第80話〜最終決戦〜
「殺人鬼の家庭で生まれた人間は、所詮殺人鬼なんだよ。」
そう言ったタイガ―――殺人鬼の表情は、何か悲しそうだった。
まるで、『殺人鬼の家庭でなんか、生まれなかったらよかった。』、『どうして自分は、殺人鬼として育てられたんだ。』とでも言いたげな……。
そのときだった。
ティレクは瞬時に元いた位置から離れる。すると殺人鬼は一足飛びで斬りかかってきた。
「くそッ。」
ティレクを槍を構え直す。
カンカンキンカンキンキン……………
連続で刃同士が交差し合う。
互いに攻撃しては受け止められ、攻撃されては受け止める……。
他の人たちは、その戦いにとてもじゃないが入れなかった。―――――いや、入った時点で餌食になるだろう。
だから、残りの人たちはただただ見守るしかなかった。そして、祈るしかなかった。
―――――タイガが元に戻るように、と。
「さすがだなぁ、ティレク。」
「……おまえは―――――」
斬撃の打ち合いの隙をみて、ティレクは殺人鬼を槍を振るって吹っ飛ばすと―――
「―――――どうして元に戻ってしまうんだよッ!!変わるんじゃなかったのかッ!!」
「変わるだって?殺人鬼からか?」
「そうだ。おまえ、気づいてるんだろ?『殺人鬼から変わりたい』っていう自分の心情の変化がッ!」
そう言われると、殺人鬼は眉を微妙に動かす。
「気づいていたから、おまえは村を追放されてから5年間必死に変わろうとしたんじゃないかッ!!―――――おまえはそれを全部捨てるって言うのか?」
「………くせに―――――。」
小さすぎてよく聞こえない声。それはタイガの身体を借りた殺人鬼の口から出ていた。
「何もわからないくせに勝手なこと言うなッッ!!!!!」
あまりに大きな声。あまりの大きさのあまり、部屋中に響き渡る。
「おまえにわかるか?ティレク。殺人鬼から必死に変わろうとしても、その衝動が時々襲ってくる辛さを!!他人事だからそんなことが言えるんじゃないのか?」
「そんなことないッ!!俺様はちゃんとおまえが辛いことを知っていたッ!だから………俺様はおまえと一緒に村を出たんじゃないか。おまえ1人だと辛いから、俺様が少しでもその辛さを和らげようと思って………。」
「そんなのただの同情と同じじゃないのかああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」
そう叫ぶと、殺人鬼は感情のままティレクに向かう。
その感情とはもちろん、怒りだ。
ティレクはそれを避けようともせず、ただ槍で受け止める。
殺人鬼のありったけの怒りを槍を通じて感じ取ろうとするティレク。
「……………同情じゃ―――――」
そして渾身の力で―――――
「―――――ないッ!!!」
―――――タイガを吹っ飛ばす。
「同情なんかじゃないッ!!同情なんかじゃおまえをここまで迎えに来るわけ無いだろッ!!!わざわざ宇宙中を飛び回って、おまえを迎えに来るわけ無いだろッ!!!!」
「!!」
再びティレクに刃を向けようとした殺人鬼の動きが止まった。
「タイガ……おまえ『殺人鬼の家庭で生まれた人間は、所詮殺人鬼なんだよ。』って言ってたけど、少なくとも俺様と旅してた5年間は『殺人鬼』なんかじゃなかった。」
「……………。」
「どこから見ても立派なやつだと俺様は思ってた。お人よしで、バカだけど俺様の自慢の『仲間』だと思ってた。」
「……………。」
「だから、おまえの言ったことは間違っていると思うぞ。変わろうと努力すれば、変われるんだ。―――――『殺人鬼』でもだ。」
「……………。」
「だから………もう一度やり直そう。やり直して、殺人鬼から自分のなりたい自分になるんだ。」
「…………………………………………………………………」
長い沈黙。
そして―――――
「…………………………………………………………………うん。」
「―――――迎えに来たぞ、タイガ。」
いつからだろうか、俯き気味のタイガからは涙がこぼれていた。
殺人鬼の濁った心ではなく、タイガの透き通った純粋な心のようにその涙は透き通っていた。 |