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パルクール・サバイバーRe:System 作者:桜崎あかり

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限界なんて打ち破れ(前編)

 遂に16人の選手がスタート地点から直線コースへ進み、午前11時にレースが始まった。
ここに至るまで1時間の遅れが発生、更にはコースに不審者が侵入、その他のエリアで事件が発生して安全の確保をする等のアクシデントが多発……。
それでもレースは中止にしなかった理由は様々で、運営側の意地、コースの交通規制が遅れた、妨害活動の発生等がネット上で言われている。真相に関しては発表がないので、今の段階では不明のままだが。
『それでは、コース説明の前に今回のレースで追加された特別ルールについて説明しましょう』
 運営のテントとは別に実況席がアンテナショップ内に設置され、そこでは実況担当の太田氏がきていた。しかし、その姿を見る事は出来ず、謎の人と言う扱いなのは変わりない。どうやら、テントでの実況を断ったのには別の理由がありそうだが……。
『今回のレースは通常のコース2周ではなく、3周行う特殊ルールとなります。もちろん、コース途中でのガジェット停止は即時リタイヤ、設置トラップや選手のリタイヤを前提とした戦闘行為及び進路妨害は認められておりません』
 次の説明に入る前にメインビジョンには監視カメラの映像と思われる画像が表示される。これは、何を意味するのか――と思ったが、そこで太田氏の説明が入った。
『既に複数の箇所で監視カメラ、更には飛行型ドローンによる空中撮影も行っております。仮に不審な行動が確認された場合、バイザーに警告メッセージが表示され、スリーカウント以内に行動を中止しないとペナルティを取られます』
 設置トラップ、選手のリタイヤが目的の戦闘行為、故意と判断されるガジェットの物理破壊行為、コンピュータウイルスの散布、第3者を利用した妨害行為等、違法ガジェットの使用がモニターに表示されている。
『これらの行為が確認、その行動がリタイヤに相当する場合はペナルティが課されます。1回の反則で50%のポイント減額、2回目は75%、3回目は1位となってもポイント加算は行われません。これは、下位ランカーにとっては致命的なものになるでしょう!』
 レースの方は直線コースを通過し、右の交差点へ向かうのがセオリーである。しかし、このレースはパルクール・サバイバーであり、ショートカットは認められている。
実際、先頭を走る複数選手と同じルートを通る選手は少ない。直線で勝負可能な選手は、ショートカットを逆に行わない方が手数と言う意味でも有利になると考えているらしい。
4号線の直線コースを指示通りに曲がると、再び直線コースである。コースに障害物が設置されているような気配がなく、ある意味でもモーターレースを思わせる。先頭の集団は4名いる。
それを追跡しているのは6番の緑ガジェット、種田提督、蒼空かなでの3人。それに遅れる形で4人程度というグループで構成されている。その内の1人も直線途中でショートカットを発見し、そちらのコースへと向かってしまったのだが……。
『コースのショートカットに関しては、設定されたコース内では特に問題はありません。しかし、コース外へ出た場合はバイザーに警告メッセージが表示、その後に20カウントが表示されます。それまでにコース復帰すれば問題はありませんが、20カウントを越えた場合はリタイヤ扱いになります』
 コース取りに関しては設定されたエリア内であれば自由だが、それよりも外に出ると場外扱いになる。この判定に関してはレースによって異なるのだが、今回は場外扱いの場合はリタイヤという判定にしているようだ。
『なお、場外に出た状態で強行突破はできません。場外に出た場合はスコアのカウントもストップし、レースにも不利な状態になるのは確実でしょう――』
 この仕様に関しては、順位次第では逆転可能な位置にいる選手に対しては致命傷なのは間違いない。上位ランカーでも置きレースを展開すれば、逆転をされるという証拠でもある。
「既に数人がショートカットを使うとは」
 先頭の重装甲戦車を思わせるアーマーの選手、彼は周囲の状況を見てショートカットをするのは不利と判断していた。
結論を言うとショートカットは可能、しかし、重装甲系ガジェット等ではうまく立ち回れない程にコース幅が狭いというのがある。
当然のことだが、建造物の破損及び破壊はスコアペナルティが入る為、いくらAR技術で表示されたCGとはいえ、無茶をすれば自爆する事もあり得るのだ。
「後続メンバーには松岡提督がいるのか。3周戦に加えてロングコースと言うのもある―」
 1周でも若干の中距離コースを走る事になり、それを3周である。
通常のサバイバーでは3キロコースを2周という設定が多く使用されているのだが、それを踏まえると今回のコース構成は長いと言っても過言ではない。
しかし、今回のコースはランカー王でも同様の長距離コースを走る事になり、それを想定してペース配分をする事が重要とも言える。
一方のショートカット組は順位争いに気を取られた為に重要な事を忘れていた。
コース幅が狭くなっており、ランニングガジェット2体半位の幅である。自動車であれば1台分という狭い道であり、本来であれば学校の通学路で使われるような道だ。
「なんて事だ! コース幅も考えずに突っ込んでしまった結果が、この――!?」
 軽装+バーニアユニット装備の選手が足止め状態になり、引き返そうとするのだが―その目の前には他の選手も追いかけている所だった。
そして、複数選手による激突に発展すると思われたのだが、ガジェットのセーフティーシステムが機能した事で大事故には発展しなかったという。


