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パルクール・サバイバーRe:System 作者:桜崎あかり

System3

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新たなる刺客


 5月3日午前11時、神城かみしろユウマの話題は拡散しており、スポーツ新聞の記者も駆けつける程の展開となった。
しかし、目撃証言のあった場所には神城の姿は既にない。記者の動きを察して移動したのかどうかは定かではないが――記者からは残念な声が聞かれる。
「あの箱根で見せた走りを生で見たかったが残念だ」
「生身で走るのとパワードスーツを装着している状態では、色々と勝手が違うだろう。箱根と同じとは限らない」
「神城以外にも駅伝からパルクールへ進出した選手は複数いる。そちらを探すのが先じゃないのか?」
「元陸上選手、元野球選手等も多数出ている。中には、パルクール・サバイバルトーナメントを体力トレーニングの場にしている者もいるらしい」
「今年のトライアウトは、さりげなくパルクール・サバイバーの参加者で元プロ野球選手も―」
「そこまでは甘くないだろう。パルクール・サバイバーをスポーツジム代わりに利用しようと考えると、後悔をする事になる」
「予算的な意味か? それとも、別の理由?」
「パルクール・サバイバーにはランカー勢が存在する。そのランカー勢からは『スポーツジムの代用品ではない』という声が出ている。そう言った利用方法は本来の趣旨に反するからという事だが」
 最終的には、集まった新聞記者も半数以上が別の場所へと移動をしていった。
その中で、1人だけ移動をしない記者がいた。彼はデジタルカメラを片手にコースの撮影を始めている。
彼は神城の方には興味がなく、以前に取材をしようと考えていた阿賀野菜月あがの・なつきに関して調べていた。
周辺エリアは取材禁止と言う訳ではなく、写真を取る事には問題はない。
「すみません、あなたは追いかけないのですか?」
 神城と並走した男性選手が新聞記者に声をかける。
しばらくして写真を撮るのを中断し、彼の方を振り向く。
その後、新聞記者は「追いかける気がない」と一言。再び写真撮影に戻った。
彼が何のためにコース撮影をしていたのかは定かではないが、ライバルARゲームのデータを参考にして新作を開発しようとしているスタッフ説もある。


 同日午前11時30分、北千住では再び未知のガジェットによるランキング荒らしが再び問題となった。
以前に同じ騒動が起こった際は調整を行うと言う事だったが――。
【あのガジェットは明白的に未知のガジェットだな】
【あれは最近になって稼働したばかりのゲームに使われている物だ】
【審査を通りぬけて運用をしようと考えた、と言う事か】
【サマーカーニバルかサマーフェスティバルの行った事か?】
【違法ガジェットに対する対策が厳しくなった結果、未知のガジェットを利用してランキング独占を考えたのだろう】
 つぶやきサイト上では、該当する動画に対するコメントが浮上し始めている。
この事から、超有名アイドルファンが違法ガジェットではなく、未知のガジェットへシフトしてガジェットチェックを通過しようと考えているのかもしれない。
【そう言えば、サマーカーニバルもサマーフェスティバルもプロデューサーは同じだったか?】
【確か、同じようなサマーなんとかの派生グループは海外でも展開するというニュースがあったかもしれない】
【どちらにしてもややこしいな。某36とか某20は数字で区別できたのに、サマーなんとかで略されると――】
【そうなると、カーニバルなのかフェスティバルなのか……ファンを見分けるのも難しいぞ】
 ネット上では、サマーカーニバルとフェスティバルに関する話も出ていた。
どうやら、芸能ニュースで海外進出と言う話が出たらしい。


