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パルクール・サバイバーRe:System 作者:桜崎あかり

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エピソード1


 西暦2017年4月1日午前10時、東京都足立区内の至る所にある特殊な形状をしたモニターが、一斉に何かのプロモーションビデオを流し始めた。
モニターには特殊な液晶が使われており、傷がつきにくい構造になっている。モニター以外の部分でもゲーセンに置かれているセンターモニターを連想させるデザイン等もあり、一般の通行人が足を止めるのも納得である。
『疾走せよ、新たなるロードを!』
 女性声のナレーションが流れた後に映し出された物、それは重装甲のパワードアーマーと見間違えるような装備をした人物だった。これを見た周囲のギャラリーは驚くしかない。
新作ゲームの発表にしては、ゲーム画面と言うような雰囲気を感じない。逆に映画のプロモーション映像とは違って字幕等が表示される様子はない。
装着しているパワードアーマーの外見はSFを連想させるデザインで、初見ではこの人物が男性なのか女性なのかは見分けがつかないだろう。
右腕にはタブレット型パソコンのような機械が装着されており、左手で画面をタッチした瞬間にモニター部分には足立区内の地図が表示された。これを見てパソコンの新製品CMと思った人もいるようだが、CMには続きがある。
『初心者でも大丈夫。運営公式で行われているライセンス講習会で、ルール等をしっかりと教えます』
 ナレーションで講習会の事に触れた後、右下にワイプで講習会の写真が紹介される。
感覚としては、自動車免許を取るのに近いだろうか。どう考えても自動車免許とは例え話であり――それすらも超越した物なのは間違いないが。
そして、地図を確認後に画面上の人物はナビの示した道路の方角へ向かって唐突に走り出す。
『君たちの可能性が、コンテンツ業界に新たな旋風を呼ぶ!』
 次のシーンでは、重装甲の人物が信じがたいような動きで高速道路を走る姿が映し出されていた。
それ以外にも映像の中には公園内、市街地、更には工場街やビルの内部もマラソンのコースにしているシーンもあり、スーツのカスタマイズも自由、スポンサー契約も可能、地域振興プロジェクト等の文章も表示されていた。
これを見て、誰もが映画の撮影や新作ゲームのプロモーションと疑わなかったのだが、その考えは次の瞬間に崩れ去る事になる。
『君も始めてみないか?』
 ゴールと思われるショッピングモールに到着した人物は、台詞の後にメットを外して素顔を見せた。その正体は何と女性である。これには、映像を見ていた人物からも疑問の声が上がった。「CGではないか」という声もあったが、実写に近いCGを作るにしてもマイナースポーツの宣伝で使う訳がないと一蹴される。
彼女はアーマーを外す事はなったが、バックパックユニットをパージして背伸びをする。最後にはカメラ越しに一言―。
《パルクール・サバイバルトーナメント、エントリー歓迎。今すぐ登録を!》
 最後にはエントリー募集ページのURLと募集専用のメールアドレスも表示。30秒の中で流れた莫大とも言える情報量、それは一般人からしたら理解不能とも言えるような世界だったのは間違いない。
「これがヲタク文化か」という一言が出てくる位には内容が色々と超越していたのだろう。
パルクールに関してはヲタク文化と言う訳ではなく、海外ではスポーツとして成立している国も存在している。
そう言った事を踏まえてか、別のカテゴリーに分けられている印象を受ける発言に関し、今すぐ取り消すようにギャラリーの胸倉をつかもうとした人物も実際にいた。