 今回のレースは様々なエリアで中継されており、アンテナショップだけではなく――。
「コース取りのミスをするなんて、スコア争いに気を取られ過ぎた結果ね」
 喫茶店でカツカレーを食べながら中継を視聴している人物がいる。彼女は黒髪のロングヘアーに美少女と思わせる顔だったのだが、赤をベースにしたガジェット用インナーを着ている段階でお察しだった。残念な美女ではないのだが……。
ちなみに、彼女はカツカレー以外にも何かを注文しようと考えている気配があった。
「赤城さん、何を見ているのですか?」
 一方の女性は紫の提督服に懐中時計を思わせるペンダント、身長は赤城よりも若干低い170ちょっと。体格もスリム路線よりはぽっちゃり体型に近いかもしれない。
彼女の目の前にはオムライス、マヨネーズ抜きのハムサンド、コーヒーが並んでいるのに対し、赤城の方はカツカレー以外にも注文しているような皿の置かれ方が特徴だった。
「何って、北千住でやっているレースよ。このレースの勝者がランカー王にリーチというレースってネット上でもあったから、見ているのよ」
 カツカレーを口にしながら、赤城は喋っているのだが――。一方の彼女は食べるか見るかのどちらかと言いたそうな表情をしている。
「それに加賀、あなたはどうしてパルクール・サバイバーにエントリーしなかったの? あなたもレース系のARゲームでトップランカーでしょ?」
 赤城は加賀に指を指して説教をする。加賀はパルクール・サバイバーへ参戦せず、赤城と一緒に昼食を食べている。事情は色々とあるようだが……。
レースが始まったのは午前11時なので、昼食と言うには少し早い時間である。しかし、2人が北千住へ足を運んだのは単に観光と言う訳ではない。
「私がプレイしているARレースはカーレースのカテゴリーです。パルクール・サバイバーは、どちらかと言うと長距離+障害物競走。それに、私の体力があなたより低いのは知っているでしょう」
 対する加賀もオムライスを口にしながら話す。その後、コーヒーを飲んで少し気持ちを落ちつけようとするが、そうはいかないだろう。


 その頃、レース観戦用のスペースで今回のレースを観戦しているライバル選手も多数いる。
「直線取りをしているメンバーも、ランカーやネームドはいなさそうだ」
 最初の直線コースで他の選手を確認している人物がいる。彼女はパーカーで意図的に顔を隠し、フライドポテトをつまんでいた。パーカー以外には、ジーパン、スニーカー、パソコンを入れているカバン位しか特徴が見当たらない。
「松岡提督はコースを熟知している選手。そう簡単には負けないでしょう」
 パーカーの女性に対し、慢心は禁物と指摘しているのは白いインナースーツにジャケットを着込んでいるポニーテールの長身女性。彼女も、サバイバーの選手なのは間違いない。
「暁、無名のランカーと侮れば……負けるのはお前だ」
 暁と呼んだ女性を指摘していたのは、ラフな服装に着替えていたヒデヨシだった。彼は既にナイトメアとしての活動は終了しており、残るは後始末だけと言う状況でもあった。
「そんな事はない。この私が慢心するはずが……」
「そこまでにしなさい! 霧島、暁」
 パーカーの女性は暁、インナースーツの人物は霧島……2人に手を叩いて落ち着くように指示したのは、何と遠藤提督だったのである。
「遠藤提督、サバイバー運営に戻らなくていいのか?」
 ヒデヨシの一言は、確かにその通りだった。しかし、今は運営の方も慌ただしくなっており、少し席を外した程度では言及される事はないだろう……という判断による物だった。
「それよりも、ヒデヨシの方は別勢力に顔が割れている。危険なのは貴方のはずよ」
 コーラを口にしている遠藤提督の言う事も一理あった。元チート勢力のナイトメア……それが提督と一緒にいる場面を見られた場合、他の勢力に炎上のネタを与えるような物だ。
「ナイトメアを悪用しようと言う連中など、いくらでもいる。それをおびき出す為の後始末も必要だろう」
「後始末?」
「チート勢力は解散をするという事だ。既にネット上で情報が拡散している。これを消火と偽って悪用するフジョシや夢小説勢を表舞台に引きずり出せれば……作戦は成功だ」
「そう言う事なのね」
 しばらくして、遠藤提督に召集指示が出たので、ヒデヨシとは途中で分かれたが……その後、彼が何処へ向かったかを知る者はいなかった。


