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星詠みの巫女と幸運の星 作者:青柳朔
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Episode1:はじまりの星

 この島の中央にある塔へと向かいながら、僕は沈む夕日を見送った。もうすぐ夜がやってくる。塔の足元までやってきたときには、西の空で気の早い星が輝き始めているところだった。
 普通の島民は近寄らない塔に、僕は迷わず入っていく。扉を開けるとすぐに長い階段が目に飛び込んでくる。僕は日が完全に暮れてしまう前に、と急いで階段を上り始めた。この長い階段を上るのも慣れたもので、そう簡単に息が切れるようなことはない。
 島の中央にそびえる塔。星詠みの塔とも、巫女姫の塔とも呼ばれている。恐れ多いと、この塔へ近づく島民は少ない。
 僕の仕事は、十二歳の頃から変わらない。日が暮れるまでにこの塔へとやってきて、ここに住まうひとりの女の子の話し相手に、遊び相手になること。僕は急いで階段を上り、塔の最上階にある部屋まで着くと、部屋の中央で空を見上げる少女へ微笑みかけた。
「おはよう、シャート」
 ガラス張りの天井を見上げれば、暮れていく空が見える。じいっと空を見ていたシャートが、僕の声に気づいてこちらを見た。
「おはよう、アルコル」
 花が綻ぶように笑ったシャートに、僕の心は満たされる。僕はシャートのために毎日こうしてこの塔に通う。もう八年も続く当たり前の日常だった。
「アルコル様がいらっしゃいましたので、わたしは退出いたします」
 部屋の片隅にいた、まだ少女と呼ぶべき年齢の彼女は、巫女姫の世話係だ。僕も役割としては『世話係』となるけれども、異性である以上手を出せないこともある。洗濯ひとつにしたって、さすがに僕がやるわけにもいかない。
「お疲れ様、ナシラ」
 僕が声をかけると、ナシラはぺこりと律儀に頭を下げて部屋から出て行った。
 普通の人ならば夕食を食べるような時間に目覚めるシャートは、たった一人しかいない星詠みの巫女だ。
 この島には星詠みの巫女と、たくさんの星拾い人がいる。いのちの象徴ともいえる星が落ちたとき、巫女はその星が誰のものであるか分かるという。巫女は星が落ちた場所と誰の星であるのかを告げ、星拾い人は地上へ落ちた星を探し出し、遺族のもとへ届ける。
 島の人間にとってそれは普通のことで、落ちてきた星は死んだ本人そのものだ。魂、といってもいいのかもしれない。だから島の人間は、星がまた空へ還る日まで、届けられた星を大事にするのだ。星が空に還るとき、それはその人がまたこの世に生を受けたことを意味する。島の中かもしれないし、外かもしれない。人間かもしれないし、昆虫かもしれない。生まれ変わった先は分からない。けれど愛した人が、生まれ変わるときまで傍にいるために。
 僕もまた、ひとつの星を持っている。八年前に亡くなった母の星だ。その母さんの星が、僕とシャートを巡り合わせてくれた。





