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俺が戸惑ってあ、う、と変な声を出しているとリンがハッとした表情をした後、また顔を真っ赤にしてブンブンと首を横に振った。
「そ、そういう意味じゃなくて! 私たちと正式にパーティー組んでくれませんか!?」
ああ、そういう意味か。俺が変な風に勘違いしちゃったみたいだ。ふむ。こいつらと組むことによって俺が得る利益を考えて答えを出すと、当然NOだ。こいつらは俺より遙かにレベルが低いし、足手纏いにしかならない。それから自由行動も出来なくなる。
「もし、組んで下されば毎日得るテイルの半分を暁さんに渡します。それ以外でも言うことは聞きます」
それでも答えはNOだ。金自体は不便してないし稼ごうと思えば自分で稼げる。こいつらを連れていたら高レベルのエリアには行けないだろう。リュウの話なら俺は攻略組に入れるくらいのレベルを持ってるそうじゃないか。低レベルのプレイヤーからチヤホヤされたいとも思ってる。このままダラダラとしていれば攻略組からはどんどんレベルを引き離されていくだろう。それは嬉しくない。
…………。
料理の味が好みだから一緒に行動する。これはあり得ない。自分でも作ろうと思えば時間は掛かるが作れるようになるだろうしな。だから毎日料理を作って貰うために一緒に行動するなんていうのは選択肢にはない。そもそも最初からボスを倒すまでと言う約束だったんだしな。
「お願いします。暁さんといれば強い相手とも戦えますし、僕らも頑張って強くなりますから!」
リュウも頭を下げてお願いしてくる。だからそんな風にされたって嫌なんだってば。確かに一緒にパーティー組んでエリア行ったりこうやってご飯食べるのは悪い気はしない。……んー。なんだろうなこの気持ち。この二人と一緒にいるのは悪い気分じゃない。ずっとパーティー組んでるって言うのはあれだけど、もうちょっとだけ一緒に居てやっても悪くない……か? こうやってズルズル引き延ばすのは良くないと思うけど、もうちょっとだけ一緒にパーティーを組んでいたい気もする。そうだ、次のエリアをクリアするまでパーティーを組んでやろう。
良くは無いと自分で分かっていると言うのに、俺の口は動いていた。
「分かった。次のエリアをクリアするまでなら良いぞ」
「「ホントですか!?」」
少し前にも同じ反応をされた気がする。リュウとリンは頬を上気させ、二人で喜んだ。こういう反応をされて悪い気分になる奴もいないんじゃないか? 俺も思わず頬を緩ませてしまう。
引き籠もるまではこうやって家族と一緒にご飯を食べてたっけ。懐かしいな。
久しぶりに温かい食卓だった。
――――――
翌日、俺達はレンシアさんの鍛冶屋に来ていた。理由は勿論、二人の防具を作って貰うためだ。ギガントゴーレムの素材を渡し、三時間ほど街の中をブラブラしていると出来たというチャットが飛んできたので、鍛冶屋に向かい金を払って受け取る。勿論、リュウとリンが自分の金で払った。金持ちとはいえ、恵んでやるほど甘くはない。いや、こうやってパーティー組んでる時点で十分甘いか。
この後、太刀使いは目立つと言うことで仮面を買うことにした。声色を変える仮面というのが売っていたので三枚ほど買った。なかなか値が張ったが仕方がない。必要出費だ。宿に戻った後に装備してみた。声が低くなり、なんとも格好いい感じになった。自分の喉から違う人の声が出てくるのは変な感じだけど。仮面は狐の様な形をしていた。狐面を尖らせたような形というか、カクカクしている。色は白と赤。なかなかシンプルな出来だ。嫌いじゃない。鏡で見てみたが結構迫力が出ていて良いと思う。リュウとリンも似合ってると言ってくれた。これで顔が広まるような事は無いだろう。もっと早くに買っておけばよかったな。と言っても太刀を使っていれば目立つんだけどな。
それからレンシアさんにグルヴァジオの素材から作って貰った巨青熊の防具一式と、『斬鬼・青』も装備した。彼女が言っていたとおり、防具と太刀にスキルが付加されていた。防具の方には《強靱な生命力》という見たことのないスキル、『斬鬼・青』には《巨青熊の威圧》というスキルだ。《強靱な生命力》って事は《生命力》の強化版だろうか。後でしっかり調べておこう。
巨青熊の防具はとても軽かった。上手く言えないが体の一部になるような感じ。装着口に青色の毛が付いていてフワフワしている。初期装備とは比べ物にならないぐらい防御力は高いだろう。これでそんじょそこらのモンスターの攻撃は通らなくなる。そして太刀『斬鬼・青』。名前に青と入っているだけあって柄や刃は青色だ。光を当てると刃がうっすらと青色に見えるようになっている。凄く格好いい。『血染め桜』も結構レア度の高い武器だから、売らずにアイテムボックスの中に入れておくことにした。もしもの時の保険だ。
その後回復薬やスタミナドリンクなどのアイテムを補給し、次の街に行くことにした。リュウとリンのレベルは次のエリアでもやっていける程度はあるから大丈夫だろう。防具も新調し《生命力》のスキルも手に入れたし、前みたいにモンスターハウスに囲まれない限りは多分大丈夫だ。まあ俺も居るしな。
《アンデッドカーニバル》。次のエリアの名前だ。掲示板で調べてみたところ、ゾンビやボーンナイトというホラー系のモンスターが出てくるらしい。出現する数が多いから経験値稼ぎには良い場所なんだと。ホラーは嫌いじゃないけどグロテスクなのは嫌だな。
街の中央にあるワープゲートを使用し、《アンデッドカーニバル》へワープする。クリアされたエリアにはどの街にあるワープゲートからでも行くことが出来るようになっている。
緑の光に視界が包まれる。
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Name:暁
Lv61
Weapon:太刀『斬鬼・青』
Skill:《ステップ》《空中歩行》《隠密》《見切り改》《察知》《受け流し》《フォーススラッシュ》《クリア・スタブ》《兜割り》《抜刀斬り》《侍の気迫》《麻痺耐性》《毒耐性》《残響》《真空斬り》《間合い斬り》《オーバーレイ・スラッシュ》《強靱な生命力》《巨青熊の威圧》
Title:【罠士】【下克上】【赤い紋章】【太刀初段】【太刀二段】【幸運】【俊足】
Strength:234
Agility:251
Endurance:172
Vitality:210
Dexterity:130
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Name:リュウ
Lv27
Weapon:斧『レックスアックス』
Skill:《ステップ》《ジャンプ》《見切り》《察知》《隠密》《兜割り》《フルスイング》《フォーススイング》《生命力》
Title:【斧使い初段】
Strength:101
Agility:94
Endurance:52
Vitality:87
Dexterity:53
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Name:リン
Lv26
Weapon:槍『トリケラスピア』
Skill:《ステップ》《ジャンプ》《見切り》《察知》《トライスタブ》《なぎ払う》《生命力》
Title:【槍使い初段】
Strength:87
Agility:95
Endurance:45
Vitality:78
Dexterity:100