 同日午前12時、お昼のニュースを見ながら動画をスマートフォンで見ていたのはノブナガだった。
彼が見ている動画は、神城の走ったレースである。
「飛行によるショートカット禁止レース、仮に10秒以上短縮できるショートカットコースを使ったとしても、あれほどのスピードを出されると勝ち目は―」
 レースの方は神城が終始リード、2位との差も20秒差近い。
フルゲート16人が出走したのだが、彼に付いていけている選手は不在と言うのが大きいだろうか。
しかも、彼は普通に道路のコースを使って走っており、これでは普通に駅伝やマラソンと同じように見える。
一方で一部の選手はパルクールならではのショートカットや障害物突破を披露するが、それでも神城へ近づくのは容易ではなかった。
「秋月以上の脅威は、ここにもいたという事か」
 ノブナガは秋月彩あきづき・さいの秘密を知っているのだが、それを別のステージで公表するまでもなく、神城が役目を果たすのではないか、と考えている。
神城は箱根を走った事もあり、辞退はしたが山の神と名乗っても差し支えのない実力を持つ。
陸上競技の優勝請負人という事が言われていた秋月よりも、おそらくは運動神経などは一回り以上にあるだろう。
男女の埋められない差はあるのかもしれないが――。
「ヒデヨシも状況は掴んでいるだろう。こちらから連絡をする事はない」
 動画の方が終了する頃、ニュースではパルクールに関するニュースが流れていた。
『次のニュースです。国際スポーツ連合は、2020年に東京で行われる国際競技大会の種目にパルクールを採用する事に関して、環境が整備されているとして種目として採用可能であると――』
 以前、似たようなニュースは見かけたような気配がするが、本当に行うのか疑問視されていた国際競技大会におけるパルクールの採用に関するニュース、これにはノブナガも落ち着いてはいられなかった。
「やはり、この動きは超有名アイドルグループおよびアイドル投資家が主導した物か」
 ノブナガは今回の動きに関して犯人の目星がついていた。
それは、超有名アイドルの上層部とアイドル投資家と呼ばれるファンとは別物の存在である。
アイドル投資家はCDを1000枚規模で購入してCDチャートを上昇させ、CDランキングを株式銘柄のリストと勘違いしている集団の事を指す。
しかし、こうした考え方は反超有名アイドル勢力のみであり、国民全体の考えではないと超有名アイドルファンや運営は否定している。
ネット炎上を考えている炎上請負人やアイドル投資家、他のジャンルの勢力は、どのような意見で動いているかは不明だが――超有名アイドル商法に関しては陰謀論という説も浮上していた。


 同日午前12時30分、秋月は別の会場で神城に敗北した。
その差はわずかに2秒。それでも、3位の選手とは30秒近い大差が付いており、この2人だけが能力のケタが違うと言及される事になった。
「箱根の山の神――まさか、あなたがパルクール・サバイバーに来るなんて」
 秋月はメットを外して息を整える。それに対して、神城の方は疲労したような表情を見せない。
一種のポーカーフェイスと言う訳ではなく、ほとんど疲労していないのだ。それ程の体力差を見せつけられた瞬間でもある。
「山の神は返上している。それに、今の自分は箱根の時とは全く違う。お前も陸上の優勝請負人だったとか」
 秋月の疑問に対し、神城はあっさりと答えた。神城の方も秋月に一つ質問を返す。それに対し、秋月は無言でうなずく。
「それは過去の話よ。今は、ネット上にあるパルクールの知識で何処までたどり着けるか……」
 息を整えようとするが、まだ若干荒く感じられる。
そんな中、秋月はシャワーを浴びる為に別のエリアへと向かった。
それに対して神城の方は別のレースへとエントリーしようとタブレット端末を操作するのだが、その操作途中でショートメールが来た事を知らせるアラームが鳴った。
【あなたではパルクール・サバイバーを制する事は出来ない。その証拠となる動画リンクを発送する】
 差出人の記載は名無しとなっていたが選手ID等から誰かと判別できるメッセージだったのは間違いない。
しかし、神城には他の選手が何を言おうと自分の走りを続ければ問題ないという考えがある。
「箱根の時も出雲の時も……そこに走っているという感覚はなかった。走らされていると言うよりも、何か別の気持ちを感じた」
 神城は箱根及び出雲の駅伝では監督の指示で走っていた。
自分もパルクールのトレーニングになると考えての利益の一致だったが、実際は監督側に大幅な徳があったようにも見える。
出雲は弱小とも言われていたチームがシード権獲得するまで成長、箱根の方は彼が往路で叩きだした記録の影響もあって、9区で8人一斉繰り上げスタートという前代未聞の悲劇を生み出した。
箱根の一斉繰り上げスタートに関しては、コース変更だけではなく別の部活からの引き抜き禁止までルールに加えるべきと言う意見も飛び出すほどだった。
「この動画は、まさか!?」
 動画を見た神城には覚えがあった。実は、こうした動画には作り物が多いパターンもあると考え、視聴する事は控えていた。
教習後は数試合を自分の目で観戦、そこから得た情報を積み重ねてサバイバーへ挑んでいる。
その結果は秋月とは違って初戦で1位を獲得と言う常識では考えにくいレースだった。
この時には強豪ランカー不在、半数近くが超有名アイドルのランキング荒らしと言う理由もあったのだが、彼の運動神経は周囲の予想よりも超越した物だったのだ。
その後は複数のコースで記録ラッシュを樹立し、拡散されたニュースに至る。
彼がショートメールで送られてきたメールの動画URL、それはあるセミプロのパルクールプレイヤーがサバイバーで苦戦しているという内容だった。
この結果はランカーである夕立が勝利を収めるが――。
「セミプロでもこの状況なのか。サバイバーに何か魔物でも存在する証拠――」
 神城は動画で若干気になる部分はありつつも、それを言葉にすることなく別のコースへと移動を始めた。魔物が潜んでいるのであれば、直接確認するとでも考えているのかもしれない。
「なるほど。あの運動能力も駅伝の選手だったとすれば、納得がいく」
 神城の過去に走った動画をゲーセンに置かれているサテライトモニターで確認していたのは、小野伯爵である。
他のギャラリーも神城の動画を所望していたので、その内の一つを再生していたのだ。伯爵の意匠に関して、指を指すような人物は見られない。
こちらに関しては、周囲のギャラリーも空気を読んでいるのだろうか?
「現役アスリートでも、元力士は見かけない。それ程、サバイバーには持久力が求められる……」
 神城の持久力は異常であり、それに合わせて別の何かがシンクロしている気配を感じる。
しかし、それが瞬発力的なものではないのは動きを見て明らかと考えていた。
「格闘家の様にパワーファイターでも成功例はあるが、上位に入った事はない。それ程、ガジェットをうまく運用する事が勝利の鍵なのか」
 しばらくして、伯爵は姿を消していた。
彼が何処へ向かったのかは不明だが、少なくともアンテナショップへは向かっていない事だけは――。