 唯一の家族を亡くした僕は、どうしていいのかも分からずにただ茫然としていた。村の大人が葬儀の準備をしてくれて、僕はただ目の前の現実を受け止めることに必死になっていた。あんなに元気だった母さんが、こんなにあっさり死んでしまうなんて夢にも思っていなかったのだ。
 ベッドの上に横たわる母さんは、眠っているようにしか見えない。そっと手に触れてみると氷のように冷たく、その異様な冷たさが母さんの死を静かに物語っていた。僕はベッドの脇で膝を抱え、ただ時間が過ぎるのを待っていた。これから子ども一人で生きていけるわけがない。母さんは家とほんの少しの貯金を残してくれたけれど、どうやって生きていけばいいのか見当もつかない。どうせならこのまま僕も死んでしまえばいいんだ。本当にそう願った。
 かちゃり、と玄関が開く。村の人が来たのだろうか、と思って顔を上げると、そこにいたのは藍色のマントを着た知らないおじさんだった。マントと同じような、深い藍色の瞳と目が合う。
「君が、アルコルか」
 低い声が、僕の名前を言った。
「だれ、ですか」
 そのおじさんはやさしい目をしていたから、危険は感じなかった。問いかける僕を見て悲しそうに微笑んで、そっと何かを差し出す。薄暗い部屋の中で、ぼんやりと輝く丸い石。きれいだった。
 目が離せなくなるくらいに、それはきれいだった。
「君の、お母さんの星だ」
 おそるおそる手を伸ばして星に触れた。温かいぬくもりは、母さんと同じだった。触れた指先から、ぬくもりが全身に伝わる。まるで母さんに抱きしめられているみたいだ。
 ――家族には、その星が誰のものなのか分かるんだよ。
 母さんはそう言っていた。嘘じゃなかった。僕にもこの小さな丸い石が、母さんの星なのだと断言できる。不思議な気分だ。僕は、これまで家族の星を見たことはなかったのに。
「母さん」
 両手で星を包み込むようにして触れると、やわらかい光が返事をするように揺れた。
 母さんの遺体はベッドに横たわっていて、何も語ることはないのに、手のひらの中の母さんの星は、言葉を発することはなくても僕に何かを伝えようとしてくれる。それが、すごく不思議で、やさしくて、あたたかかった。
 じんわりと滲み出てきた涙が頬を伝う。悲しいだけの涙ではなかった。
「アルコル」
 名前を呼ばれて顔を上げる。ぼやけた視界に、村長さんの顔が見えた。
「デルタを……」
 躊躇いながら母さんの名前を呟く声に、僕はゆっくりと頷いた。この島の葬儀は、夜に行われる。星が瞬く夜、また夜空に還ることができるように祈りながら、死者は土の中で永遠の眠りにつく。
 家に入ってきた大人たちの手によって、母さんは運ばれる。母一人、子一人で暮らしてきた家は狭いくらいだったのに、異様に広く感じた。
「君の、父親は?」
 星拾い人のおじさんが、僕を見下ろしながら問う。
「僕が生まれる前に、死にました。星は物心つく前に空に還ったので、覚えていません」
 アルコル、と村長さんが僕を呼ぶ。僕はおじさんを見上げて、少し悩んだあとで家を出た。村の外れにある墓地は、焚き火で赤々と照らされている。火の粉が夜空へ向かうように舞っていた。
「夜空で輝く星の役目を終え、地に落ちたひとつのいのちよ。どうか安らかな眠りと、再び夜空に還る日がくることを願って」
 目を閉じ祈る人々と同じように、僕は母さんの星を胸に抱いて静かに祈った。ぱちぱちと、焚き火が音をたてる。
 母さんの身体は、ゆっくりと静かに地面に埋まっていった。そうして長い時間をかけて身体は地に、魂は空に還るのだ。

