芳子が東京に帰ったという話を光彦から聞いたとき、竜彦は悲しみのあまり、すごい屁をこいてしまった。
その勢いで、数メートルほど体が浮いて天井に激突した。
「おい、みつ。ウソつくなよ。よっちゃんが東京に戻るわけねぇだろ!」
頭を押さえながら竜彦は怒鳴った。だって、そうじゃないか。みんなもそう思うだろ? 信じられないよ。あのよっちゃんが東京に帰ってしまうなんて。そんなにわが河山町がいやになったってのか? そんなわけない。だって、河山町はとってもいいところ。コンビニもあるし、パチンコだってある。ステーキハウスだってあるよ!
だいたい、今の東京はひどい状態だそうじゃないか。ゴリラ軍に占領されてからというもの、人々がゴリラの奴隷となり、いろいろ屈辱的なひどいことをされてるって言うじゃないか。そんな東京に、なぜ、今、わざわざ帰るって言うんだ!
「信じられないよ!」
竜彦は叫んだ。食器棚の皿を次々と投げて壊していった。
止める光彦。
「やめろよ、やめろよ、兄ちゃん」
「うおーーーーー!」
竜彦は食卓の上に飛び乗ると、ゴリラみたいのに胸をドンドン叩いて、叫び続けた。
「うほ、うほ、うほほぉーーーーーー!」
光彦は110番した。
警察がきた。
「こら君。やめないか。なにゴリラのマネしとんねや!」
「うほうほー!」
とりあえず、警察は発砲した。すると、後ろのガラス窓に当たって跳ね返って自分を直撃して即死した。
「お、おまわりさぁーん!」
光彦は自衛隊に電話した。
自衛隊が来た。
自衛官の一人が部屋に入ると、いきなり、テレビをつけた。
ナイターがやっていた。
もう一人の自衛官は勝手に冷蔵庫を開け、ビールを取り出した。
もう一人はいつのまにか台所でえだ豆をゆでている。
「ちょ、ちょっと、みなさん! なにしてんの!」
光彦は泣きそうである。
「うほうほうほー!」
ゴリラになった竜彦は、そこらじゅうのモノを倒し始めた。
数十人の自衛官は、テレビの前に座り、えだ豆とビールをつまみに、ナイターを観てる。
松井がホームランを打った!(了) |