黒イ翼・白イ心
雲がどんどん視界の上に外れていく。
ここにも落下中の少年がいた。
パジャマ姿の少年。
彼も咲同様、人生に嫌気がさし薬を飲んだ。
そして悲しみと共に寝た。
そして今ここにいる。
そしてある程度把握したところ。
紙の内容から今の状況まで。
しかし、視界に入る落下中の二人のことは今だわからなかった。
一人は何も動かず落ちるがままの女性…もう一人はもがいてもがいてもがいている男性。
亮「あの女の人死んでないよね…?」
少し心配だった。
そんなことより自分のことだ。
亮は紙の内容を鮮明に思い出した。
紙が風に持っていかれたなんて誰にも言えない…。
言う人もいない…。
亮「欲しいもの…妄想…。」
すると亮の中で一つの答がでた。
あるゲームを思い出していた。
そのゲームは妄想を力にしているもので、みんながそれぞれの妄想を媒介とした武器を持っているというもの。
それがこの世界のルールと同じならば、自分の想像は現実となるはず。
ここが夢の世界ならなおさらだ。
そう決めると、亮は目を閉じ想像した。
自分が今欲しいもの…すべきことを…。
瞳の裏に焼き映す。
亮「風を味方につけよう…」
そう思い、風に乗る自分をイメージする。
優しく包まれていく自分…風をクッションのように…。
自分の想像上では満点だった。
現実…いや、この世界では上手くはいかなかった。
亮「なんも変わってない…!?」
落ちる速度も何も変わらない。
何故こうなるのか、もしかしたらここまでなのか、そう思っていた。
その時だった。
落下速度が遅くなっていくではないか。
亮「おぉっ!」
しかし想像とは程遠いものだった。
風を操っているようにも見えない。
何が起こっているのかわからなかった。
亮「まさか…」
と思いすぐに後ろを見た…。
すると…
亮「羽根…が…。」
亮の背中からは天使のようなとても大きな翼が生えていた。
しかしそれは天使と呼ぶには掛け離れたものだった。
亮「真っ黒だ…。」
真っ黒の翼…。
まさに堕天使そのものだ。
しかし何故翼なのか…答は簡単なことだった。
亮「なるほど、俺は正直者だ…。」
そう言うと、亮は翼を上手く使い方向転換。
そして落下中の女性のもとへ向かった。
そう、亮はみんなを助けたかったのだ。
亮「速い!」
これなら間に合うと思い女性を目指した。
すると女性にも異変が起こった…。
女性が透明の球体に包まれていくではないか。
それだけではない。
落下速度も遅くなってゆく。
亮「なんだあれ…。」
まがまがしいものだった。
次第にその球体は黒みを帯びてゆき、最後には真っ黒になった。
まぁ自分の翼も黒いのだが…。
まだそれだけではなかった。
球体から黒い何かが滲み出ている。
例えるなら…そう、憎しみだ。
遠くから見ただけでも感じた…。
亮は、はっと何かに気づき自分の翼を見た。
…思った通りだった。
自分からも滲み出ていた。
それは触れるだけで涙が出そうな悲しいものだった…。
亮「何だよこれ!?」
間違いなく自分から出ているものだった。
触れるも何も、自分の翼から出ている。
亮自身が悲しみに満ち溢れていたのだ。
自分の愚かさを悔やみながら、仕方なく亮は彼女のもとへ向かった。