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Than she(3)
『やはり、列車移動は車内の方がいいな……』

 白騎士の呟きにミュレイは目を丸くした。それ以外にどうすればいいのかと言う考えを持つのも当然だったが、過去に白騎士は屋根の上にしがみ付いて移動するという貴重な経験を得て居るのだ。
 プリミドールからエル・ギルスへと向かう為にターミナルを目指す列車の中、流れていく景色を前に白騎士は連結部に立ち髪を靡かせていた。様子を見にやってきたミュレイはその隣に立ち、閉じた扇子で白騎士の肩を叩く。騎士は振り返り、それから仮面に手をかけた。

「ミュレイ……? どうしたの?」

「いや……。お主がわらわのところにやってきてから、今日まで色々な事があったと……一人で思い返していたところじゃ」

「もう、一年以上になるからね」

 長く伸びた髪を揺らし、昴は凛とした瞳で世界を眺めている。もしも……白騎士としてではない、北条昴としての彼女と出会ったミュレイが生きていたとして。そして異世界で強くなった彼女を見て。どんな事を思うだろう? 在り得ない仮想……しかし、昴は何となく思う。今ならミュレイとも、堂々と胸を張って話が出来るのではないかと。今なら、ミュレイを……ちゃんと護る事が出来るのではないかと。

「お主には、色々と助けられたな……。わらわの知らない所で色々と働いてくれたのじゃろう?」

「自分で選んで、自分で決めてここに居る……。だから、大丈夫。辛いと思った事なんて一度も無い」

「ほお~……。随分と献身的じゃな」

「…………まあね。こう見えても、どうやら尽くすタイプだったらしい」

 冗談交じりに笑い、肩を竦めてみせる昴。壁に背を預け、騎士は優しく微笑んでみせる。彼女の胸の内に渦巻く様々な感情……しかし、それは決定的に以前とは異なっている。
 闇の魔王を倒そうと、勇者になろうと必死に強くなってきた。けれども結局魔王には勝てず、そしてミュレイは彼女の傍を離れなかった。力だけを求めても何も解決しないのだと、何となくわかったような気がしたのだ。この世界を変える為に、たった一人の姫を救う為に必要な事……。それは、本当に戦いだったのだろうか、と。
 かつて、他人の顔色を伺ってびくびくと生きていた少女は今や自分で考え、己の意思で戦う事が出来る戦士になった。勇気の力で時を遡り、法則を捻じ曲げてここに居る……。存在そのものが大罪、しかしそれは了解の上である。勿論全ての事は、ミュレイには語るつもりはない。ただ……彼女の傍で、彼女を護りたい……。そのために全てをかなぐり捨てた。己の未来さえも……。

「お主は、ばかじゃなぁ……」

「え……?」

 ミュレイはそんな白騎士を見ているのが辛かった。かつて白騎士の姿は、確かにミュレイの理想に近い。己の役割の為に全てを賭し、自由を捨て、冷静にただ目的だけを達成する……。それは確かに正しい事なのだろう。一度は彼女が、彼女の妹に強いた事だ。しかし……実際に白騎士と触れ合って、今は違う思いを抱いていた。

「お主の人生、お主の自由に生きよ。何かに囚われて生きるのは、お主には似合わぬ」

「…………ミュレイ」

「お主は美しい。お主は強く、気高い。お主は脆く、硝子細工のように繊細じゃ。戦いなど向かぬ……ただの女子ではないか」

「それでも、私は貴方を護りたい。私を護ってくれた、貴方の為に戦いたい」

「…………。お主、前から思っておったがかなり頑固じゃのう……」

「お褒めに預かり光栄です、姫様」

「ほーめーとーらーんーわー……! まあ、良い。そんなにお主が傍に居たいというのなら、勝手にしろ」

「お言葉の通りに」

 仮面を装着し、白騎士は風の中で背を向ける。ヨシノの家紋が光を浴びて輝き、その力強い後姿が遠ざかっていく。ミュレイはそれを寂しげに見送り、扇子で口元を隠した。
 元々、昴は自分の意思でこの世界にやってきたわけではなかった。彼女には彼女の生活があったし、夢も希望もあった。だがその全てをなげうってまで望むこの世界の戦いの先、輝かしい未来はあるのだろうか――。