「君は、これからどうするんだ?」
 役目を終えたはずの星拾い人のおじさんは、葬儀が終わったあともいて、僕に話しかけてきた。
「……家は、母さんが遺してくれました」
 けど、住む家があるだけでは生きていけない。わずかな貯金を切り崩して生活していくわけにもいかない。これまでのように自分のお小遣いを稼ぐだけではだめだ。一人で暮らしていけるだけの仕事をしなければ。
 しかし子どもの僕に何ができるだろう。そう考えて黙り込むと、大きな手が僕の頭を撫でた。
「君にできる仕事がある。いや、君にしかできないことだ。やってみるか?」
「……それは、星拾い人になるということですか」
 僕にしか、という言葉はひっかかったけど、星拾い人であるおじさんから提案される仕事なんて、同じ星拾い人しか想像できない。しかしおじさんは首を横に振った。
「いいや、違う」
「じゃあ……」
 さらに問い詰めようとすると、おじさんは微笑んで「ついておいで」と言う。道すがら、おじさんはラサラスと名乗り、そして先代の巫女のときから星拾い人をしていると言った。僕は迷いなく森の中へ進んでいくおじさんの後を追うことに必死だった。暗い夜の森は、油断するとおじさんの背中さえ見失わせる。
「今の星詠みの巫女は、まだ子どもでな。君よりも幼い。同じ年頃の話し相手が欲しかったんだ。君が相手をしてくれると助かるんだが」
「話し相手」
 そんな簡単な仕事? と僕は首を傾げる。
「子どもが、巫女だからと言って塔に縛り付けられているのは見るに耐えなくてなぁ。話し相手になって、時々遊んでやってくれ。それこそ友人ように、兄のように」
「そんなことでいいんですか」
「そんなことかもしれないが、星詠みの巫女がこの島にとって欠かすことのできない存在である以上、重要な役目だよ」
 しばらく歩くと森を抜け、視界が開けた。木々で遮られていた月と星の光が降り注ぐ。顔をあげると、そこには高くそびえる星詠みの巫女がいる塔がある。この島の中心だ。
 迷いなく塔の中へ入っていくラサラスの背に、僕は待って、と声をかける。
「は、入っていいんですか?」
「入らないで、どうやって巫女に会うんだ? 島民はこの森にも塔にも近寄らないが、近寄るなと誰かに禁止しているわけじゃないぞ」
 でも、村の大人たちは近づいてはいけないと、何度も子どもたちに言い聞かせていた。あの塔にいるのは、気高く尊い星詠みの巫女様だ。いのちを司り、死を予言するたった一人のお方。私たちが近づいていいような人ではないのだよ、と。
 躊躇っていると、ラサラスは扉の奥へ入り僕を置いて進んでしまう。僕は母さんの星を握って、ごくりと唾を飲み込むとラサラスの後を追いかけた。塔の中へ入ると、すぐに階段がある。かつんかつんと上る音は、先に進むラサラスのものだろう。
 この階段の先に、どんな子がいるんだろう。考えただけで胸はどきどきした。星詠みの巫女様なんだから、きっととても神秘的な子だろうな。大人びている子かもしれない。こんな平凡な僕なんかで話し相手が務まるだろうか。
「シャート」
 狭く長い階段を上ると、広い部屋があった。天井までがガラス張りになっている部屋の中には、たくさんの観葉植物がある。家具らしい家具はほとんどなく、部屋の中央にベッドがぽつんと寂しげにあり、小さなテーブルとイスがその傍らにあるだけだ。
 ラサラスの声に振り返った少女は、星の輝きのような、綺麗な銀色の髪をしている。こちらを見た瞳は夜空のように深い青だ。
「こんにちは、ラサラス」
「こんばんは、だ」
 ラサラスが訂正するが、シャートという少女は気にする様子もなく笑った。この子が星詠みの巫女。
「あれ? 知らない人がいる。ねぇ、ラサラス、この人だぁれ?」
 ラサラスの大きな身体に隠れていた僕を目ざとく見つけて、問う。
「ああ、アルコルというんだ。これから、おまえと一緒に遊んでくれるぞ」
「本当に?」
 一人きりで暇なのだろうか、遊ぶという単語を聞いた瞬間に彼女は目を輝かせた。しかしすぐにしょぼんと目を伏せる。
「……でも、遊んでくれるのも今日だけなんでしょう?」
 くるくると表情の変わる子だな、と僕は思った。肩を落とす彼女に微笑みながら、ラサラスが「いいや」と言う。
「アルコルは、これからたくさん来てくれる」
 なぁ? と同意を求められたので、僕は頷いた。するとぱっと明るく――さっきの笑顔なんて霞んでしまうくらい嬉しそうに、彼女は笑った。
「ほんとう? ほんとうにたくさん来てくれる?」
「く、来るよ」
「毎日? 毎日来てくれる?」
「君が、望むなら」
 答えると、彼女はわーい! と僕の周りを飛び跳ねるくらい喜んだ。
「あのね、シャートはね。シャートっていうの。よろしくねアルコル」
「……よろしく」
 勢いに押されながら答えると、彼女はうれしそうに笑う。予想外に明るくて元気な女の子だ。
「アルコル、何か持っている?」
 首を傾げながらシャートは歩み寄り、問いかけてきた。僕は握りしめていた母さんの星を見る。
「これのこと?」
「ああ、昨日の星だね! アルコルが家族だったんだ。よかったね、家族のところに帰れて」
 母さんの星を見た瞬間に、シャートは笑った。そして僕の手のひらの上の星にむかって話しかける。
「……星の声が、聞こえるの?」
「うーん……なんとなくね、感じるの。帰りたいとかうれしいとか、そういうぼんやりしているのが。だから私はそれを伝えてあげるの、私のお仕事だから」
 まだ幼いシャートの口から仕事という言葉が出てくると、僕の胸はなんだか苦しくなった。子どもの僕よりもっと小さなシャート。その子が当たり前のように仕事をしている。小さな頭を撫でようと手を伸ばして、少し躊躇う。この子はあの星詠みの巫女だ。僕が気軽に触れていいんだろうか。銀色の綺麗な髪は、触れたら壊れてしまいそうだ。
「アルコル、どうしたの?」
 僕の戸惑いをよそに、シャートは曇りのない目で僕を見上げてくる。中途半端な高さで止まっていた手を持ち上げて、僕はやわらかい髪を撫でた。
「……シャートはえらいね」
 頭をなでると、シャートはくすぐったそうにして、笑った。
「えらい? シャートはえらい?」
「うん、えらいよ」
 確かめるように何度も問うシャートに、僕は何度も頷いた。そのたびにシャートは満面の笑みを浮かべる。