 同日午後7時、ネット上では謎の怪文書が飛び交っていたのである。
バラエティー番組の話題やニュースの内容までも吹き飛ぶほどのレベルだ。
【パルクール・サバイバー休止の真相、それは超有名アイドルファンやBL勢によるコンテンツ排除が理由か?】
 文章の書き方は阿賀野菜月のタイプとは異なるが、サマーカーニバル及びフェスティバルが拡散するような炎上目的の荒い文章と言う訳でもない。
【この文章では阿賀野が関わっているとは思えない】
【阿賀野を騙る偽者もいたようだが、彼女は最初からつぶやきサイトのアカウントは所持していない。それっぽいサイトのアカウントはあったと思うが】
【そうなると、今まで阿賀野と思われたつぶやきサイトのアカウントは全てなりきりや偽者と言う事か?】
 つぶやきサイトの阿賀野が偽者と言うのは何度が言及されていた為か、これに関しては感情的になる事はなかった。むしろ、初見の人間が慌てるというレベルのみ。
【しかし、過去には日本は超有名アイドルが支配するディストピアと言われた事もある】
【ARゲームを排除しようという動きも、このディストピア発言を裏付けている証拠だ】
【超有名アイドルファンを全て投資家ファンやタニマチと決めつける為の陰謀も否定できない】
 他にも色々なつぶやきがタイムライン上に流れる。しかし、それをパソコンで見た蒼空かなでは何か違和感に気付き始める。それは、阿賀野菜月の名前を見た段階で疑問を抱いていたのだが―。
「一連のタイムライン、もしかすると炎上目的なのかもしれない」
 コーヒーを飲みながらライムラインの確認。該当文章の書き方に阿賀野らしい部分が確認できないのも理由の一つだが、違和感を抱いたのはもう一つあった。
「阿賀野を騙れば明らかに偽者と叩かれる。それを知っているだけ、この文章の性質が悪い。一体、文章を書いた人物の狙いは何だ?」
 別の名前を名乗る人物が書いた文章、過去に小学4年生と偽ったサイトも話題になった事があるが、それ以上の狂気を文章から感じていた。
まるで、超有名アイドルを炎上させるように見せかけ、そこから株価を急上昇させようという展開に持ち込もうと言う意図も感じられる。
「このような幼稚な文章で阿賀野菜月を釣れるわけがない。逆にサバイバーを未体験であるという無知をさらけ出すと気づかないのか」
 別の観点から、この文章を書いた人物を特定していたのは花江提督だった。彼はある理由があって、オレンジ色のランニングガジェットのコクピット内でサイトを確認している。
「同じような怪文章がある以上、ひとつのテンプレから拡散したパターンか……夢小説勢の仕業か、それとも別の勢力なのか」
 その後、別の怪文章に関しては犯人が特定されたが、花江提督の予測通りに妄想だけで内容を補おうとしていた未プレイ勢力である事が判明する。
それとは別の勢力に関して特定する事は出来ず、他の勢力に任せる方向になったようだ。今回の件は、彼にとっては別の手掛かりを見つける為のフラグ立てにすぎない。