「――――異世界からの……救世主?」

 一方、ガルガンチュアの自室の中、ロゼは一人で声を上げていた。父の手記を読みふけっていると、その単語が何度か出現したのである。最初は古来から存在する伝承の一つとして重視せず読み流していたのだが、余りにも何度もその言葉が続いて紡がれているので少年も流石におかしいと思い始めていた。
 古代遺跡、“フラタニティ”――。そして救世主の存在。父親の研究していた事はロゼには難解すぎて理解することさえも難しかった。だがその二つに深い結びつきがあり、そして帝国の成り立ちとも関わっているのだと知った時、ロゼの中で燻っていた気持ちが少しずつ燃え上がり始めていた。
 今までは忙しく、団長業務のせいで父の生前の記録を漁る事は愚か、殆ど子供らしい事は何もしてくる事が出来なかったロゼ。今、実際に団長を引退して自由に動いてみて初めて判る事……。父と帝国の関係。そして父親が何故殺されたのか。砂の海豚とはなんだったのか……。
 何日もろくに眠っておらず、ロゼの顔色は酷かった。しかしやる気に満ち溢れ、手は止まる様子もない。次々にページをめくるロゼであったが、その時扉をノックする音が響いた。入ってきたのは相変わらずメイド服姿で、なぜかおでこにばんそうこうを貼り付けたシェルシだった。ぐずぐずと子供のように泣きながらロゼに紙切れを突きつけた。

「今日の、こんだてですっ」

「…………。何泣いてんの……?」

「だって、ホクトが……ぐすっ! ホクトが、剣の稽古つけてやるっていって、私の頭思いっきり叩いたんですっ!!」

「………………。あのさ、稽古なら普通じゃない……?」

「開始直後、行き成りばしーんって叩いたんですようっ」

 ロゼは何となく想像した。その後、ホクトがへらへら笑いながらシェルシの攻撃をいなす姿を……。シェルシは泣きながらムキになって襲い掛かるのだが、そんな初心者の攻撃をあのホクトが防げないはずも無い。恐らくシェルシは額を叩かれたのが痛くて泣いているのではなく、ホクトに手も足も出なかったのが悔しくて泣いているのだ。

「ま、とりあえず判ったよ。ボクはまだ調べ物があるから、ホクトにリベンジしてくれば?」

「そうしますっ!!!! では、私はこれでっ!!」

 走り去っていくシェルシを見送りロゼは溜息を漏らした。ホクトとシェルシがやってきてから毎日が少々騒がしくなり、急にリフルや仲間達の事を思い出した。その記憶をかき消すように目を瞑り、深く息を吸う。時間は有り余っている。だが、世界の流れはそれを待っていてはくれないかもしれない。

「しかし、伝承と遺跡……どういう関係があるんだ……?」

 と、呟いたところでシェルシの叫び声とホクトの爆笑する声が響き渡ってきた。眼鏡を外し、額を押さえるロゼ。やはり少々、彼の日常は騒がしくなりすぎているようだった――。



Than she(3)



「ほー……。これはまた、随分と派手な事になっておるのう……」

 エル・ギルスの大陸を移動する列車は停止し、ミュレイはその線路の先に続くローティスの街を眺めた。街の上空には帝国の戦闘空母が三隻浮かび、そこから断続的に市街への砲撃が続いている。空中では連続して爆発が起こり、市街地は燃え上がりまさにその様子は戦場そのものであった。

