表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―Bloody Forest―
12/148

11

 全身が燃えるように熱い。何事かと目を開けてみると、熊が俺に腕を振り下ろそうとしているのが見えた。そのまま熊は俺を叩き潰して――――あれ? 熊は確かに腕を振り下ろしてはいるが、その動きはとても遅い。まるで映画のワンシーンをスロー再生して映しているような感じだ。そこまで気付いてから俺は自分の体に違和感を覚えた。……痛くない。先程まで体を襲って痛みは完全に消えている。その変わりなのか、肌に赤い紋章のような物が浮かび上がっていた。これには見覚えがある。そう、ブラッディベアーのだ。

 ブラッディベアーはHPがレッドゾーンまで減ると全身に赤い紋章を浮かび上がらせ、力を増す。攻撃、スピード、防御力、それらが格段に上がるのだ。それに良く似たものが、今俺の肌にある。一体どういう事だ?

 

 さっき、一瞬脳内に何かが浮かび上がった気がする。それが一体何だったのかは分からないが、“どうしたら良いか”と言うのが分かる。上手く説明出来ないが、この熊を倒すには何をどう使えばいいのか、それがさっき頭の中に浮かんできたのだ。このままならあっけなく殺される。だったら、その予感とでも言うべき物に頼ってみるのも悪くない。


 そう思った瞬間、熊の動きが元に戻った。振り上げた腕が音を立てながら近づいてくる。俺は急いで立ち上がり、《ステップ》で横に跳んだ。体が軽い……。そして力が漲ってくるようだ。こんな状況だというのにとても心地良い。


 仕留めたと思っていた獲物に逃げられた熊はグルル唸ると、体をこちらに向けてまたゆっくり近づいてきた。やはりこいつの動きはかなり遅い。それでも懐に潜り込んで攻撃するのは危険が大きすぎる。

 だったらっ!


「《残響》」


 頭の中に浮かんだ文字を呟き、そのまま熊に突っ込んでいく。そんな事をすれば当然紙を破るかの如く爪で引き裂かれてしまうだろう。俺は熊の攻撃をモロに喰らい、そして“かき消えた”。熊が戸惑っている間に本物の俺は背後に回り込んでいる。

 やはり俺がこの熊に勝てるとしたら急所を狙っての一撃死しかない。急所である心臓は正面にあるし首を切り落とす事なんて無理だ。ならば背後にあるうなじに刃を突き刺してやればいい。


「《空中歩行》」


 俺は一度跳び、そして空中にある見えない床を蹴って熊のうなじを目指す。《四段ジャンプ》では届かなかった場所でも、これなら届く。効果は何となく分かる。これはスタミナが続く限りジャンプを続けられるスキルだ。凄まじい勢いでスタミナが減っていくのが見える。恐らくもう他のスキルを使う余裕は無いだろう。でもそれで良い。急所にそのまま突き刺すだけで事足りるのだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 うなじの少し上まで跳び『血染め桜』の刃を下に構えてそのまま落下する。落ちる衝撃と突き刺す威力があれば、一撃死させることも出来るだろう。

 俺の叫び声に気付いた熊が振り返ろうとするがもう遅い。刃が丈夫な毛皮を貫いてうなじを突き刺す。

 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 熊が悲鳴を上げた。だが死なない……。HPは一撃で半分まで減少したが、一撃死は叶わなかった。刃が刺さっていることで少しずつHPが減っていく。


「まだだあああああああああああああああああ!!!!」


 『血染め桜』をそのまま奥へ押し込む。ズブリと刃が肉に沈んでいき、傷口から血が溢れる。HPが減る速度が加速した。だけどまだ時間が掛かる。

 熊がうなじに居る俺まで手を伸ばし、背中を爪で切り裂く。それだけでHPが0になって死亡するが、俺にはまだ魂の欠片がある。即座に復活した俺は再び刃を押し込む。肉もかなり堅くて刃が進んでいく速度は遅い。それでも押し込めば押し込むほどHPが減る速度は速くなっている。

 熊が背中を切り裂いた。死亡し、また生き返る。


 俺はまだ生きたい。ここから出たい。現実の世界に戻りたい。まだやりたい事が沢山あるんだ。だから。


 だから早く死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

 早く死んでくれ!

 刃を押し込む押し込む押し込む押し込む。背中を切り裂かれて死んで生き返って死んで生き返って死んで生き返って死んで生き返って死んで生き返って死んで生き返って!












 ついに熊のHPが零になった。俺はもう八回死んでいる。それでも勝ったんだ。俺はこの熊に勝って生き残ったんだ! よっしゃあああああ!!


 熊が絶叫し、そのまま後ろに倒れる。え……。うなじに刃を刺してぶら下がっていた俺は避けれるはずもなく、そのまま熊に押しつぶされた。

 俺はまた死んだ。











 ――――レベル60になりました。

 

 ――――スキル《見切り改》を会得しました。


 ――――スキル《真空斬り》を会得しました。


 ――――スキル《間合い斬り》を会得しました。


 ――――スキル《オーバーレイ・スラッシュ》を会得しました。


 ――――称号【幸運】を入手しました。


 


 ――――魂の欠片を使用しますか? Yes/No



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
??? 心臓狙うなら前も後ろも大して変わらんだろう? まあ、当たってもしばらくは暴れるだろうけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