ひっ」


 とっさに《ステップ》を発動し右に跳ぶ。槍先が僅かに脇腹を掠り、HPが少しだけ削られれた。


「へぇ……。今のをかわすのか。やっぱり早いね、君は」

「な、なんで。お前、お前も」


 虚空は作り物めいた爽やかな笑みを浮かべながら頷いた。


「その通りさ。僕も彼らの仲間。君達をパーティーに入れたのはPKするためだったんだよ」

「う、《不滅龍ウロボロス》だって言うのは! 嘘だったって言うのか!?」

「いいや。僕は《不滅龍ウロボロス》に“も”入ってるよ。でもね、僕が本当に所属しているギルドはね」


 まさか。虚空は、この男達は――――。






「《目目目ブラッディアイ》なんだよね」





 背筋が凍り付いた。

 《目目目ブラッディアイ》。

 《屍喰らい(グール)》と並ぶ、大規模PKギルド。何度も攻略組と戦闘し、渡り合っている実力者揃いの殺人狂の集まり。

 

 無理だ。そんな連中とまともに戦って勝てるわけがない。しかも今はリンが居るんだぞ。庇いながら戦うなんて、無理だ。


「悪いけど、僕達の経験値とアイテム収集のために死んでくれ」


 虚空が槍を突き出してくる。

 どうする。どうすればいい。

 槍先が迫ってくる。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 一か八か、俺は《空中歩行スカイウォーク》でリンを抱えたまま跳び上がった。


「なっ」


 虚空の驚愕の表情を浮かべ、俺を見上げている。《空中歩行スカイウォーク》は稀少レアスキルだ。流石に予想していなかったのだろう。他の男達も驚いた表情で俺を見上げていた。

 俺はそのまま森の上空をスタミナ限界まで進み、木の葉の中に落ちた。枝が体中を引っ掻くが構わず下まで降り、リンを地面に降ろす。

 どうする。リンを連れたままじゃこの森から脱出する前にあいつらに追いつかれてしまうだろう。ボスの所まで行くにしても、入り口まで戻るにしても、俺がここに来るのは初めてだ。確実に迷う。それに比べてあいつらはこの森の地形に詳しそうだ。それに夜行性のモンスターがウロウロしている。一人でも逃げ切れるかどうか怪しいというのに、リンを連れたままでは恐らく――――。


「暁、さん……。早く、逃げて下さい」


 リンが口が小さく、弱々しい声で喋った。まだ麻痺は完全には治っていないようだが、喋る程度には麻痺が回復したらしい。

 ボロボロと涙を零しながら、リンは俺に逃げるように言った。


「…………」


 俺はアイテムボックスから麻痺消しを取り出してリンの口に流し込む。リンは苦しそうに咽せたが構わず全て飲ませる。HPバーが通常の色に戻った。麻痺状態が解けたようだ。リンの手を掴んで立ち上がらせる。


「リン、回復薬とスタミナドリンクは後どれだけある?」

「……え?」

「良いから早く答えろ」

「あ、えっと……回復薬が四本、スタミナドリンクが三本です」


 俺はアイテムボックスから回復薬を六本とスタミナドリンクを七本を取り出してリンに渡す。


「え、あの」

「奴らは俺がどうにかするからお前は逃げろ。運の良いことに入り口の方向に逃げてこれたから、この道を進んでいけばいつか入り口に辿り着けるだろう。それに《標的補足ロックオン》がいつまで発動しているか分からないけど、もしかしたらすぐに使えるようになるかもしれない。諦めずに頑張ってくれ」

「で、でも暁さんが」

「良いから。俺は最強の太刀使いなんだよ。リンに心配されるほど弱くない。あいつらぶっ倒して来るから、街で待ってろ」

「でも」

「でももダムもない! とっとと行け」


 俺はリンの涙を手で拭ってやった後、頭を撫でてやる。つ

 ごめんな。リュウは俺が殺したようなもんだ。俺がしっかりしてればこんな事にはならなかった。だから、リュウの敵は俺が討つ。


 最後にリンの脇腹をむにむにして、街の方向へ行かした。リュウも居ないしむにむにし放題だ。良い手触りだった。


 たぶん死ぬだろうな。嫌だなあ。死ぬのは。怖いし今すぐにでも逃げ出したい。でも、リュウにリンをよろしく頼まれちゃったしなあ。

 ここで逃げたら人間として終わっちまうよ。ニートで屑な俺だけど、まだ人間で居たい。

 

 だからちょっくらあいつらぶっ殺しに行きますか。







 

改訂版書くと前に言いましたが、まだまだ後になりそうです。一応書いているのですが、筆が進まないです。すいません。


作者の思う暁君の性格:自分に甘くその場の空気に流されやすい。小心者だけど格好付けたがり。エロい。

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― 新着の感想 ―
少し読み直したけど、やっぱりヘンだわ、暁。 怪しんでるのに、参入。怪しんでるのに、無警戒。ヘンだと思っていても、気にしない。 主人公じゃなければ、死んでも仕方ないよね、と切り捨ててしまいそうな、噛ませ…
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