再び勇者召喚1
コメディ調の異世界冒険小説です。
(お願い)
※この作品には主人公がピンチになる描写が含まれています。
※この作品には多々の設定の矛盾がありますので、真剣に読むと禿げます。
※この作品の主人公は熟練召喚者みたいな事を誇らしげに語っていますが、かなり残念な頭の持ち主です。
※書籍版とはストーリーが異なります。
※誤字等気になる場合は、加筆、改稿済みの書籍版のご検討をお願いします。
夏休み前の終業式を控えたその日、それはやって来た。
ブオンと低い唸り音と共に巨大な魔法陣が気怠い暑さに満たされた高校の教室の床に描かれる。
いくつもの青いラインと赤いラインで描かれた複数の禍々しい魔法陣。
何度も経験したあのおぞましい感触。
召喚魔法陣だ!
しかも今回は俺一人を召喚するのではない。
教室の床全体を覆う巨大な魔法陣だ!
間違いない、これは集団転移だ!
集団転移を発動するには物凄い魔力コストが掛かるのに、後先考えなさ過ぎだろ!
俺は危険を察知しとっさに魔法陣の煌く教室から逃げようとした。
ターゲットとなるこの俺が魔法陣の上に居なければこの召喚は不発に終わる。
だが時は既に遅かった。
本来なら容易に避けられる筈の召喚魔法陣であるが、術者の能力が高いのか展開が早い。
窓から飛び出して教室から逃げようとしたが、魔法陣が作り出した光の障壁が俺を魔法陣の外に逃げるのを阻む。
くう! 遅かったか!
魔法陣は同時召喚らしく赤と青の魔法陣が幾重にも重なっている。
青は教会の勇者召喚で、赤は魔族の魔王召喚だ。
こうなったら勇者召喚でない事を祈るのみ。
青のラインと赤のラインが教室の床で交互に瞬きせめぎあう。
見た感じ数は圧倒的に勇者召喚の魔法陣の方が多いが威力では魔族の魔王召喚の方に軍配が上がる。
ここは何としても魔族の魔法陣に頑張って貰わないと困る。
青のラインが瞬けばそれを潰すように赤のラインから対抗魔力が発動し、赤のラインが瞬けばそれを抑えようと青のラインが抑止魔術を発動する。
魔力と魔術のぶつかり合いで、互いの召喚を潰しあう。
魔法陣は眩い光でぶつかり合い激しく光を放ち、そして青で固定された。
数に勝る教会の勇者召喚が勝ってしまった!
教会の勇者召喚かよ!
勇者召喚には二つのタイプがある。
国の最高権力者が行う勇者召喚、そして教会の行う勇者召喚だ。
黄色の魔法陣で行われる国の最高権力者の勇者召喚はそれ程問題にならないが、青の魔法陣で行われる教会の勇者召喚は結構面倒。
国の最高権力者とは別の団体が行なう召喚だから、後々問題になる事が多い。
そりゃ、国王の指示も無しに行われる召喚だ。
勇者と言う圧倒的な力を持つ怪物が異世界から召喚されたら、一夜にして国内の軍事力のパワーバランスが崩れる。
そして大抵の場合は用が済んだ勇者は闇に葬り去られる。
面倒な勇者召喚はもうお腹いっぱいなんですけど!
迷宮に封印されたり、毒を盛られて殺されたり。
それで勇者がキレて王族皆殺しで国が滅んだことが有るらしい。
やったのは俺だけどな。
そうならないように大抵の場合は召喚者の願いをかなえた時点で自動帰還する魔術が施されている。
フェールセーフってやつさ。
召喚の確定した魔法陣が強く輝きだす!
床の上で光る魔法陣に気が付いた生徒達から起こるどよめき。
召喚魔法陣は愚痴る俺を飲み込み、クラスメイト三十八名と担任の英語教師も巻き添えにして異世界に飛ばした。