 5月4日午前10時、蒼空は西新井のアンテナショップにいた。例のメイド店長である叢雲のいる店舗だ。
「またお前か。最近は珍しい運動歴の人物もエントリーしているが、やはりお前以上の履歴は現れないな」
 相変わらずの表情である。ツンデレ店長も定番となってしまったのか不明だが、色々な意味で評判を呼んでいるのは事実だろう。
「珍しい? どれ位ですか」
「箱根の駅伝は知っているだろう。神城ユウマの出現から、数人は増えている傾向がある」
「駅伝だけならば出雲等もあるはずなのに、箱根ですか」
「駅伝と言えば箱根は一番有名だ。1月にテレビ中継され、ネット上でも話題となる。山の神が一時期に屍となった小説もあった位だ」
「山の神が屍ですか。神様なのに」
「まあ、そうなるな。小説と言っても同人であって、リアルで出版された訳ではないぞ。それに、屍になった山の神は神城ではない」
「それは分かっています。神城ユウマは今年の山の神である事も……って、神城関係ではありますが、今回は駅伝ではなくて違う話題なのです」
 蒼空と叢雲の会話が続くが、蒼空は本来の目的を叢雲へと話す。話が遠回りしすぎて、他の店員が書類チェックを行っているというのが現状か。
「こちらも長話が過ぎた。お前が聞きたいのは、神城ユウマのカスタマイズの事だな」
「ええ。あのカスタマイズは秋月の物とは全く違う。スタンダード装備で、あそこまで動ける物ですか?」
 神城の装備とは店舗お勧めの装備、いわゆるスタンダード装備である。重装甲や軽装甲を初心者にはお勧めしている店舗は少ない。
その理由の一つとして、重装甲は重さが50キロに及ぶものもあってバランスが取りにくい、逆に軽装甲は秋月彩の前例もあって生命の危険が高い事、そうした事情があってスタンダードをお勧めする店員が多い。
「スタンダードでも、他のARゲーム経験者ならばバイザーやガジェットの操作方法を把握しているケースが多い。それはお前も同じだろう?」
「ええ。それは認めます。しかし、逆にバイザーやガジェット、ハイテクに触れていない人物が動かせるような物ですか?」
 蒼空は叢雲の言う事を普通に認めた。ARゲームの経験者である事は既に向こうも知っているのだが…。
「ランニングガジェットをパワープレイで動かすのは不可能だろう。ライセンスの取得が必須である以上、そこで操作関係は学ぶはず。その基本的な部分だけで動かす人物もいるとは思うが、あれだけ適応出来る人物も……」
 叢雲は言葉を選ぼうとしたが、とっさには思いつかない。それ程に神城のセンスやスキルは常識で通じるものではなかったからだ。
「阿賀野菜月ならば、奴の知識量ならば神城程の運動スキルはなくても簡単にランニングガジェットを動かせるだろう」
 唯一思い浮かんだ人物、それは阿賀野である。彼女の異常とも言えるような思考、情報は神城の運動スキルに匹敵する。もしかすると、阿賀野に神城の様な運動センスがあれば、更なるリアルチートが生まれるかもしれない。


