第73話〜その人登場〜
「―――それで、ここまで来たってことは、それなりの覚悟はできているんだよね。」
しばらくの沈黙の後、ルシアがセルリアに問う。
「あなたたちと戦うってことですか?」
「まぁ、そんなところかな。キミがタイガを取り戻したいって言うんなら、それくらいしか方法は無いけど。」
戦い。最悪のパタ―ンだった。
もしそうなれば、セルリアにははっきりいって勝ち目は無い。
セルリアの武器は弓矢。弓矢というものは遠距離から前衛を補佐する……はっきり言って護衛的な役割になるものだ。
今、前衛はいない。なにより、セルリア1人で戦わないといけない。
仮にそれをなしとしても、2人は戦いのプロ的存在。
勝ち目はゼロに等しい。絶望的だ。
「―――んで、どうする?私たちに勝負を挑む?」
「挑みます。―――もとより、私は戦いを覚悟でここまで来たんです。」
勝ち目はゼロに等しいしれない。けど、ゼロではない。
0、00000001%でも勝算があるかもしれない。なら、セルリアはそれに賭けた。
「そうかい。―――なら、キミの望みどおり戦ってあげるよ。」
「せめて痛みはほとんどなしであの世に送ってあげるよ。1人で私たちに戦いを挑むからね。」
セルリアは手始めに魔力で矢を生成して相手を射る準備をする。
ルシアとウィズはまるで『一度だけチャンスをあげよう』とばかりにまったく攻撃をしてこようとはしない。
なら、そのチャンスをものにしよう―――。
セルリアは弦を千切れるかと思えるくらい強く引き、そしてルシアめがけて射る。
音速ともおもえるほどの疾さでルシアの心臓部分めがけて飛んでいく矢。
だが空しくもルシアに当たる直前で矢がはじかれてしまう。結界だ。
「残念だったね。でも、なかなかの攻撃だったよ。」
ルシアは指をパチンと鳴らす。するとセルリアめがけて一筋の雷が落とされる。
魔術『ライトニング』だった。
どうやらルシアもウィズと同じく、下級魔術程度なら無詠唱で発動できるようだ。
「―――――ッ!」
一瞬だったので何がおきたかわからないセルリア。
だが、倒れて少し時間が経てば自分は攻撃されたとわかった。
わかったところで何もできない。
雷を受けたせいで、身体中の筋肉が硬直し、思うように動けなくなっていたからだ。
ものの数十秒。1分はおそらくかかっていない。それだけで、セルリアは自分の負けを確信させられた。
そんなとき………
バァン
と、景気が良すぎるくらいの勢いで大扉が開いた。
そこには1人の青年の姿。
それは、セルリアが最も会いたかった人物だった。
―――タイガ・ウナバラその人の登場である。
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