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展開が遅いのは仕様です。すいません。
あれ?今回も全然進んでないんだけど……こういう買い物好きなんです。それから結構王道なラブコメイベントとか。これなんてエロゲ。
この小説は細かい所は気にせずに雰囲気を楽しんでください。雰囲気を。
翌日。
リンの提案で今日は一日ゆっくりとする事にした。ここ最近ずっと攻略エリアで戦っていたからな。少しぐらい休んでも罰は当たらないだろう。明日、二人と別れて違うエリアに行くつもりだ。
朝食にリンの作った納豆みそ汁と白いご飯と目玉焼きを食べた後、みんなで街に買い物に行くことになった。それと今日の晩ご飯のメニューはリンに任せることにした。ここ最近ずっと頼んで和食を作って貰っていたからな。二人が洋食好きだったら悪い事をしてしまった。リンには食事用に30万テイルを渡してある。こんなにいらないです、と慌てたように言っていたけど無理矢理あげた。金には困って無いし、餞別代わりだな。
街ではまず最初に二人の防具と武器を買いに行くことにした。プレイヤーが運営しているそこそこ大きな鍛冶屋に入る。二人は《アンデッドカーニバル》で手に入れた素材で防具を作ることにした。
鍛冶と言うのは結構複雑で同じ素材、同じプレイヤーが作っても同じ物が出来るとは限らない。そのプレイヤーの技術が高ければ高いほど良質な物が出来るが、どんな物が出来るかは運の要素が入ってくる。素人でも作れる有り触れた防具から、この世界でまだ一つしかない激レアの防具まで何が出るかは運次第だ。
まずリュウが、死者の骨×10、死者の頭蓋骨×10、死者の腕×10、亡霊の布切れ×3、骨騎士の頭蓋骨×2、骨騎士の鎧の欠片×4、大骨蜘蛛の呪骨×4、大骨蜘蛛の鋏角。これら素材を鍛冶屋の人に渡して防具と武器を作って貰うことにした。完成するのには一時間くらい掛かるらしい。鍛冶屋の技術と作る武器、防具のレア度によって鍛冶に掛かる時間は変わってくるようだ。次にリンが、死者の頭蓋骨×10、死者の腕×10、骨戦士の鎖骨×4、骨騎士の頭蓋骨×2、亡霊の涙、大骨蜘蛛の呪骨×3、大骨蜘蛛の頭蓋骨の欠片、大骨蜘蛛の鋏角を鍛冶屋に渡す。こちらも一時間ぐらい掛かるらしい。合計二時間だな。丁度良い。俺達は鍛冶屋を後にして次はアイテムを買いに行くことにした。
因みに、リンの持っていた亡霊の涙は稀少アイテムだったらしい。俺、四個も出たんだが…。
NPCが開いている何でも屋、アイテムショップに行きいらないアイテムを売って回復薬などの消費アイテムを補給しておく。エリアが進むたびにアイテムショップで売られている品も増えていく。もっと上のエリアには回復薬の強化版とかが売っていると掲示板で見た。新しいアイテムの説明とかを見るのってドキドキして楽しいな。使用していると少しずつHP、スタミナが回復していくというライフキャンディとスタミナキャンディを十個ずつ買う事にした。
その後、料理に使うためのアイテムが売っている店に行ってリン達に今日の夕飯の材料を買って貰った後、近くにあったプレイヤーが開いているというレストランに行くことにした。
レストランはまるでファミレスの様な外見をしており、中身もファミレスっぽかった。店員に案内されて席に座り、メニューを見て料理を選ぶ。リュウはティラノステーキという第二エリアのボスの肉を焼いた物とライス、ドリンクバーで、リンはハングリーサラダという第一エリアのボスの葉を使ったサラダと血塗れパスタというこのエリアでゾンビから取れる死者の血液を使用したパスタ、ドリンクバーを頼んだ。…………。リュウのメニューはともかく、リンェ……。よくハングリーツリーとあのゾンビなんか食べれるな……。と言うか死者の血液って防具の材料にならないし何に使うかと思えば料理の材料かよ…………。と、言いつつも俺はこういった変わったメニューが大好きなんだ。ゾンビの死肉を使った血塗れゾンビステーキにリンと同じくハングリーサラダ、ドリンクバーを選ぶことにした。
あの名前が分からないピンポンする奴をピンポンし、店員を呼ぶ。「なんだかゆとりって言葉が頭に浮かびました」とかリュウに言われたが無視する。ゆとり政策とかかなり昔の出来事なのによく知ってるな……。
料理が運ばれてくる前にドリンクバーで飲み物を注いでくることにした。
「なんだこりゃあ……」
ドリンクコーナーには見慣れたオレンジジュースやコーラなどといった現実にもあった飲み物から、ラッキージュースとかポロポロジュースとか訳の分からない名前の飲み物が合った。あの森で取れた果物を持ってきてジュースにしてみたいなあ、なんて思いながら俺は試しにラッキージュースにする事にした。黄色の液体をコップに注ぐ。因みにリュウはオレンジジュース、リンはポロポロジュースだった。リュウってクールだったり子供っぽかったりする時があるな……。ちょっと可愛い……。いや、ショタじゃないぞ断じて。
席に戻って乾杯し、早速ジュースを飲んで見ることにした。
「おおお」
これは新しい味だな。甘酸っぱい味で何というか、もの凄いツルツルと喉を滑っていく。同時になんだか身体に力が漲っていくような感覚。
「ラッキージュースはラッキーセブンの実っていうのを使ったジュースで、ラッキーセブンの実は食べると一時的にステータスが上昇するんですよ」
