表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/148

29

 飛びかかってくるゾンビを切り裂き、墓のある方へひたすら向かう。リュウとリンは目の前のゾンビを倒して道を作っている俺の後ろをしっかりと付いてきている。前回は悲鳴を上げていたリンだが、今回は顔を青くしながらもゾンビの急所をしっかりと狙えている。リュウは斧を大きく振りかぶってゾンビ達をまとめて吹っ飛ばしている。リュウは強いな。常に冷静に物事を捉えて的確に行動している。ゾンビに引っかかれても焦ることなく斧で対処し、時折リンの様子をしっかりとうかがっている。リュウは化けるな。レベルが上がればかなりのプレイヤーになれる。……なんて大物ぶって言ってみたけど、実際リュウは強い。多分俺と同レベルだったら俺より強いんじゃないかと思うぐらい。……なんかむかつくが。

 《フォーススラッシュ》で前にいるゾンビを切り刻む。そろそろ例の鴉が出てくる地点だな。ゾンビももう前からは来ていないし。リュウとリンを《真空斬り》で援護してやり、ゾンビ達から逃げ切る。


「下がってろ」


 建物の影から様子をうかがう。大量の鴉がウジャウジャ空を飛んでいた。二人に下がっている様に言うと、俺は影から飛び出した。一応、パーティーを組んでいるから二人にも多少経験値は入る。ぶっちゃけここにいるのはあの二人のレベルを上げるためだからな。


「ふっ!」


 《真空斬り》を黒い塊の中にぶち込む。鴉達が悲鳴を上げてばらけていく。今ので数十体は倒せただろう。だけどまだまだ大量にいる。鴉達は俺に向かってロケットの様に突っ込んでくる。凄い数だ。掲示板では鴉は相手にせず逃げろと書いてあったが、今回は全部俺が倒してやろうと思う。あのスキルも使いたいしな。

 何もせずギリギリまで鴉達を引き付ける。そして俺に直撃する直前に《オーバーレイ・スラッシュ》を発動する。銀色の光が刀を包み込む。《流星》と同じ色か。綺麗だな。


「はぁあああああああああ!!!!」


 太刀を斜めに高速に切り下ろし近づいてきた鴉達を片っ端から切り裂く。一度振るたびにかなりの数の鴉が悲鳴を上げて消えていく。相変わらず凄まじい威力だ。銀色の流星が降り注ぎ鴉を粗方かたづける。数体打ち洩らして嘴で突かれたが大したダメージはなかった。適当に太刀を振って倒しておく。


「暁さん!」


 リュウとリンが建物の影から飛び出てきた。二人とも顔を上気させどこか嬉しそうだ。


「僕達二人ともレベルアップしました!」

「新しいスキル会得しました!」


 今の鴉達で経験値が溜まったみたいだな。良かった良かった。墓地でも結構な量のモンスターが出てくるらしいから、もしかしたらボスを倒したらもう1レベル上がるかもしれないな。三人でボスを倒せばかなりの経験値が入るだろうし。

 二人に良かったな、と声を掛けてやり先に広がる墓地を見つめる。雰囲気からしてかなり不気味だ。掲示板では墓石は約三万個置かれているらしい。どうやって数えたのかは疑問だが。今はその三分の一に名前が刻まれているようだ。最初の方でかなりの数の死人が出たらしい。


「墓地に出てくるモンスターはゴースト、スケルトン、ボーンナイト、ボーンドッグだ。知っていると思うがゴーストの攻撃は数割の確率で混乱状態になる。気を付けろよ」

「「はい!」」


――――――


 墓地に入るとゴロゴロと雷が鳴り始めた。雨も小降りだが降り始める。この《アンデッドカーニバル》では雨や雷などの悪天候になりやすい。墓地に雷と雨なんてまさにピッタリな演出だな。勘弁して欲しい。リンはリュウにくっついている。微笑ましいな。リュウもリンも顔が整っているから美形カップルに見えてくる。外見は殆ど弄っていないらしいので現実でもこの顔らしい。クソ、イケメンめ。


 しばらく進むといきなり地面から何かが生えてきて俺の足を掴む。スケルトンか。それを合図に地面から大量に手が生えてくる。地面が盛り上がりスケルトンが這いだしてきた。骨はどれも黄ばんでいる。空洞の目が不気味だった。

 俺は足下のスケルトンの腕を切り落とし、次いでその首も斬る。髑髏がカタカタと音を立てながら飛んでいき、光の粒となって消えていく。リンは新しい化け物にパニックになりかけつつも槍で頭を砕いていく。リュウは落ち着いて近づいてくるスケルトンを倒している。流石だな。


「進むぞ!」


 通路を塞ぐスケルトンを何体か倒しながら二人にそう告げ、さっきのゾンビから逃げるように俺が道を作って走る。二人は横から手を飛ばしてくるスケルトンを倒しながら俺の後に付いてくる。スケルトンは地面から大量に湧き出てきて相手にしていればかなり骨が折れる。出来るだけ相手にせずに進んでいく。

 しばらく行くと今度はボーンドッグが出てきた。数は五体。大型犬がそのまま骨になった形だ。この数だけならあの二人でも何とかなるだろう。俺ばかりが倒していては二人の経験値も上がらないからな。

 

「任せた」


 俺は後ろに下がる。二人は驚いたような顔をしたが頷いて、向かってくるボーンドッグに武器を向けた。一斉に飛びかかってきたボーンドッグをリンが《薙ぎ払う》のスキルで対応する。《薙ぎ払う》は槍を大きく横に振って攻撃する打撃系のスキルだ。ボーンドッグ達は顔を叩かれて仰け反る。そこにリュウが《フルスイング》を打ち込む。ボーンドッグの内の二体が《フルスイング》で骨を砕かれてHPバーを空にする。体勢を立て直した残りの三匹がリンに向かって飛びつく。


「《トライスタブ》」


 大きく開かれた口に槍先が高速で突っ込まれる。ほぼ一瞬で三匹の口が砕けた。だがHPはギリギリ残る。ボーンドッグは最後の力を振り絞ってもう一度リンに飛びかかろうとするが、後ろからリュウが斧で止めを刺していく。良いコンビだな。


 俺も栞と一緒にやったらあんな風に出来るのかな。




 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ゾンビの急所…………急所? 何処だろう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