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ブログに番外編を投稿しておきました。
本編が短い代わりにそちらを見てもらえれば…。
――――時間制御プログラムはほぼ完成。
――――人工知能技術の大幅な進歩。学習技術により人間とのコミュニケーションはほぼ完璧。
――――脳波の完全な解析により感情制御プログラムは完成。
――――精神操作プログラムは第四段階まで進行。第五段階の実験は計画より大幅に遅れたものの実行可能。
――――体感型仮想空間装置に対する適応値の自由操作、失敗。
――――適応値の上昇及び低下の原因解明、失敗。
――――実験開始後から検出されたバグの原因の解析、失敗。
――――ゲートから侵入してきた者は未だ発見出来ず。
「はい。例のプログラムの実験は無事に行えそうです」
『そうか。まさかここまで時間が掛かるとはな。当初の予定ではとっくに実験は終了している予定だったのに』
「申し訳ございません。やはり精神を全く別の身体に入れるのは難しく、第四段階の進行が遅れてしまいました」
『まあ、そこで行き詰まるだろう、ってのは前々から分かっていたことだ。気にしなくていい』
「……はい。それで実験は今すぐ開始しますか?」
『いや、今丁度28エリアのボスとモル、いやプレイヤー達が戦っている所だ。丁度いい。第29攻略エリアの解放と同時に実験を開始しよう』
「了解しました」
『それにしても嬉しい事だ。私の予想では進めても第26エリアぐらいまでだと思っていたからね』
「…………」
『きっと浦部の奴も喜んでいる事だろう』
「……現在はどこにいらっしゃるのですか?」
『はは、もうすぐ終わりだし、最後にパーッと遊ぼうと思ってね。街も解放されることだし』
「…………」
『怒らないでくれよ。こうやって遊ぶ為に私は浦部を責任者にしたんだ。「神」たるもの、直接世界を見る必要があるだろうし』
「……めちゃくちゃです」
『まあしばらくは任せたよ』
――――――――――――
「へェ、攻略組があのエリアをクリアするのと同時に最後の祭りが開始されるって訳か」
深夜、全てが闇に包まれたある場所で自分達は話をしていた。
男の言葉に頷く。
「はは、ようやく任務が開始出来るってもんだ。時間が掛かるとは思っていたが、まさかここまで掛かるとは思ってなかったぜ。お前もやっと役に立てるな。ボディガードとしてお前を守ってやったかいがあったってもんだぜ」
この男に守ってもらったことなど一度も無いが、それでも頷いておく。現在の感情の大部分を占めているのは恐怖だった。もし役に立てなければ、この世界から出た後間違いなく自分は消されるだろう。『役に立たない奴は死ね』。自分の仲間は家族にすらそう言いながらナイフを突き立てる連中なのだから。
「クク、横から全てを掻っ攫うのが楽しみだ。あいつにもそろそろ伝えておけよ」
そういうとその男は闇の中に姿を消していった。ふぅ、と溜息を吐き、地面にへたり込む。
怖かった。なんで自分の仲間はこんなんばかりなんだろう。
そう考えてしまう時点で、やはり自分は『仲間』とは違っているのだろう。
あのひとが、仲間だったら良かったのに。
心の中でそう呟いて、自分もその場から姿を消した。