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頂上に近づいてくると出てくるモンスターの数が格段に増えた。レベルもそこそこ高くなっている。それでも俺一人で対応出来る程度だけどな。もう少し先の攻略エリアに行くべきだったかも知れないな。ここじゃモンスターが弱すぎて自分の強さがどれくらいなのかよく分からない。現在第一二攻略エリアにいるという攻略組がどれ程の強さなのか知りたいな。宿に帰ってから調べるつもりだけど、自分で戦って確かめてみたい。この世界はレベルがただ高いだけじゃ生き残っていけないし、本当の実力をこの目で確かめたい。
しばらく登っていると分かれ道が見えてきた。恐らく片方がボスへの道だろう。もう片方は何だろう。やっぱこの山について調べてくるべきだったな。楽勝だと余裕でいたけどこういうところで面倒なことになる。しょうがない、右へ行こう。
右の道を選んでしばらく進んでいくと地面に草が生えているのが見えてきた。この山は岩ばかりで草とか生えてなかったのになんでここだけあるんだ。進んでいくと草の量が増えてきた。木も何本か生えている。この山はどうなってるんだ?
周りを観察していると少し離れたところで何かが落下するような音が聞こえてきた。それが何回も連続して地響きを起こす。何か起きたみたいだ。取り敢えず音の聞こえた方へ行ってみるか。足下に絡みつく草を強引に離しながら先へ走る。もしかしたら、この先にいるプレイヤーが危ない。
エリアの中で気を付けなければならないのはモンスターだけではない。PKをしてくるプレイヤーと、罠だ。エリア内には幾つかの罠が仕掛けられている。プレイヤーを状態異常にする罠や大量のモンスターが一斉に襲いかかってくるモンスターハウスなどがある。今の音は恐らくモンスターが空から降ってきた音だと思う。エリアの適正レベルに達していてもモンスターハウスに掛かれば死んでしまう事がある。モンスターハウスではワープロープが使えないため、モンスターを倒すほかに生き延びる方法はない。
進んでいくとモンスターが大量にいるのが見えた。ゴーレム系のモンスターが何かを囲んで攻撃を仕掛けている。今まで見なかった木で出来たウッドゴーレムなんてのがゴーレムの中に混ざっていた。どうやら木が生えていたのはあのゴーレムがいたからか。このまま見捨てて元の道に行こうか考えたが、プレイヤーに恩を売っておいて損はないし、ここのモンスターなら何体来ても大丈夫だろうと思い助けることにした。太刀ってだけで白い目で見られるのは嫌だし、太刀に助けられただと……と驚かせてやれるかも知れない。何人のプレイヤーがあそこにいるか分からないが、取り敢えず助けてやろう。急いで駆け寄り、こちらに背を向けていたアイアンゴーレムを斬り付けて倒す。後ろからやってきた俺に気付いたのか、何体かゴーレムがこちらを振り向いた。
「加勢するぞ! 大丈夫か!」
モンスターハウスの中心にいるプレイヤー達に声を掛ける。中から金属音が聞こえてくるからまだ全滅はしていないようだ。
「ありがとうございます! このままだとちょっとやばいです」
中から若い男の声が聞こえてきた。まだしばらくは耐えられそうだな。
ギシギシと音を立てながら突進してきたウッドゴーレムをそのまま真っ二つに切り裂き、《ライト・スクエア》で近寄ってきたゴーレムを一掃する。仲間がやられた事でゴーレムが中のプレイヤーよりも俺が危険と判断したようだ。大量のゴーレムが足音を響かせながら走ってくる。おお……結構迫力あるな……。ブラッディベアーには遠く及ばないけど。
「《真空斬り》!」
先頭を走っていたゴーレム達を切断する。仲間の死体に足を取られてバランスを崩すゴーレム達に近づいていき、スキルを使わずに軽く倒していく。次第にゴーレムの数も減っていき、襲われていたプレイヤーの姿が見えた。驚いたことにモンスターハウスの中心にいたのは若い男女だ。若いと言うのは何かおかしいかもしれない。二人とも中学生ぐらいに見える。よく二人だけでここまで来たな……。男は斧を、女の方は槍を使っている。
「《トライスタブ)》」
女が三連続で攻撃する突きのスキルを発動して近くにいるゴーレムを牽制し、男が《フルスイング》で怯んだゴーレムを吹き飛ばす。なかなか良いコンビだな。二人とも息がピッタリと合っていてなかなか隙がない。それでも数には負けるようで、後ろから近づいてきているゴーレムに気付いていない。俺は道を塞ぐゴーレムを斬って進む。《空中歩行》で二人を飛び越え、攻撃しようとしているゴーレムを斬り倒す。二人は一瞬で後ろに移動した俺に目を丸くしながらも、近づいてきたゴーレムを確実に倒していった。
五分ほど経ってようやくゴーレムを全て倒すことが出来た。俺はレベルアップしなかったけど二人は何レベルか上がっていたようだ。
二人は回復薬とスタミナドリンクをアイテムボックスから取り出し、嚥下して体力とスタミナを回復させる。その後俺の方に近づいてきて頭を下げてきた。近くで見ると二人ともよく似た顔つきをしてるな。もしかしたら兄妹かもしれない。
「危ない所を助けて頂きありがとうございます。僕達二人だったら多分死んでました」
「ありがとうございます」
人に頭を下げられるなんて経験したこと無いから反応に困ってしまった。小説のワンシーンみたいだ。なんか照れくさい。というか予想していた反応と違うぞ……。太刀に助けられただと……じゃないなんて。
「いえ……助け合うのは当然のことですから」
ちょっと臭すぎる返事してしまった。引かれるかな、と思って反応を待っていると二人は俺を見て目を輝かせ始めた。ええ……なんなんだ。二人はお互いに頷き会うと、男がどこか緊張気味に口を開いた。
「あのっ、もし良かったら僕達とパーティーを組んでくれませんか!?」
連続技の説明。
トライで三連続、フォースで四連続、フィフスで五連続、それ以上はさまざまな名前が付いています。