 レースは1周目の山場に突入する。商店街を抜けると、先ほどのスタート地点へ戻る。先頭グループに変動はないのだが、下位グループの方には変化があった。
『先ほど、4名のリタイヤが確認された模様です。どうやら、コース取りを誤った事による衝突と運営に情報が入っている模様です』
 リタイヤの情報に関しては、大田の方にも伝えられた。残るメンバーは12人。その中には種田提督、蒼空も残っている。
「ランカー王には興味はないが――ここら辺が潮時か」
 先頭グループの戦闘機を思わせるブースターとガジェットを扱う傭兵の男性が動き出す。
重戦車の選手を追い抜き、一気にトップとなって2周目に突入するはずだったのだが、突如としてシステムにエラーが表示され、機能が停止したのである。
『これは大変な事になりました。先頭グループの一角が、まさかのシステムトラブルでリタイヤの模様……しばらくお待ちください』
 途中まで実況した太田だが、何かの情報をタブレット端末で入手したらしく、途中で実況を止める。
これには運営側にも緊張が走った。彼の耳に情報が漏れている可能性を心配していた事もあるのだが――。


『これは大変な事になりました。先頭グループの一角が、まさかのシステムトラブルでリタイヤの模様……しばらくお待ちください』
 5月5日午前11時3分、2周目に突入しようとした矢先だった。先頭を走っていた選手が突如としてストップし、リタイヤに。これには周囲も騒然となっていた。一体、彼のガジェットに何が起こったのか?
「レースは続行する。おそらく、これを仕掛けた犯人は超有名アイドル勢の仕業と見せかけようとしているはずだ」
 この状況を見て、レース続行を指示したのは総責任者のガレスである。一体、何故に続行を指示したのか? これには様々な憶測が提督の間にも広まる。
「何故、そうと言い切れる? あの証拠だけでは手を組んだと言うには弱いはずだが――」
 試合を観戦している中村提督は、上着を脱ぐことはなかった。その一方で、別の白い提督は上着を脱いでいるメンバーもいる。
「トラップと言う意味では、超有名アイドル勢に見せかける必要性のある事を踏まえると――?」
 ガレスは話の途中で何かに気付き、即座にスマートフォンである人物へと連絡をする。
「一体、何に気付いた?」
 中村提督も気になる所だが、今は別のターゲットも気になる為に部屋を出ていく。それとは別に白い提督が中村提督とすれ違ったが……。
「例の反応があるかどうか確かめて欲しい。それだけで構わない」
 ガレスは特に固有の単語で説明することなく、電話をかけた人物に一言伝えるだけで電話を切った。向こうも、それで把握しているらしい。
先ほどの白い提督は書類を渡す為に来たらしい。そして、タブレット端末をガレスに渡して「書類が入っている」と言う事で、データのダウンロードを誘導する。
しかし、ガレスは何かがおかしいと即座に気付いた。次の瞬間には、ARガジェットのビームサーベルを白い提督に向けている。
「わざわざ、ここまでやってくるとは。BLが日本経済を救うと言う世迷言を、まだ信じると言うのか?」
 白い提督の不審な動きに対し、ガレスは偽提督の正体を見破っていた。そして、正体を見破られた提督は服を脱ぎ捨てることなく入口から部屋を出ていく。
「中村提督、今の人物を取り押さえろ! もしかすると、真犯人の事を知っているかもしれない」
 しかし、ガレスの言葉を中村提督は聞き入れなかった。それでも、白い提督の追跡は行うようだ。
「それにしても、このタブレットを置いて行くとは――?」
 別の緑の提督服を着た男性がタブレット端末のデータを開くと、そこには極秘資料と書かれたファイルが複数発見された。
しかし、ファイルの中身は自動的に消滅、証拠を残さないという事なのかもしれない。
「やっぱり、そう言う事か」
 消滅したファイルを復元させる事は出来ないが、この人物が持ち歩いていたファイルは自分のタブレット端末へコピーしていた場合、他のデータも巻き添えで消える可能性があったのである。
【アカシックレコードの存在否定に関する考察】
 緑色の提督は気になるファイルを端末から発見、そのタイトルをガレスに見せる。そして、数秒の思考後に何かの結論に至った。
「これは、もしかすると――。レース関係及び警備班以外の提督は草加市のサーバー施設へ向かえ! 今すぐでは向こうに気付かれる可能性があるが――」
 ガレスの指示で運営スタッフ、運営警備、レース担当以外の提督は草加市にあるというサーバー施設へと向かう事になる。しかし、ガレスは何故に草加市を指定出来たのか。
実は、これには理由があった。中村提督が草加市へ向かっていた事もあるのだが、アカシックレコード関係の情報が草加市に集まっているという噂もいくつかあり、その仮説を立証できる証拠も発見されていたからである。