「予想以上に帝国の動きが早い……。奴ら、ローティスごと攻撃してバテンカイトスからギルドの連中を引き出すつもりかの」

『帝国の戦闘空母が三隻……。勝ち目は薄いな』

「しかし、まだ市街地には一般人が残っているはずでござるよ! これでは無差別攻撃でござるっ!!」

 いきり立った様子で叫ぶウサク。その背後、ゲオルクも不快感を露に空を見上げていた。昴とてこんな横暴が許されて良いとは思わない。だが、冷静に動かねばならないのも事実だった。
 昴たちの旅の目的はギルドと手を組み、帝国の動きを牽制する事にある。つまりここでギルドが滅んでしまえば次はククラカンの番になってしまうし、余計な横槍を入れてククラカン最強の戦力である白騎士やミュレイが共倒れになるような事があれば本末転倒だ。結果、白騎士は一人で歩き出した。その肩を掴み動きを制するミュレイであったが。白騎士はその手を優しく払いのけて頷いた。

『私が先に行って安全を確保してくる。ゲオルクとウサクはミュレイと一緒に来てくれ』

「白騎士殿一人ではいくらなんでも危険でござるよ!」

『いや……私の推測が正しければ、ギルドもただで潰れるとは思えないしな……』

 この白神装武と呼ばれる防具を生み出し、異世界を渡る“魔女”がバテンカイトスには控えているのだ。彼女が黙ってやられるとは思えないが、完全に安全と言えるわけでもない。兎に角ミュレイと一緒に行くのは危険すぎる……そう判断した。しかし姫は溜息混じりに白騎士に歩み寄り、その顔を扇子で叩いた。

「生意気を言うでないわ、阿呆。わらわを誰だと思っておる……? お主は少々、わらわに大して過保護すぎるわ」

 ミュレイはそう呟き、腕に刻まれた炎の魔剣の術式を開放する。浮かび上がる空中の魔法陣からその赤き剣を取り出し、炎を纏った剣を片手に携えた。それはゆっくりと展開し、美しいヨシノの家紋が刻まれた扇へと変化する。

「大魔道、ミュレイ・ヨシノとはわらわの事――。あんな空母くらいどうということはないわ」

『ミュレイ、しかし――』

「ま、そういうこった。白騎士、お前は先行してバテンカイトスの様子を見て来い。俺とミュレイは空母に攻撃を仕掛ける」

『ゲオルク!』

「大丈夫だ。こいつは普段は姫なんかやってるが、お前の思っている以上に“えげつない”からな」

「なんじゃその言い草は……。まあ良い、兎に角空母三隻ならわらわ一人で落とせる。お主は市街地の方を頼むぞ、白騎士。ウサクは白騎士のサポートを頼む」

『…………。判った。正し、無理だけはしないでくれよ』

「たわけ、誰に物を言っておる――? お主程度、まだまだ未熟――! 一騎当千の魔剣使いの力というものを見せてやろうではないかっ!! のう、“ヴェルファイア”――ッ!!」

 高々と空に掲げる扇――。ミュレイの足元に炎の魔法陣が渦巻き、それが花開くように見る見る広がっていく――。炎が大地から溢れ出し、空に舞い上がったミュレイを支えるように大地から巨大な腕が飛び出してきた。姫を抱くようにして現れた巨大な二足歩行の龍、“ヴェルファイア”は巨大な翼を広げ夜の空に吼えた。ミュレイは優雅に足を組み、その掌の中で扇を閉じて剣へと変形させ、足元の白騎士を見下ろして笑った。

「ゲオルク、仕掛けるぞ。久方ぶりに暴れられそうじゃ」

 唖然とする白騎士。しかし、冷静に考えてみればこれで当然なのである。ミュレイ・ヨシノは世界屈指の大魔道――。その実力は昴も知っていた。だが……強くなってみて。自分もまた魔剣使いになってみて実感する。ミュレイの実力。ミュレイの放つ力の大きさ。その何もかもを飲み込み広がっていく炎のような、力強い意思――。
 歴然とした差を感じた。付け焼刃ではない、各個たる歴史と実力に裏打ちされたその力……。昴とは比べ物にならない魔力。否、こんなにも強い力の持ち主は――今まで一人としてみたことがなかった。その力はあの魔剣狩りも、ステラさえも凌駕している――。
 ヴェルファイアへと飛び移ったゲオルクを確認し、龍は空へと舞い上がる。全長20メートルの怪物の上、ミュレイは昴へと叫んだ。

