第63話〜声〜
はぁ…はぁ…はぁ…―――――
タイガはベッドから起きると、まるで全力疾走でマラソンをしてきたかのように呼吸をしていた。
着ていたシャツは冷や汗でびちょびちょ。
手は汗で濡れていた。
―――最近、やけにあの夢を見る気がする……。
荒野だけど、灰色の地面ではなく赤く血で染められた地面で、リアル過ぎるくらいの血の臭い…。
それから、
たくさんの兵士たちの死体がところどころに山積みに……………
そこまで回想して、タイガはそれを止めた。
はっきりいって気分にいいものでない。思い出すだけで吐き気を感じるような内容の夢だった。
「…あぁ、たしかここって自分のために用意さえた部屋だっけ。」
今気づいたようにタイガは呟く。
タイガはウィズの部屋を出るとまっすぐ自分に用意された部屋に戻って、そのまま何もすることが無いので眠ったのである。
(その結果があの夢か…。)
はぁ〜、と深いため息をひとつ。気が落ち込む。
なんとなくタイガは窓から外を見る。夜だ。
さきほどまでの砂嵐がうそのように止んでいた。
どうやら『カムラン』の砂嵐は、夜には起きないようだ。
「…暇だし、外に出てみよっかな。」
沈んだ気持ちも元に戻したいし…と考えて、タイガは1人外に出てみることにした。
外ははっきり言うと「寒い」の一言。だが、タイガにとっては落ち着ける寒さだ。
タイガが現在住んでいる塔の辺りはすべて砂。砂砂漠である。
そんなところで、タイガは1人寝転んでいた。
寝て視界に入ってくるのは星の絨緞。
明かりが塔以外からはどこにもないので、はっきりと星が見える。
広大な宇宙。
そこには、
数え切れない数の星があり、
惑星があり、
命がある。
そして、
その命の数だけ、
喜びが存在する。
また、悲しみも…………………………。
「……………。」
そんなことを思いながら、タイガは星空を見ていた。
そして、自分でその通りだなぁと思ってみたりもしていた。
人間の母星『カムラン』。その母星を人間は捨てた。
母星を殺すほどまでに成長した技術。それを平然と人間は今現在も使い続けている。
おそらくそうしていられるのはたとえ自分の住んでいる惑星が滅んでも「代わりの惑星があるから」だとか思っているからであろう。
今はあるかもしれない。
だけど、形あるものすべて有限だ。無限など無い。
『何か』と競い合うように、文明は進化し続けている。
その『何か』とは、恐怖、不安と言った類のものかもしれないけど、そんなものは僕にはわからないことだ。
ルシアたちも、『何か』と戦おうとしている。
『ラグナエ―ス』の人たちも、『何か』と戦っている。
………なんだろう。僕はこの『何か』が全部違うものとは考えられない。
全部同じに思える…。
―――――ドクンッ
突然、タイガの鼓動が高まった。
それと同時に、凶悪なまでの頭痛がタイガを襲った。
ハンマ―か何かで力いっぱい殴られたような痛み。
……………メザ、…ロ。
だ……れ………?
ザ………メロ………。
だ、……れ…なん…だ?
ワガ………キオ……メザメ……ロ。
ダレか……キいて…るッ。
ボ……ハ、オマ………ダ。
………?キこエ……ない。
ボクハ………、オマエ……ダ。
シらないッ。………シらな―――
ワガ……キオ……ク―――――
「知らないっていってるだろぉッッ!!!!!」
大声で叫ぶと、タイガはその場で気を失った。
砂砂漠に響く青年の声。
聞いている者は、誰もいなかった。
――――――――――青年以外は。 |