第七話「学園祭の準備」 4
学園祭が二十日後に変更になった事を聞いた者達は驚いていた。かなりショックだったのかもしれない。
何の都合なのかも分からないが、十日後ではなく二十日後となったのは事実。
一部の者は反応は無かった。クラスの中には学園祭までの日が延び、喜んでいる者も居る。
その騒がしい中に立っている涼先生は両手で「パン!」と思いっきり音をならす。するとさっきまで騒がしかった生徒達は静かになった。
「ったく、静かにしろー! 当日まで長引いたとしても、学園祭やらないわけじゃないだろー!?」
大声で涼先生は生徒達に言う。
生徒達はそれを聞くと
「そうだよね、やらないわけじゃいんだし……」
「ちょっと今まで言ってた事が恥かしいかも……?」
「なーんだ、やるのか」
「どうせなら中止になって今年はナシになればいいのにー」
等、色々ぼやき始めたのだ。
少々時間が経つと、雨音は小声で言った。
「倉本さん、よかったね」
揺に話しかけた。
「何が?」
「学園祭当日まで時間が延びて」
笑顔で雨音は揺に言う。
「ああ……そうだな…」、と揺は呟く。
雨音と揺が会話している事に気付いた生徒は雨音を
「何よ仲良さそうに……」
「水音の奴、仲良いからって自慢しているのかしら?」
「水音のクセに……」
わざと聞こえるくらいのトーンでそう言いながら雨音をジロジロと睨む。
睨まれている雨音は少し気分悪くなり、揺と会話するのを止める。
そんな雨音に気付いた揺は少しだけ、雨音の事が心配になり雨音を見た。
だが 見るのは少しだけにしておく。雨音の為らしい。
――――――――――――――――――
学校が終わった。
虹ノ空色学園は天気が良い。雨が降る様子も無い。
だが、雲が少し怪しい色をしていた。皆、それに気付かないか気にしないまま、さっさと家に帰り、寮に居る生徒は寮に帰る。
一年一組 教室。
「あれ、水音。今日まだ帰らないのか?? それに今週の掃除当番は……」
心配そうに帰ろうとする揺が教室で一人掃除している雨音に訊く。
「うん……古河さん達、今日、大事な用事があるんだって……(本当の事言ったら怒られちゃう……)」
そう。本当の掃除当番は都子、空来、麻子 の三人なのだ。
掃除を三人は無理矢理雨音に押し付け、「本当の事言ったらどうなるか分かってるんだろうね」、と脅されている。
だから今ウソを着いて掃除を一生懸命しているのはいいのだが、虹ノ空色学園の教室は一つ一つがかなり広かった。
「(古河達……――って事は 古河と風樹と秋背か……)……、――じゃあ、アタシも手伝うよ」
優しく揺は言った。
「いいよ……。一人で出来るから……」
雨音は少々遠慮している様子。
そんな事も気にせずに揺はほうきを取り出し、自分も掃除をし始めた。
「倉本さん……」と雨音は困った顔をしながら言うが、揺は無視してさっさと掃除をする。
「――アタシさぁ……水音……」
ゴミを掃きながら、揺は雨音に言う。
「何?」
教室にある生徒の机を大変そうに運びながら雨音は返事をした。
この学校の机は少々重い。
雨音はぜぇぜぇ息を切らしている。揺は薄々気付いているが黙っておく。
「アンタのこと なんか知ってる気がするんだよな。アンタはアタシの事知ってる??」
不思議そうな顔で揺は質問した。
「うん、なんかそんな気がする……」と雨音。「ふーん……」と揺は更に返した。
その後、二人はもう何も会話せずにさっさと掃除を済ませた。
「何、水音の奴」
何処からか誰かの声。一年一組の教室の外だった。
人数は1……2……3…――、三人居たのだ。その三人は当たり前 都子 空来 麻子の三人組。
最初に言ったのは麻子。
その後に都子が「まあそうやって笑ってられるのも今のうちなんだから……」とぼやく。
すると都子は空来、麻子を取り巻きにさっさと帰った。
「あれ……??」
教室の窓全て閉め終わった雨音は教室の扉の方を向くとそう呟く。
黒板に書いてある事を全部黒板消しで消しながら揺が「どうかしたか?」と訊く。
あまり心配かけたくない性格な雨音は「ううん、なんでもない」と何も無かった顔で返した。
「水音……、あんまり無理するなよ……」
黒板に書いてある事を消すのを一旦止めて、揺は雨音にかなりの小声で言った。
だが雨音は聞こえなくて「え?」と不思議そうな反応をした。
三十分後、揺と雨音は掃除が終わったので 家に帰る。どうやら今日は一緒には帰らないらしい。
揺は何か用事があるみたいだ。雨音はその用事が少々気になるが大事な用事らしいので訊かないでおく。
「わぁ……雲……なんか怪しいな……。雨降るのかな……」
傘を持っていない雨音は空を見ながら心配そうにぼやく。すると雨がポツポツと降ってきた。
その雨粒が雨音の右の頬に落ちてくる。雨粒に気付いた雨音は驚いてしまい、
「うわっ……、最悪だ……。降ってきた……」
と焦りながら言った。続けて「走って帰ろうかな……」と呟く。
だがしかし、走って帰ろうとしたその時――
ザァアア……!!
雨は小降りから大降りになってきた。雨音はかなり焦っている。
今日は雨が降らない筈なのに、突然降ってきたのだ。傘も折畳傘も持ってきてない。
「どうしよう……大降りになってきた……。早く帰らな……――………そうだ…倉本さんは……傘、持って来てないよね……。よし……!」
何かを思いついた雨音は物凄いスピードで 家に帰って行く。
急いで家まで走ったら、十分程度で着いた。何時もなら学校から雨音の家まで歩いていけば三十分くらいは時間がかかる。
そして雨音は家の玄関の鍵を開け、鞄をその辺に投げ、自分の傘を一本だけ差し、もう一本別の傘を持って再び学校へ向かう。
「――……倉本さんっ!」
「……水音? どうした??」
「『どうした』じゃないよ!! はい、これ!!」
雨音は右手に持っている黒い傘を揺に渡した。
渡された揺は「何……??」と訊く。雨音は「濡れたら風邪ひく!!」と答えた。
その言葉を聞いた揺は
「ぷぷっ……!」
思わず笑ってしまった。
「な…何が可笑しいの倉本さん!」
「だってさ 『濡れたら風邪ひく』ってなんかね……」
廻りを気にせずに揺はコソコソと笑い続ける。
なんだか雨音は笑われているのが恥かしくて少しだけ怒り、笑わないで! と言い続ける。
楽しそうにケンカしている中、電柱の影からそれを誰かが観ていた。
「何、アレ……」
「楽しそうに……」
「生意気ぃ〜…」
三人組が雨音の悪口を言っていた。するとその三人の中の一人が……
「ちょっと耳貸して……。……――」
「いいねそれ」
「賛成!」
朝。
「わっわっ……遅刻遅刻……!!」
髪の毛をクシで梳きながら、雨音は慌てて着替える。
どうやら今日は何時もより遅く起きてしまったようだ。遅刻寸前だった。
朝御飯をさっさと食べ終わった雨音は急いで学校へと向かう。
通学路。
雨音は急いで走っている。昨日、走った位の速度だ。
今 雨音が走っている目の前には石段が在る。
すると雨音の目の前に石段を調度下りようとする揺が居た。
「(あっ、倉本さんだ……)くら……――」
ドン!!
「え?! きゃああ!!(倉本さ……)」
「……!!」 |