止マル心・凍ル想イ
訳がまったくわからない…。
今自分が置かれている立場が解らないまま落ちてゆく。
ズボンのポッケにある紙に気づかぬまま。
同じ立場に置かれた他の人の存在にも気づかぬまま。
ただ落とされるがまま…。
そして何も解らないが故に何をすべきかも解らない。
もがくことしかできなかった。
彰「あぁ!!何でこんなところに…誰かぁ!!」
今だ他の二人に気付かない。
混乱で周りが見えていなかった。
呼んでもどうせ聞こえる距離ではないが。
そして全て理解している者にも、何一つ理解していない者にも地面は迫ってくる。
彰の混乱はピークを迎えた…。
彰「あぁああぁあ!!」地面が笑っているように見えた。
大きく口を開いて、まるで食べようとしているかのように迫ってくる。
恐い…。
久しぶりに感じた恐怖。
しかしその恐さの中には喜びもあった。
嬉しい…。
滅多に味わえないことだ。
しかしその嬉しさの中には狂気があった。
その狂気も最悪なものとなる。
そしてそれが変わり果てた時、力が目覚める。
あの紙はあくまでヒントを与えるためのもの…。
それを利用せずに力を目覚めさせたのなら、それはこの世界を変える一つの重要な要素となるだろう…。
そしてここにその要素が目覚めた。
彰「くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそっっ!!!!」地面まであと百メートル…
五十メートル…
三十メートル…
十メートル。
そのときだった。
身体を黒い煙りが覆い尽くした。
何処からともなく現れたそれは、触れることはできないもののどこか狂気を感じさせるものだった。
そしてそのままゆっくりと地上に降り立った。
外の景色が何も見えないくらいの煙り。
掃おうと思っても、自分の手は空を切るばかり。
彰「やっぱ俺死んじゃったのかな…?」
心配になってきた。
だが確かに地を踏み締めている感覚はあった。
脚裏から感じる…。
草…土…。
しかしどれだけ移動しても煙りはついて来た。
もう疲れ果て諦めかけていたその時だった。
彰「風…?突風だ!!」
とても強い風。
まるで台風のような。
いいタイミングだった。
自分を覆っていた煙りも剥がれ、周りの景色が姿を現した。
彰はその場に立ち尽くした…。
彰「何があったんだ…」
その光景を見て、恐怖とともに寒気が襲ってきた。
彰の眼前には、空中から見ていた美しい景色はなかった。
そう…表すならば氷河期…。
ただの氷河期ではない。
彰「黒い氷…。」
そこには漆黒の氷の世界が広がっていた。
木々は凍り付き、地面は霜だらけ…いや、何一つ凍っていないものはなかった。
しかも自分の周りというレベルではなかった。
空は昼間の明るさなのに、地上は真っ暗だ。
反射する光もなく、全て黒に吸い込まれてゆく。
とても恐いものだった。
彰は寒くなってきたためポケットに手を入れた。
そこで初めて紙の存在を知り、そこで初めてこの世界のことを知った。
もしそこに書かれていたことが本当ならこれはどういうことだろう。
彰は考えていた。
自分はあの時混乱状態になっていた。
何も想像することはできなかった。
何故だろう…。
何故だろう…。
何故だろう…。
考えた。
わかった…。
あの時何があったのか。
思い出した。
それはあと百メートルの時だ。
落ちてしまうという恐怖から幻覚を見ていた。
彰は地面が恐かった。
地面に自分の顔が浮かび上がった。
そして笑いながらこう言った。
「ここまでの人間だったってことだろ?」
何度も言う。
何度も何度も。
恐怖はやがて憎しみに変わっていった。
彰の気づかぬところで。
混乱の中彰は最後にこう言い放った。
彰「何もかも動かなくなればいい!!!!」
そして黒い煙りが身体を覆い今に至る。
彰は凍らせたかった訳ではなかった。
全ての「静止」を願ったあげく、そのイメージが「凍る」に転換したのだ。
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