「ちょっと、よっくん。ちゃんと切ってよ」
「あわわわ。指切りそ」
オレとせっちゃんは台所に二人で並んでサラダを作ってる。
「せっちゃん。ちょっとアレ取って」
「もう! 自分で取ってよ。あたし、玉子すりつぶしてんだから」
せっちゃんはボウルの中にマヨネーズを入れた。
なかなか二人で作るのも楽しいもんである。たまにはいいネ、こゆのも。
しかし、オレは慣れてないので、すでにかすり傷が絶えない。
「せっちゃん。オレ、もうキャベツ切るの飽きたよぅ」
「ダメよ。キャベツはサラダの王様なんだからちょんとやってくれなきゃダメよぅ」
オレは必死にキャベツを千切っていく。うっすら汗がにじむ。
「あ。よっくん。汗」
せっちゃんがオレの額をハンカチでふいてくれた。
「あ。ども」
「うふふふ。よっくんたら一生懸命ねぇ。ステキ」
「そう? うひひひひ」
バカらしい。
「関係ないけどさ、せっちゃんのエプロン姿ってステキだね」
「まぁうれしい。でも、よっくん。あなたのエプロン姿もけっこうクールだよ」
「そう、うひひひ」
オレのキャベツをきざむスピードが速くなる。
「でもさ、せっちゃん。エプロンの下、何も着てないやん」
着ろよ!
「よっくんだって」
お前もか!
「風邪ひいちゃうよ」
勝手にひけ、アホ!
「よっくんだって、ちゃんと服着なきゃ。熱出しても知らないよ」
大丈夫! バカは熱出さない! インデアン、嘘つかない!
かなりいいカンジでサラダが出来上がってきた。キムチも入ってるし、わかめだって盛りだくさんだし、どんな味なのか、楽しみ。ドキドキ、ワクワクである。
さあ、盛り付けするか。
と、その時!
「あ! しもうた!」
「どないした! せっちゃん!」
せっちゃんは包丁を落として、オレの足に刺さった。
「いってええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「メインのおかずがねぇぞ!」
せっちゃんは遠い目をしながら、床に転がるオレをけとばした。
「メインのおかずがなきゃ、サラダのイミねぇし!」
せっちゃんは、さらにオレをけとばした。
「ああ! 今から肉買ってこようたって、店閉まってるし!」
せっちゃんは、さらにさらにオレをけとばした。
「なんてことだ! なんてことだ!」
せっちゃんは、床に転がるオレにサラダをぶっかけた。
「よっくんのバカ! よっくんのバカ!」
オレはサラダまみれになった。
「どうしてくれるのよ、このブルーなマイ・ハート!」
オレは起き上がって、怒鳴った。
「やい! せっちゃん!」
「な、なによ」
オレはせっちゃんの頭に和風ドレッシングをぶっかけて叫んだ。
「オレは君が食べたいぜ!」
せっちゃんは顔を赤くしてうつむいてしまった。しまった。いいすぎたか。
すると、せっちゃんもオレの頭にゴマだれのドレッシングをぶっかけて叫んだ。
「あたいだって、よっくんが食べたいわ!」
なーんかバカバカしいね。バカだ、このカップル。死んだ方がいいわ。頭にフォークでもぶっ刺しておけ、バカ!
「って何や! それってオレたちのことを言ってるのか、てめえ!」
てめえって、お前だってオレだろ!
「そう言うお前だってオレだろ!」
そうだけどさ!
「あーなんかわけわかんなくなってきた!」
人称が混乱しとるぞぉーーー!(了)
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