「そっちは任せるぞ! 空はわらわに任せよ! “頼る”ぞ――白騎士!!」

『――――。ああ、判ったよ……判った。こっちは任せてよ、“相棒”』

 龍が空母へと突き進んでいく。それを見送り、昴は走り出した。傍らを追走するウサク……。二人の頭上、龍の上でミュレイは少しだけ二人を案じるように目を伏せた。しかし直ぐに気持ちを切り替え、空に浮かんだ帝国の空母を見据える。

「しっかり捕まっておれ。突撃するぞ……!」

「お手柔らかに」

 ヴェルファイアが咆哮と同時に炎のブレスを放出する。熱線は空母へと直進し、途中に浮かんでいた自立機動平気を薙ぎ払っていく。空母の周辺に展開されている魔力障壁へと直撃した攻撃は一発で障壁を貫き、外郭を爆破する。龍は全身から炎の弾丸を一斉に放出し、近づく機動兵器を迎撃しながら空母へと突っ込んでいった。
 障壁を貫かれたその一瞬の隙をついてカタパルトの上に着陸し、ヴェルファイアは両腕を振り回して付近にあった機動兵器を片っ端から叩き潰していく。その最中ゲオルクとミュレイはその場から飛び降り、風が吹き荒れる甲板の上で周囲を見渡した。

「一度取り付いてしまえば他の空母も攻撃出来まい。ふん、容易いのう」

「さて……動力を破壊すれば落ちるか……?」

「中途半端に壊すと市街地に落下する恐れがある。出来れば面倒じゃがコントロールルームに行って乗っ取りたいところじゃな。後々使えそうじゃし」

「じゃあ俺とミュレイはコントロールルームに……」

「ヴェルファイアは他の空母を攻撃してもらうかの。おーい、そういうわけじゃからここはもういいぞ。向こうを頼む」

 返事をするように龍は吼え、大空に再び舞い上がった。わらわらとカタパルトに沸いてくる機動兵器たちが一斉にミュレイに銃口を突きつけるが、姫が魔剣を振るった瞬間その足元が同時に盛大に爆発し、カタパルトは崩壊――。機動兵器だったものはすべて残骸へと成り果てていた。

「フ……容赦ないな」

「機械相手に情けは無用――。往くぞ、ゲオルク。久方ぶりの戦場じゃ……楽しみながら、な」

「了解した、炎魔の姫よ」

 ゲオルクが魔剣を展開し、それを肩に乗せて構える。ミュレイはふわりと浮かび上がり、舞うようにして移動を開始する。二人の前に再び大量の機動兵器が溢れ返るのだが、どちらも気にする気配はない。ミュレイは口元に優しく笑みを作り、再び呪詛の言葉を紡ぎ出した――。
 空に浮かぶ空母の一つで大爆発が起こった頃、昴とウサクは市街地への突入を果たしていた。街のあちこちで帝国騎士団による攻撃が行われており、それはただの一般市民をも巻き込む戦争へと発展していた。
 たまたま街に滞在していた旅人だろうが商売人だろうが、一切合切区別無く騎士団は皆殺しにして行く。過去何度か戦場になった事のあるローティスの街だったが、ここまで無差別な攻撃が行われる事は今まで無かった。ターミナルへと逃げ込んできた幼い少女へと帝国騎士が剣を振り上げた時、白騎士はその剣を振り上げた騎士の腕を魔剣で切り飛ばしていた。
 悲鳴が上がる中、無言で時を停止し斬撃を放つ。瞬く間にその場に居合わせた騎士たちが全員ズタズタに切り裂かれ、何が起きたのかわからないうちに倒れていく。騎士の返り血を全身に浴び、白騎士は少女へと振り返った。

