最終話〜エピロ―グ〜
澄み切った蒼い空。
その蒼い空に、白い雲が泳いでいる。
うららかさが平和になったと実感させてくれる。
何もかも元に戻ったんだということを―――――
ここは『ラグナエ―ス』の内部にある公園。
公園の中央には噴水がひとつあり、熱いときは水浴びできるようになっている。
そしてその周りは芝生の絨毯。昼寝には絶好だ。
そのほかには、入り口から道になるように並べられているたくさんの花が植えられている花壇。それに芝生のところには小さな木が何本か植えられている。そのほかには茂みがいくつかある。
はっきり言って、町とかで見かけられる公園より設備がいいほうかもしれない。
補足で言うと、蒼い空も白い雲は全部映像で映し出されている。さらに言うと、夜にはちゃんと星空が映し出される。
そんなところに1人の青年、『殺人鬼』から立ち直ったタイガ・ウナバラがいた。
タイガは1人公園で散歩していた。正直タイガはみんなと居ずらかった。
その理由は無論、『殺人鬼』としての人格を一時的に衝動で起こしてしまったからだ。
―――――ここには居場所が無い。
そんなことを考え始めていた。唯一居場所があるとすれば、タイガにとって人目がつかないところだ。
そのため『ラグナエ―ス』に戻ってきてからのタイガは人との接触を極力避けていた。
『また衝動が襲ってきたら……。』、『今度は元に戻れるんだろうか。』……………そんな考えが、タイガに人を避けさせる……。
「タイガさんッ!」
ふとタイガは公園の入り口をみると、そこからとある少女がタイガに向かって走ってきていた。
タイガが今一番会いたくない人物でもある。
嫌いだからという理由ではなく、別の理由で……………。
「……セルリア。」
「タイガさん。ここのところどうしたんですか?」
不意にそんなことをセルリアから聞かれるタイガ。
「どうしたって………なにが?」
「ここのところタイガさん、ずっと暗そう………というよりどこか辛そうな顔をしていますよ。」
事実上その通りだった。
暗い考えや辛い考えがタイガの頭の中に渦巻いているからだ。
「だから…どうしたんだろうって……………。」
「…………………セルリア。この『ラグナエ―ス』での僕の居場所なんてあるのかな?」
今一番聞きたいこと。それをはっきりセルリアに質問をした。
「どういう意味ですか?」
「言ったとおりの意味だよ。僕はあのとき、『殺人鬼』としての人格を呼び起こしてしまった。なんとかあのときは治まったけど『殺人鬼』としての人格がまだ消えたわけじゃない。今度は治まるなんて保証も無い。……………下手をすると、今度はこの『ラグナエ―ス』に居る人たちを……………。そんな危険人物に、居場所があるのかなって。」
「そんなの………あるに決まっているじゃないですかッ!!この『ラグナエ―ス』自体、タイガさんの居場所じゃないんですか?過去がどうであったとしても、今のタイガさんは間違いなく良い人ですし、少なくとも今のタイガさんは危害を加えるような人じゃありませんッ!」
「今はそうかもしれないけど、もし『殺人鬼』としての人格がまたよみがえったとき―――――。」
「そのときは私たちがとめてみせますッ!今はセシルさんやジンさんやウィズさんやルシアさんも居るんですから―――――。」
そのとき、タイガとセルリア近くにある茂みがごそっと動いた。
「「へ…?」」
タイガとセルリア、2人そろってやや抜けた声を出す。
それから数秒後……
「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!この筋肉女ぁッ!!おまえが少し動くからばれちまったじゃね―かッ!!」
「うっさい色魔男ッ!!あんたに言われると3割増し怒りが増量するわッ!!!」
「やれやれアンタたち。ばれたとわかったら急にうるさくなったねぇ。」
「……………ばれたのか?」
「ってジン。君わかってなかったのか?」
「ジンって言ったか?おめぇって冷静沈着なふりしてっけど結構ボケキャラじゃね―のか?」
「そうそう♪ジン君は意外と抜けてるんだよねぇ〜♪」
「へぇ〜。新メンバ―の意外なところ発見って感じだな。」
「それより2人がこっち見て固まっているように見えるのはボクの気のせいか?」
出てくる出てくる。
小さな茂みから異常なまでに出てくる人間たち。
ティレク、ミラ―ジュ、シャ―プ、ラピス、カイル+新たに加わったセシル、ジン、ウィズ、ルシア……………計9人。
その9人を見て、口をあんぐり開けたまま固まってしまったタイガとセルリア。
「……………ど、どどど、どど、どどどどど、………どうしてみんながここに居るんですかぁッ?」
ようやく言葉を発することに成功したセルリア。
「どうしてってそりゃあ………かくれんぼだよ、な?」
ティレクがそう言うとコクコクと首を縦に振るその他8名。
「かくれんぼなのに鬼がいないようですけど。」
「鬼なしかくれんぼだよ、な?」
再びその他8名は首を縦に振る。
「まぁまぁそんなことよりせっかくみんな集まったんだしさ、この公園でピクニックとかしない?」
いとあやしとばかりに視線を向けるタイガとセルリアからなんとか逃れるべくウィズは超強引に話をそらす。
「お、いいねいいね♪そんじゃあ早速準備しにいこ―か、みんなッ。」
そう言うとカイルは一目散に公園から退場。それに続くように残り8名が出入り口に向かった。
「タイガ君とセルリアちゃんも準備しなよ―――――ッ!!!」
出入り口から叫ぶウィズ。どうやら本当にピクニックするようだ。
「……なんだったんでしょう、あれ。」
「僕に聞かれてもなぁ。」
公園に残された2人。
「……………タイガさん。」
「なに?」
「『殺人鬼』の人格がよみがえってしまったら…てタイガさん言ってましたけど、そんなものは仮定の話なんですから、今は考えないでおきましょう。」
「……だけど―――――。」
「仮に本当によみがえってしまったら、さきほども言ったとおり私たちが何とかしますよ。今のタイガさんは『殺人鬼』のタイガさんではなくて、『善人』のタイガさんなんですから大丈夫なんですし……………それに―――――。」
ふとタイガはセルリアを見る。
セルリアは微笑んでいた。とても優しく……そして、とてもうれしそうに。
そしてこう言った。
「私は今のタイガさんが好きなんです。」
好き……。
それはタイガが昔、セルリアに言った言葉。
それも『殺人鬼』としてのタイガではなく、『善人』としてのタイガが………。
「だから、ここにいて欲しいと私は思います。タイガさんにとって『居場所』かどうかはわかりませんけど、少なくとも私はここに居て欲しいです。この『ラグナエ―ス』……………いや、私のそばに。」
「……………怖くないのかい?」
「ぜんぜんと言ったら嘘になります。ですけど私、信じていますから。」
信じている……。
それはおそらく、タイガが『殺人鬼』の衝動に負けないことを信じているのだろう。
なら、タイガ自身それに答えないわけにはいかない。
「………うん。信じてて欲しい。」
「それと………。」
少し間をおいて、セルリアはこう言った。
「おかえりなさい。」
その言葉は、居場所がある人間に言われる言葉。
返す言葉は決まっている―――――
「ただいま。」
LEGEND『伝説』【輪廻の出会い】
THE END... |