 午前11時5分、結局はレースの中止はせずに続行と言う事になり、他のメンバーは2周目の直線コースへ突入する。残りメンバーは11人、この中にもしかすると犯人がいるかもしれない……という考えが一部メンバーの心によぎる。
「まずは中止等を考えず、レースを完走する事を優先する」
 蒼空は完走を優先するようだが、現状のレース中に損傷したガジェットで完走できるかは分からない。
最後の直線に入る前のカーブ、そこで蒼空は判断ミスによってバーニア一部と左肩アーマーを損傷する。障害物への衝突ではなく、意図的なガジェット破壊狙いによる攻撃でもない。単純なスリップであった。
「あの時の判断ミスがガジェットの損傷を招いた。現状でも完走は可能だが、次に同じような損傷を受ければ―」
 ピットでの修復と言う概念は、今回のレースでは存在しない。特殊ルールで回復アイテムを回収可能と言う者もあるが、今回は適用外の様だ。
その為、今回のレースに限って言えばランカー王を目指すプレイヤーにとっては、ある意味でも練習コースとして使える構成になっている。


 一方でレースの続行に対して動揺している選手は1名だけ存在した。それは、グレーをベースにした軽装ガジェットの選手である。戦闘機タイプなのはリタイヤした選手と同じだが、ブースターのシステムは別物を使っているらしい。
「あの連中は失敗したと言うのか。結局、BL勢や超有名アイドルと同様と言う事か」
 彼女の言う『あの連中』が誰なのかは不明だが、BL勢及び超有名アイドルと同類と考えているらしい。
そして、バイザーに表示されているマップを拡大表示から縮小表示に変更し、そこから最短ルートで先頭グループを追跡する方法を考える。
しかし、トラックを回るような正規ルートに対し、ショートカットは色々な意味でも難関である。リタイヤした選手が、その証拠でもあった。
ビルを駆け登る、川を飛び越える、建造物の屋上ルートと言う難易度の高い物ばかり。飛行に関しては禁止の為、それ以外の手段でショートカットを行う必要があるのだが…。
「仕方がない。正規ルートを途中まで利用し、ビルを飛び乗るコースを使うか」
 彼女は過去にパルクールのアマチュアチームにいた事がある。
秋月彩程ではないが、体力などにも自信がある方だ。その彼女が取ろうとしていたコース、それは――。