 そして、CMの動画が終わり、別のデモムービーが流れ出す。こちらのデモ映像はARゲーム関係だが有名アイドルを起用している物で、ゲームよりもアイドルの方が主役と言う気配もする。
動画が始まる頃には足を止めていた野次馬は半数以上が姿を消していた為、このデモを見ているのは一握りの足を止めたギャラリーのみだった。
有名アイドルには興味がないのか、別のCMが流れたからか真相は不明である。
 先ほどのCM自体は以前にテレビでヘビーローテーションしていたCMを別編集した物であり、内容自体はテレビで放送された物と変わらない。
動画サイト等での視聴用として細部を調整、改良を行った物が今回の動画となっていた。
【今、この世界は超有名アイドルによって制圧されようとしている。正しいコンテンツ流通の為に――】
 別のCMが流れた後、このメッセージが更に別の商品CMで流れていたのだが、そのメッセージを見ている頃にはギャラリーは指折り数える程度になっていた。
通りすがる人はいたが、足を止める事はなく通過してしまう。
無視しているというよりは、興味がないCMに目を向ける視聴者はいないという事だろうか。
【パルクール・ガーディアンは正しいコンテンツ流通の為に、超有名アイドル依存をする政党と戦い続ける――】
 このメッセージが流れると同時に、ある人物が足を止めた。その直後、彼女が起こした行動にギャラリーが集まったのだ。
その女性の外見は一般人のファッションとは若干かけ離れており、その服装を見て即座にARゲームのプレイヤーと察する事が出来る。
ARゲームのプレイヤーの風当たりは良い物ではなく、逆に超有名アイドルファンの株を上げるだけのかませ犬という扱いをするネットユーザーもいる程である。
「政党と戦う? 今の政治は超有名アイドルのご機嫌を取る為に存在している。そんな政治に価値を付ける資格すらない!」
 一人の女性がSFで見かけるようなビームライフルをモニターの人物に突きつける。
モニター映像の宣伝文が納得いかないというには――やる事が物騒であり、その口調も過激派程ではないが強い口調だったのもギャラリーが敬遠した理由かもしれない。
それを見たギャラリーの一部は即座に止めようとしたが、彼女の持っている銃を見ておびえているような人物が多い。
しかし、彼女が持っている銃が火を吹く事はなかった。ついでに言えば、ビームを放つような物でもなかったのである。
それもそのはず――彼女の持っているビームライフルはARガジェットと呼ばれるARゲームで使用する端末及びコントローラだ。
ARゲームが行われていないフィールドでは、変身ヒーローのなりきりグッズの形状をしたタブレット端末か何かとしか認識されない。
中には、返信ヒーローのベルトなどを本物の様に改造し、ARゲームで本当に変身したように思わせる――そんな二次創作に近い遊び方も確認されていたが、詳細は不明だ。
「超有名アイドル依存をなくすという動きは、パルクール・ガーディアンでなくても出来るはずだ」
 ストレスをためていたような表情を見せた女性は、捨て台詞を残して何処かへと姿を消してしまった。
この人物に関してネット上では写真がアップされ、反超有名アイドル勢力が叩かれるという展開になる。
実際、問題人物なのは間違いなかったので即座に炎上するのは目に見えており、それを踏まえてネットを炎上させようとする勢力が利用した感じもした。


 サバイバルトーナメントに関して、ウィキ上では西暦2013年後半から2014年にかけて大きな動きがあった。スポーツ紙によると『パルクールが日本でブームとなった』と言う事が報道された事である。
当時の記事によると、パルクールとは「移動の動作を基本として、自然な精神的な強さを得る為の手段」と言う事と簡略説明がされており、それを日本国内で整備して行っている事が取り上げられたらしいのだ。
 西暦2013年に国際スポーツの祭典で、日本が2020年夏開催の権利を獲得した事で盛り上げようという熱が上がり、新競技に水生する動きまで水面下であったと言う。
しかし、こうした動きに関してスポーツ専門家も困惑した。
「コースを整備するのに予算がかかる」
「第一、エクストリームスポーツを世界中の選手が集まる大会に採用する事は、非常にリスクが高い。仮に転落事故でも起きたら、それこそ冗談では済まなくなるだろう」
「しかし、テレビ局でもパルクールを取り上げている番組がいくつかで始め、興味を持ち始めた視聴者も存在する。そう言った個所への需要はあると思うが―」
「仮に需要があったとしても、危険なスポーツを採用する訳にはいかない」
「スポーツに怪我は付きもの。アクシデントが存在しないスポーツは、何処の世の中にも存在はしないだろう。あるとすれば、それはチートと呼ばれる事になる」
 このようなやりとりが実際にあったのかは不明だが、日本のテレビ局がパルクールを取り上げ、雑誌等でも特集が組まれ始めると状況は変化していった。
流行りものに便乗して稼ごうと言うのは、どの世界でも同じと言う事らしい。
「この変化した状況に対応する為にも、試験的に実施する方向で調整する」
「場所はどうする? 都心では仮に事故が起こった場合のパニックは避けられない」
「それでは、この場所でどうでしょうか?」
 最終的にロケーションテストが行われる事になったのは、東京都足立区。
それに向けて自治体の理解を得る為に運営スタッフが区役所を訪れようとした、その矢先に事件は起こったのである。
【このスポーツがブームになる事で、アイドルグループがお払い箱になるのは明白】
【アイドルグループ切り捨てを防止する意味でも、今回のロケテストも中止に追い込むのだ!】
 ネット上のつぶやきで、このような文章が拡散されていく内に、色々と文面は書きかえられていき、最終的には――。
【日本経済を救った英雄である超有名アイドルに対して、反旗を翻そうとしているパルクール・サバイバルトーナメントを中止せよ】
 このような文章に改変されて10万以上のユーザーに支持されていた。
この状況を重く見た運営は、一時的だがロケテストを白紙撤回する事にしたのである。
しかし、1月にロケテストと思わし物が開催されていたという投稿も存在したのだが――そちらに関しては調査中と言う事で、ここでは言及しなかったという。