 ラサラスが望んだように、そしてシャートが望むままに、僕は毎晩シャートのために塔へと向かった。村の人たちは、僕が星拾い人の見習いのようなものになったのだろうと、勝手に納得してくれている。
 夕日が沈み、島が夜の闇に包まれる頃、塔からは歌声が聞こえた。
「ラサラス、あの歌ってなんなの? 小さい頃もよく聞こえていたんだけど」
「あれは、鎮魂歌だ」
「でも、何を言っているのかわからないよ」
 少なくとも僕の耳には、歌詞らしきものが理解できない。それなのにどこか落ち着く、不思議な歌だ。
「俺にもわからん。なぜかは知らないが、巫女はここへ来た時にはあの歌を知っているんだそうだ。言葉も俺たちの知らない――遠い遠い昔の言葉なんだろう」
 闇に覆われていく島の中に、シャートの幼い歌声は響く。それは鎮魂歌でもあり、子守唄のようでもあった。
「……星詠みの巫女は皆が短命だ。先代は三十歳まで生きたが、それでも長く生きた方だ。俺はな、巫女は人よりも死に近いところにいるから、星の声が聞こえるんだと思う」
「死に、近い……?」
 首を傾げながら見上げると、ラサラスは困ったように笑った。僕の頭をくしゃりと撫でる。
「おまえには、まだ早かったな」
 ラサラスはそう言うけれど、僕にも少しは理解できた。シャートは、あまり長生きできないのだということなのだろう。歌は空に溶けるようにやさしく響いている。
「アルコル、あの子を頼む」
 ラサラスは歌声に聞き入りながら、唸るように呟いた。
「シャートはまだ八歳だ。本当なら親に甘えている頃だというのに、島の巫女として塔に一人きりになってしまった。まだまだ人のぬくもりが必要なんだ。そうでなければ、あの子は人間ですらなくなってしまう」
 ラサラスの言いたいことは、子どもの僕にもなんとなくわかった。あの年でお仕事が当たり前だと思っているシャート。あの子がこのまま一人きりで暮らして成長したら、どうなってしまうんだろうか。想像するとおそろしい。
「安心していいよ、ラサラス」
 僕は不器用に微笑んで、ラサラスに言う。
「僕もひとりだから、だから、僕はシャートのそばにいたい。そばにいてあげたい。僕にできることは、それくらいしかないけど」
 それくらいでも、それがシャートに必要なことなら。
 ラサラスは泣きそうな顔で笑って、僕の頭を撫でる。ありがとう、と小さく呟かれた声に、僕は小さく頷いた。
 以来、僕の仕事はシャートのそばにいること。彼女のために生きること。なんて単純で、なんて難しい仕事だろう。