 2周目最初のカーブ、そこで彼女は右カーブではなく、500メートル弱の直線距離をそのまま進む。このコースは裏コースで設定されている物で、コースアウトの部類ではない。
コースアウトに関しては制限が厳しいのだが、こうした事前に発表されていない隠しルートに関しては特に制限が存在しない。その大きな遠回りになるコースをどのようにして逆転へつなげるかは、選手の技量次第だが。
『これはどういう事でしょう? 青葉選手、先頭グループがカーブしていく中、唯一の直線を走っております』
 この様子を見た実況の太田も驚いていた。彼女、青葉の取ったコースは裏コースであり、コースアウトのカウントは取られない特殊コースでもある。
「なんだと!? あいつ、無茶なコース取りを行う気なのか?」
 実況の声で状況を確認した別の選手は、今からコース取りを変更する訳にも行かず、右カーブ後は直線コースを左寄りで走って様子を見る。その異変に気付いた先頭グループに関しては、特にコース取りを変える気配はない。
「軽装ガジェットを甘く見ないでよ!」
 直線距離後、青葉の目の前には右折看板で「この先右折」と書かれている。
そのコース通りに行くと、予想通りだが直線距離にホームセンターの駐車場が見えた。駐車場の坂道を越えると、コースを示す看板には直進可能という文字がミエルのだが……。
そして、青葉は直進通りに進み、短距離ジャンプを試みるが、ジャンプの加速が足りないのか――彼女の手はこの先にあると思われるコースに手が届かない。
「私は秋月彩とは違う! あいつみたいに限界を決めたりしない!」
 青葉は意地でもコースを突破しようと考え、両肩のビームワイヤーを射出、アンカーをコース上にある特殊な障害物に固定、ワイヤーを戻しながらコースをパワープレイで突破しようと考える。
「そんな事って――?」
 アクシデントは、そこで起こった。青葉のビームワイヤーが突如として消滅したのである。ワイヤーの消滅が意味する物、それは命綱が切られたのと同義である。このまま3階建ての駐車場から転落してしまうのか?
『これは予想外の出来事です! 青葉選手のビームワイヤーが突然消滅、3階の駐車場からそのまま青葉選手が落下していきます。万事休すか!?』
 このままではレース中に怪我人という問題では済まされない。下手をすれば、パルクール・サバイバーも終わってしまう。その中で動きを見せた人物、それはオレンジ色の小型ロボットを思わせるランニングガジェットだった。
彼に関しては選手と言う訳ではなく、通りすがりのようにも見える。
「大丈夫か?」
 この声を聞いた青葉は、まだ生きていると安心をする。しかし、レースの方はガジェットの起動停止によってリタイヤになった。
一方のオレンジ色のガジェット使いも、本来であればランニングガジェットのレース外使用と言う事で運営から指摘が入る。
『あなたの行った行動、本来であればランニングガジェットの用途外使用でライセンス停止は免れない。しかし、今回は選手の命を救ったという事で特別に咎めはしないわ』
 遠藤提督はオレンジ色のガジェット使いに専用回線で連絡を入れる。
「ARガジェットの前身は人命救助を目的としていた。これが、本来の使用用途のはず――」
 オレンジ色のガジェットは、その一言を残して何処かへと姿を消した。
一方で、アクシデントを全く気にせずに突き進むのは蒼空だった。ガジェットの方はバッテリーに問題はないが、下手に出力を上げれば止まる事は確実だろう。
「第2カーブまでは特に問題なく進めている――?」
 蒼空の目の前には先頭グループが見え始めている。しかし、それとは別に2つの反応が自分の背後に迫っている。片方はデータを見ると種田提督のようだ。
「もう一方は衣笠?」
 名前を聞いた事がない選手が、種田提督と一緒に先頭グループを捉えようとしている現実に驚いていた。名前は衣笠、青葉と同じアマチュアの女性パルクールチーム出身でもある。
「パルクールとパルクール・サバイバーは違う。それを何とかして証明したい!」
 蒼空は他のARゲームでの知識がほとんど役に立たなかった現実をパルクール・サバイバーで知った。それと同じ事はアスリートでも同様であり、それはパルクール経験者にも当てはまるはずと――。
だからこそ、彼はサバイバーの世界に興味を持ち、そこで一からやり直そうとも思っていた。
「サバイバーの聖地は、守らなくてはいけない!」
 蒼空が無心で叫んだ言葉が、ランニングガジェットに反応し、突如として青い閃光を放った。
この状態は教習所の講習でも余談と言う形で聞いた事がある。
「ランニングガジェットには、特定のキーワードに反応するブラックボックスが存在します。ただし、そのキーワードは未だに判明しておらず、むやみにブラックボックスを発動する事も禁止されているのが現状です」
 確か、担当になった提督がこのような事を言っていたような気がする。
ブラックボックスの存在自体はネット上でも言われており、それがアカシックレコードと言う説も浮上していた位だ。
【アカシックレコード、アクセス開始します】
 閃光を放つランニングガジェット、蒼空のメットに表示されたメッセージ、それはパルクール・サバイバーが他のARゲームと決定的に違う箇所を露呈させる展開となったのである。

+注意+
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