『…………知っていたさ、そんな世界だって事は』

 少女は何も言わず、震えながら白騎士を見つめていた。ウサクが少女をターミナルの奥へと逃がし、白騎士に駆け寄る。市街地は燃え上がり、砲撃で建造物は崩れ、騎士団による無差別殺戮が繰り広げられている……。各地で反帝国ギルドが抵抗しているものの、戦力差は圧倒的。状況は絶望的だった。

『行くぞ、ウサク。余計な物には手を出さず、バテンカイトスを目指す……』

「……承知したでござるよ」

 二人がバテンカイトスを目指し移動を開始した頃――。表の顔である、娼館バテンカイトスのエントランスでは激しい銃撃戦が繰り広げられていた。反帝国組織はそこにバリケードを作り、銃撃で騎士たちに応じている。その中にはライフルに弾丸を装填し、疲れた様子で作業を繰り返すアクティの姿もあった。
 すべては予告無く、突然行われた――。なんでもない平日であるはずのこの夜の中、突然帝国の空母からの砲撃が降り注いだのである。街はパニック状態に陥り、一斉に機動兵器が投入されてきた。続けて帝国騎士団がどっと押し寄せ、あっという間にローティスは戦場と化してしまった。たまたまバテンカイトスの中に居たから良かったものの、外に居たら自分もどうなっていたか判らない……。そう思うと胸が張り裂けそうな思いだった。
 少女はライフルを構え、それを連射する。机とテーブルを組み合わせた簡易バリケードはいつまで持つかわからない。対魔剣使い用に開発された特殊弾頭ならば、機動兵器にも十分効果がある。アクティは後方からそっと狙撃を行い、入口から入ってくる機動兵器を破壊し続けていた。
 一体もうどれだけの数を破壊したのかわからない。どれだけの間戦っているのかも判らない。だがここを突破されたらこの街は終わる――その気持ちが少女の片隅にあり、絶対に引くことは出来なかった。
 バテンカイトスそのものは異空間に存在している為、娼館としてのバテンカイトスを破壊したところで別段ギルドは痛くも痒くもない。しかしこのバテンカイトスを帝国が攻撃しているのにはきちんと意味があるのだ。
 町全体の無差別攻撃も含め、帝国は示している。“ギルドに加担する街は容赦なく破壊する”という意思を――。ギルド側はそれに対し、抵抗する意思をみせなければならない。街を護らねばならない。そうしなければ世論はギルドの正義を肯定しないし、ギルドに誰も関わろうとは思わなくなってしまう。帝国が強攻策に出た時点でギルドの対応は詰んでいるも同然だった。しかしそれでも、抵抗し人を救わねばならない。それこそ反帝国ギルドが……少なくともアクティ・ノーレッジという少女が望んだギルドの形なのだから。
 だが空しくもバテンカイトス内部では話が纏まらず、このままローティスを放置するという意見が過半数を超えていた。ローティスを護るという事は、要するに死にに行くという事と同義である。無差別攻撃は確かだったが、それにより帝国の目論見通りギルド組合は瓦解、そしてバテンカイトスから戦力を引きずり出す事に成功したのである。
 ここで戦っても仕方が無いと、勝ち目がないと……そんなことはわかっている。だが目の前で殺される人をどうして見過ごせるだろう? 戦う仲間をどうして見捨てられるだろう? アクティは出来なかった。ライフルを握り締め、ただそれだけの力で戦う。もう、これ以上仲間を失うのはうんざりだったから――。