 そうしてシャートと共に過ごすようになってから、八年が経った。
 僕は毎日、シャートに会いに行く。出会ってからというもの、会わなかった日はない。あまりにも当たり前すぎて、苦に思うこともなかった。
 珍しく早起きしていたシャートは、僕の姿を見るなり嬉しそうに笑った。
「今日はちょっとだけがんばったの。偉い?」
「偉い偉い」
 褒めて欲しそうなシャートの頭を撫でる。巫女様の頭を撫でるなんて――幼い頃に感じた抵抗感なんて、いつしかなくなっていた。ナシラは、今日はシャートに早々に追い出されてしまったのだろうか。母のように、姉のように口うるさいナシラを、シャートは最近うっとうしいと言っている。まるで子どもの反抗期だ。
「今日だね?」
 シャートは僕の服のポケットを見つめて、確認した。僕も微笑んで、ポケットの中のものに触れる。あたたかい。
 それは、まるで脈打つように光り始めている。母さんの星だ。落ちた星は、数日間は光り続けているものの、その後はただの石ころのように輝きを失う。星が輝きを取り戻すのは、空に還る合図だ。
「ベランダに出ようか」
 母さんの星は、シャートと二人で見送ろうと約束していた。シャートは気軽に塔の外へ出ることのできないので、必然的に見送る場所は決まる。島の中で一番高い塔の最上階にある、小さなベランダ。
 二人で立つには狭いくらいの空間だ。けれどシャートはそんなもの気にならないらしい。強い風でシャートが飛ばされないように、後ろから抱きしめるように支えた。細いシャートは冗談抜きで吹き飛ばされてしまいそうだった。
「触ってもいい?」
 僕が握り締めている母さんの星を見て、シャートが問う。
「いいよ」
 シャートはそっと、母さんの星に触れる。淡い光は、シャートが触れるたびにくすぐったそうに瞬いた。
「アルコルを生んでくれて、ありがとう」
 その言葉に、僕の胸は苦しくなった。ああ、そうか。今度こそ本当に、母さんとはお別れなのか。悲しいわけではないのに、言いようのない感情が湧きあがってくる。星が空に還るということは、どこかで生まれ変わるということ。喜ばしいことだけど、素直に喜べない。
 手の中の星が、動き始めた。上へ上へ、空へと浮き上がる。手のひらから少しずつぬくもりが去っていくのが切ないような嬉しいような、複雑な気持ちだった。
「母さん」
 暗い夜空に漂う星に、呼びかける。ぴたりと、星の動きが止まった。まだ僕の声に応えてくれるんだなぁ、と微笑む。

「……ありがとう」

 さよならと言うのは、何か違う気がして、僕は結局シャートと同じ言葉を選んだ。ありがとう、僕を生んでくれて。ありがとう、傍にいてくれて。たくさんの感謝を伝えるには、その言葉しかなかった。
 星は一瞬だけ強く輝いて、その後は何かを振り切るように勢いよく空へと浮かんで行った。徐々に速度をあげて、最後には流れ星のような速さになって。
 ありがとう、母さん。僕は、生まれてきてよかったよ。家族はもういないけど、一人じゃないから。僕は、シャートに出会えたから。

 もう、大丈夫だよ。

 藍色の空で輝く星たちを見つめながら、僕は何度も何度も心の中で呟いた。


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