 実はロケテスト自体が中止になるのは、これが2度目だった。
最初は2012年頃に似たような競技を立ち上げたのだが、超有名アイドルファンだけではなく地域住民からも反発が起きた事で中止に追い込まれている。
今回の中止も前回と同じようなきっかけで中止になった事で、次第に運営側にも手詰まりが見え始めていた。
パルクールの中止を訴える動きは次第に大きくなっていたのだが、それが逆に興味を抱くユーザーを増やす結果にもなり、最終的には運営側にとっても有利に働く。
それからコース整備を行い、怪我人を出さないようにするガイドラインを作成、それ以外にもテレビ番組等で海外展開されているパルクールの現状を紹介する事もあった。
こうした地道な活動は、数年後の西暦2017年にロケテストを行える環境が整うまでに至る。
中には、偽物のロケテストをでっちあげて風評被害やネット炎上を狙う様な人物もいたらしいが――。


 数時間後、ネット上にアップされた例の女性に関しての正体が判明した。そして、それを見たネット住民は誰もが驚愕をした。
【よりによって、この人物か】
【下手をすればマフィアも逃げ出すような危険人物―阿賀野菜月】
【彼女が超有名アイドル商法に悪意しかないというのも分かる。しかし、あの商法は政府公認。覆す事は出来ないだろう】
【しかし、あいつは未来を見る事が出来ると別のまとめサイトで言われていた。近い将来、超有名アイドル商法が廃止される事を……】
【あの商法が廃止されたら、経済発展はどうなる? 消費税増税のような手段を取るよりも手っ取り早いという事で成立したのが、超有名アイドル優遇の法案じゃないのか?】
【アレ自体が超有名アイドルのゴリ押しで成立されたというのは、どの掲示板でも言われているだろう? つまり、そう言う事だ】
 阿賀野菜月あがの・なつき、超有名アイドルに支配されたコンテンツ流通を何とかして解放しようとしている人物。
しかし、彼女の思想に関してはネット上で危険人物指定される程の物である。
市民としては超有名アイドルファンだけを優遇するような法案よりも、もっと別の法案を成立させて欲しいと考えているに違いない。
その一方、今の政治家は超有名アイドル関係者ばかりで構成されているという噂も絶えない。
そう言った声を聞いていく内、阿賀野は反超有名アイドル勢力を生み出し、現在に至るが――。
そのメンバー数はパルクール・ガーディアンよりも少ないと言う噂もあり、少数精鋭なのかは情報不足があって不明である。
しかし、ガーディアン組織自体は存在すると別の組織が発表しているので組織があるのは間違いない。


 阿賀野の目撃情報を確認し、そこへ向かおうとしている一人の人物がいた。
それは、過去に黒マントとも呼ばれていた青年である。彼自身が阿賀野に興味を示したというよりは、何かを確かめようと言う気配もするが。
「今まで偽られていたアカシックレコードの記録、それが再び動き出すと言うのか」
 阿賀野が今まで起こした事件、そのレベルは過去に自分が起こした事件とは比較にならない。
黒マントに関しては、ランニングガジェットの工場襲撃をカウントしている上で阿賀野よりも危険度は下なのだ。
「ARゲームの盛り上がりは、ここにきて上昇しているようにも見える。これが、新たなコンテンツ業界の風となるのか――」
 彼の名は小野伯爵おの・はくしゃく、反超有名アイドル組織とは別にコンテンツ流通を阻害する組織と戦う数少ない人物である。
余談だが、小野伯爵と言うのは本名ではない。その経歴は謎とされており、ネットユーザーも検索はしているようだが――未だに全容が分からない。
彼は西新井へと向かおうとも考えたが、予定を変えて北千住へ向かう事にした。
「タクシー……」
 小野は右手を上げるのだが、止まるような気配はない。
数台のタクシーは確認出来るが、彼の服装を見てスルーしているという説が強い。
タクシー業者によっては、ARゲームの事情を知らない業者があってもおかしくないので、この反応も間違いではないのだが。
「タクシーなら止まらないよ。この場所で、今からレースが始まるからな」
 カメラマンと思われる人物が小野に声をかけ、一言だけ残してレースの取材に向かう。
結局、小野は竹ノ塚駅まで徒歩で向かい、そこから電車で北千住へ向かう事になった。
その後、竹ノ塚駅に入る前に別のアンテナショップへ向かい、そこで黒マントだけを脱いでカバンへ収納し、駅で切符を買ったのは言うまでもない。
理由としては不審者扱いされる可能性もあるが、それ以上にガーディアンがうろついていたというのが大きい。
カメラマンの言うレースが、どのような物なのか聞くのを忘れてしまったが――アンテナショップ内でもレースに関するインフォメーションは見る事が出来た。
つまり、足立区がARゲームで盛り上がっているのは事実と言うのが証明できたとも言える。
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