「ヴァンがいてくれたら……こんな時、どうしたかな……」

 過ぎてしまった事を、ぽつりと呟いた。ヴァン・ノーレッジは死んだ……。生きていたとしても、あれは最早少女の知るヴァンではない。もう、あれほど頼りになった兄貴分はいなくなってしまったのだ。ギルドの瓦解には魔剣狩りが討たれた事も十分理由として響いているだろう。アクティは彼が抜けた分、その穴を補わねばならない。そう、あの日彼を救えず、連れ戻せなかった罰として……。
 あんなに明るく元気だったうさ子を刺し殺し、闇と殺意に呑まれたヴァン……。元々憎しみを抱えてはいたものの、あそこまで凶悪な人間ではなかった。孤児だったアクティを助け、育てるくらい優しい男だったのだ。
 どうしてこうなってしまったのだろう……。どこか遠い目線で自分自身を眺めていた。疲れた――そう呟きたくなった。ライフルを握る手に力が入らない。もう、どれだけ仲間が残っているのかも判らない。
 バリケードへと機動兵器が砲弾を撃ち込み、その衝撃でアクティは派手に吹っ飛んだ。螺旋階段へと頭をぶつけ、その痛みに悶える。既に入り口は突破され、仲間たちの肉片とバリケードの破片が無残に飛び散っていた。最後列で狙撃だけしていたアクティは偶然助かっただけ――。次々に沸く機動兵器の銃口が少女を捉える。もう、死んでしまった方が楽かもしれない――そう考えた時であった。

「アクティ、下がりなさいっ!!」

 聞きなれた声が響き渡り、背後から人影が二つ――。既に魔剣を装備したブラッドとリフルであった。リフルは二対の剣を組み合わせ、楽器へと形を変えてそれを構える。ブラッドは細長い形状をした剣を片手に機動兵器へと突っ込み、魔剣を振り上げた。
 襲い掛かるブラッドに当然銃撃による迎撃が繰り出された。しかしリフルがメロディを奏でると同時にブラッドの身体の周囲には結界が浮かび上がり、弾丸を弾き返してしまう。ブラッドはその隙を衝いて次々に機動兵器を切り裂き、前線を押し戻していた。
 直後、その攻撃している機動兵器を切り裂きながら白騎士が飛び込んでくる。ブラッドと白騎士は互いに視線を合わせ、敵同士であることを認識し――しかし互いの背後に隠れていた敵を切り払った。二人は背中合わせに剣を構え、白騎士は静かに呟いた。

『助太刀する』

「……アラ? 剣誓隊の白騎士さんが、どうしてかしら?」

『理由は後だ。空母はミュレイが攻撃している。もう少し、持ち堪えてくれ』

「…………そういうことね。なら、お言葉に甘えて――ッ!!」

 二人が同時に魔剣を振るう。奇妙な共同戦線が展開される中、起き上がったアクティは前髪で隠れた瞳でじっと白騎士を見つめていた。構えるライフルの銃口――それは白騎士を捕らえている。

「白騎士……!」

 少女の頬を涙が一筋伝った。震える指先を引き金にかける。そう、すべては白騎士の所為――。あれが襲ってこなければ、ヴァンは……。ヴァンは、あんなことにはならなかった。
 悲痛な思いはリフルが気づくよりも早く放たれる。弾丸がまさか背後から放たれるとは思って居なかった白騎士は振り返りつつ、その顔に銃弾を命中させた。紅く血が弾け、騎士の身体が揺らぐ。駆け寄るウサクがその名を叫び、戦場にまた一つの悲劇が響き渡ろうとしていた――。
~はじけろ! ロクエンティア劇場~

*もう50部ですよ*

ホクト「早いよなあ~~~~~~~!」

昴「こんなペースで連載してていつ終わるんだろうこの話」

ホクト「三月には終わるだろ、多分」

ミュレイ「まあ、半分以上は進んでおるじゃろうしのう」

ホクト「あれだけノープランでテキトーに始めたわりにはよくやってるぜ」

昴「そろそろ、ホクトの記憶喪失の謎とかが明らかになりそうだね」

ミュレイ「ひっぱりすぎじゃろ……」

ホクト「しかし……すげえダラダラした小説だけどよ、もうちょっとメリハリつけられなかったもんかと今更ながらに思う」

ミュレイ「本当に今更じゃな」

昴「まあ、アルティールが結構良く纏まってたから尚更ね」

ホクト「んー、ザルヴァトーレ戦まで行けばそこそこ盛り上がるか?」

ミュレイ「盛り上がっても寸止めになるじゃろうが、いつも――」
おなじみのアンケート設置しました。
剣創のアンケート
一位(真)


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