喫茶店でたまたま会った一人のおじいさん。
雪の様に白い髪をしたおじいさん。
黒ぶちメガネが印象のおじいさん。
「昔、ここは焼け野原だったんだ」
窓から外の景色を見ながらおじいさんはそう言った。
けれど、窓の外はとてもじゃないけどそこが焼け野原があった事すら信じられないくらい平和で穏やかな景色が広がる。
大きな噴水の側を、仲良く歩く恋人達や楽しげに笑ってる学生、ベビーカーを押してる若い女性が行き交っていた。
おじいさんの瞳は、その景色じゃないどこか遠くを見ている様で……。何か想いを馳せている様に見えた。
「写真撮っても良いですか?」
おじいさんは大きなカメラを持って店員さんに聞いた。
店員さんは、良いですよと笑って答えた。
ありがとうとおじいさんは言った。
静かな店内におじいさんが切るシャッターの音と店員さんが入れる珈琲の香りが広がった。
カシャカシャと景色を写すおじいさんは何を想いながらこの景色を見つめているのだろう?
目まぐるしく移り変わるこの景色に何を感じているのだろう?
私が彼くらいになる頃に、この景色はどうなっているのだろう?
願わくば、この空の美しさと人の温かさだけは変わらないでほしい。
そう一人静かに祈った。
ある午後の昼下がり……。
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