 同日午前11時、蒼空はレースを見学してから帰る事にした。本日の天候は曇り気味の晴れであり、雨の心配は特にない。スリップの様なアクシデントに悩まされる事はないだろう。
「あの黒いランニングガジェットは―」
 蒼空の目の前に入ったガジェット、それは2010年代後半を思わせるロボットのデザイン、それをガジェットへ落とし込んだような物である。しかも、カラーリングは漆黒でありいかにも中二病テイストを連想させる。
しかし、このガジェットのデザインは若干の見覚えがあった。過去に自分が使用していたガジェットだったからだ。あのガジェットにカラーリング、ヘッドバイザーや一部アーマーを差し替えすれば、あっという間に出来上がりだ。
「あのガジェットは阿賀野が使っているのか?」
 しかし、肩アーマーの番号である12を見ると全くの別人が使っている事が判明する。それは、何とランスロットである。何故にブラックガジェットを使用しているかは不明だが、本来使うべきガジェットが修理中という事情もあるようだ。
レースの方はランスロットが圧勝。コース取りの正確さもあったのかもしれないが、それ以上にランスロットの動きがガジェットとシンクロしていた事も大きい。
「これが限度か。更に強化しようと考えると、今度は自分の体に負担がかかる―」
 そして、ランスロットはすぐにアンテナショップへと戻り、ガジェットのメンテナンスを指示する。今回のデータに関してはサバイバーの運営へと回す。その理由が一体何だったのか、その真相はレースに出ているのを目撃しただけでは分からないというのが正しいだろう。
「しかし、このガジェットは別のARゲームで使用された―」
「それ以上の詮索は無用で願いたい。こちらも、今回の件は運営の指示で行っているからな」
「こちらも事情を聞く事はしません。しかし、ガーディアンが運営の指示を聞くなんて事があったかと言われると―」
「確かに、サバイバーの運営はやっている事に何か矛盾があるように見える。パルクールと言う名称にしても、今回のランニングガジェットに関しても。何か別の圧力を受けているのか、それとも別の勢力が既に介入しているのか」
 ガジェットを脱ぎ、インナースーツ姿のランスロットがスタッフと何かのやり取りをしている。しかし、その会話を蒼空が聞き取る事は出来なかった。声が聞こえなかったという事情もあるのだが。
「どちらにしても……ガーディアンにも時間は残されていない。何としてもアカシックレコードの真相を掴まなくてはいけないからだ」 
 ランスロットの言うアカシックレコード、それは阿賀野がアクセス出来るとネット上で噂されているアレと同じ意味なのか。あるいは別世界におけるアカシックレコードをサバイバー運営が発見したのか。


 同日午後1時、ニュースで奇妙な話題が報道されていた。
『西新井駅の近くにオープンした施設でミニライブを行った……』
 ワイドショー系や報道バラエティーでは見かける部類のミニライブの話題だが、国営放送規模のニュースで取り上げるのはどういう事だろうか。そのニュースを見た途端、謎の一つが解けた。
『事件があったのは午前11時45分頃、超有名アイドルグループのサマーカーニバルのメンバーが何者かの銃撃を受け、軽い怪我を負った模様です。現在、犯人に関しての情報は全くなく、以前にあったプロデューサー狙撃事件と同一犯である可能性が考えられます』
 何と、サマーカーニバルの現役メンバーの数人が狙撃を受けたというのだ。命に別条はなく怪我の症状も軽い物だったのだが、ここで不審な点が浮上する事になった。
【あの襲撃犯と同一だとすると、サマーカーニバルも違法ガジェットを使っているアイドルと言う事か?】
【そうだとするとおかしいぞ。サマーカーニバルとフェスティバルは同じ事務所、同じプロデューサーが担当している。カーニバルだけをピンポイント襲撃する理由が分からない】
【カーニバルの方が違法ガジェット絡みで何かあったとしか考えられない】
【狙撃犯に関してはガーディアンもノータッチだという話がある。もしかすると、サバイバーとは無関係の可能性がある】
【これも阿賀野絡みなのか?】
【阿賀野関係だとすると、かなりややこしくなるぞ。彼女は国会に対しても不満を持っている】
【つまり、超有名アイドルと国会が絡んでいると決めつけているのか?】
【彼女がどのようなミライを見たのかは、彼女に会った事がないから知らない。しかし、あの思考が非常に危険性を持っているのは火を見るよりも明らかだ】
【ネット右翼ではないが、阿賀野の思考が危険と言うのは色々と言われていて今更感がある。一体、このような事件が起こる背景は何だ?】
 つぶやきでも今回の事件に関して、色々な話が浮上する。これらのどの話がネット炎上狙いの発言かどうか、それを見極めるのもネットの情報を利用する上では欠かせないスキルだろう。


 同日午後1時、ノブナガの意に反する所でチート勢力が動き出し、別の勢力に対して攻撃を仕掛けていた。
「超有名アイドルの名を借りてフィールドを荒らす夢小説、カップリング勢、フジョシに神の裁きを!」
 攻撃を仕掛けた張本人、それは三国志の孔明を思わせる衣装を着た女性、その名も孔明である。ネットでも、この通り名で通っているので、特に問題はないだろう。
「コンテンツ・ガーディアンや他のガーディアンを狙うより、こちらを潰して敵勢力数を減らすのが効率は良いだろう」
 孔明は今回の夢小説勢の襲撃作戦に関して、このような狙いがあった。
しかし、この狙いは思わぬ方向で誤算を生み出し、想定外の人物を引きずりだす事になるとは……この段階の孔明では気づかなかったのである。

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