リュウが教えてくれる。……なんでコップを両手持ちで飲んでるんだよ。ガキか……。可愛いな。じゃなくて、なるほど。この身体に力が漲ってくるのはステータスがあがったからなのか。
「リンの飲んでるポロポロジュースってなんだ?」
リンが飲んでいるのは薄い青色の飲み物だ。
「ああ。第二エリアのモンスター、ブラキオンというモンスターから採取できるアイテムを材料にしています。名前はブラキオンの涙」
なるほどな。涙か。どんな味なんだろう。
「リン、一口貰っても良いか?」
「ええっ」
美味しそうだったので一口くれるように頼んでみると、なんだかすごい仰け反られた。え、いや、まだ俺のラッキージュース残ってるし、取りに行くの面倒だったから一口貰いたかったんだが……。
「嫌だったか?」
「別に……嫌じゃないですけど……」
リンが小声でブツブツと何か言い、俯きながらコップを渡して来た。
「さんきゅー」
どれ一口。…………なんだこりゃあ。スポーツ飲料にまろやかな甘みを足した感じだ。なのに後味さっぱり。結構上手い。それに身体が軽くなったような気がする。
「はい。これを飲むと動きが速くなれるんですよ」
ほほう。
もう一度礼を言ってリンにコップを返す。リンはしばらくコップを見て顔を赤くしてうじうじしていたけど、思い切った表情でポロポロジュースを飲んだ。……この反応は昔やったギャルゲのヒロインの間接キスイベントの時みたいだな。……昨日むにむにしても顔を赤くして変な声を上げていたけど、やめろとは言われなかったし、もしかしたらこれは。まさか。俺の行動でこんなにフラグを建てれる訳がない。…………。
しばらくして、頼んだ料理が運ばれてきた。ジューと音を立てながら運ばれてくる俺とリンのステーキ。俺の人肉ステーキの上にはドロリとした真っ赤な液体が掛かっていた。三人でいただきますをしていざ一口。人肉ステーキは何というか、歯ごたえがあるな。というか上に掛かってる血液、トマト味かよ。あのゾンビってトマト味なのか…………。ハングリーサラダはシャキシャキとして美味しかった。ふむ……ティラノステーキとパスタも食べてみたいな。
「リュウ、リン交換しようぜ」
ステーキを二口分カットして交換を持ちかける。リュウは良いですよ、とティラノステーキを切って一口くれた。スパイシーな味。豚とも牛とも違う、かなり分厚くてかみ切りにくい肉だった。お礼としてリュウに人肉ステーキをあーんしてあげる。さて、次はパスタだ。リン、ちょうだい。
「えうえう」
これなんてエロゲってぐらいリンは顔を赤くしていた。最近流行の鈍感系主人公なら「どうしたんだ? 顔、赤いぞ? 大丈夫か?」みたいな事を言うんだろうけど、俺は女性経験がない引きこもり系男子だ。女の子に優しくされただけで惚れてしまうくらいには経験がない。そんな俺が考察するに、彼女は俺に惚れていてこう、俺にあーんされるのが恥ずかしいのではないだろうかだとしたら、これなんてエロゲ? ……んな訳ないか。さっきといい今といい、食い意地を張りすぎてデリカシーに掛ける事言っちゃったな。流石に年頃の女の子に間接キスとか無いな。うわあ、こういう所が女性に嫌われるんですよ俺。まあ引きこもってたからあれなんだけどさ……。ごめん、デリカシーに欠けたな、と出来るだけ紳士っぽく言おうとすると、リンがフォークにクルクルと巻かれたパスタをこっちに向けてあーんしてきた。なるほどな、そう来たか。マジか。
「あ、ありがとう」
俺から言い出したのに何でこんなに緊張してるんだよ。普通に食べろよ俺。と言うことで思い切って一口。う、うんトマトな味だな。美味しいな。お、お返しに俺もあげないとな……。人肉ステーキをあーんしてやる。リンは目を瞑ったまま口を大きく開いて突き出してくる。おい、口の中に俺が入れろって言うのか。普通君がパクッと食べるもんだろ……。しょうがないので口の中に肉を入れる。すると口が閉じて肉を刺しているフォークごと口の中に。フォークが刺さったまま咀嚼するリン。なんかすっげー笑顔のリュウとフォークをリンの口から取り出せない俺。なぜこんなカオスに……。
そんなこんながあって二時間経った。武器屋に行って防具と武器を受け取る。金は俺が出しておいた。二人が悪いからと言って自分で払おうとしたけど、料理のお礼だと言って無理矢理払っておく。
リュウの防具は『凶気の鎧』を初めとした名前に凶気が付く黒い物で、武器は『ゴーストアックス』。リンの防具は『クリムゾンアーマー』を初めとした名前にクリムゾンが付く赤い物で、武器は『アンデッドスピアー』。リュウの防具には《混乱耐性》のスキルが、リンの防具には《混乱耐性》と《しぶとさ》のスキルが付いていた。リンのクリムゾンの防具はそこそこ上等な物らしい。
「よし、じゃあその辺ブラブラして帰るか」
鍛冶屋を出た俺達は街を適当に歩き回って気になった店に入ったりして時間を潰し、日が暮れてきたので帰ることにした。
後から思えば、俺達は防具を手に入れたらすぐに帰るべきだった。
「あ、よかった。まさか会えるなんて思ってなかったよ」
声を掛けられて振り返ると、そこに立っていたのは《槍騎士》とそのパーティーらしき男達五人だった。
「なんのようだ?」
俺が低い声で威嚇するように言う。こいつはいけすかん。
「ああ、頼み事があるんだ」
そこで《槍騎士》は言った。
「僕のパーティーに入ってくれよ」
こんなラブコメ一度はしてみたいですね。因みに暁君はよく栞に食べ物の交換をねだってあーんしたりしてました。