第六十二話「桜花の過去 〜“倉本さん”〜」 4
「えっと…あの…何?」
「水音、前から思ってたんだけどよ、お前って何かとムカつくんだよな」
一人の男子は、いじめられてる女の子に見下した感じで言ったわ。
目付きは睨んでいる眼だったらしいのよ。
いじめられてる女の子をね、桜花含めて五、六人くらいの男女が囲んでいたの。
するとその“いじめっ子”軍団の一人の女子がいじめられてる女の子に近づき……。
「皆知ってる? 水音さんってさ、前まで自分の事なんて呼んでたと思う?」
って、いじめられてるコの過去を無理矢理言おうとしたの。
そのコはいじめられてるコと、今まで同じクラスだったらしいのよ。
「え? なんて言ってたの?」
「教えて教えて」
興味心身の女子たちの声。いじめられてる女の子が汗って座ってるとこを立ち上がり
「ちょ…やめてよ! なんでそんなことするの?!」
焦りながら言うのをとめようとしたの。
「うるせぇよ!!」
震えているいじめられてる女の子を男子は…突き飛ばした。
「きゃあ!」
突き飛ばされた女の子は悲鳴をあげたの。悲鳴と言っても、結構小声だったらしいのよ。
その時。
――ドゴ!!
「いて! 誰だよ、今俺殴ったの!」
その男子を、誰かが殴った。
その殴った人物は…――。
「お前等人をイジメて楽しいのか? ダサいな、そんな事して。知ってたか? イジメをする奴って結構ヘタレってコト…――」
さっきも言ったかしら? 転校生の“倉本さん”だったらしいわ。
その殴りは…桜花の話によると、女子とは思えない程の威力だったらしいの。
と、言っても殴られたのは桜花自身じゃないけれどもね。
「な…なんやお前っ! また邪魔する気なん!?」
「“邪魔”? まさか。“助けに来た”んだよ」
「(え…?)」
“倉本さん”が、助けに来たって言った瞬間、いじめられてる女の子は、かなり嬉しそうな顔をしていたらしくてね……。
その顔を見た途端桜花はだんだん苛々してきて…、蹴り付けてやろうとしたみたい。
けれどもそれは…蹴られる瞬間、“倉本さん”が止めた。
『やめろ』。
って。
「え!?」
桜羅からその話を聞くと、雨音は公園にあるベンチから勢いよく立ち上がる。
桜羅は驚く。
「どうかしたの? 雨音ちゃん」
「あ…の、私、それと同じ内容の夢をみたことがあるんです!!」
「! まあ…偶然ね…。吃驚だわ」
「“倉本さん”て、やっぱり“倉本 揺”さんのことなんですか…」
「ええ。揺ちゃんのことよ」
「!!」
――嘘…。知らなかった。そんなの。
「でもね、まだまだ続くの。聞いてくれる?」
桜羅に言われると雨音はコクリとうなずいた。
そんなことがあった次の日……。いじめられていた子は何かの都合で学校から去って行った…。
それからのこと、桜花も揺ちゃんも…まったく知らない。
いいえ。知らないと言うか、知ることが出来る筈がないわ。
「――が転校してもうたな」
「うん」
「せいせいしたのは確かや。でもお楽しみがなくなってしもうた。どないしよか」
いじめられていた子が転校したあと、桜花と桜花と一緒に居る子たちは…いじめの会議をしていた。
勿論、今の桜花にとって、これはかなりばかばかしいことだったみたいでね。
「おい」
「! 倉本っ!」
「お前、またいじめなんて馬鹿なことするつもりだな?」
「フン。あんたには関係ないやろ」
“だいたい、お前転校生のクセに生意気やで??
ウチが何しようが勝手やないか??
お前やて自分のやることに文句言われるの、嫌やろ??
それと一緒や”
桜花はそう言い返した。
だけど揺ちゃんは、そのまま消え去ろうとはしなかった。
「ふざけんな!!!!」
「!!!」
「お前、やってもいいこととやってはいけないことすら分かんねぇのか!?
お前がやってることで……傷つく人が沢山居るんだぞ!!! そう分かっててもやるって言うのか!?」
「……せや」
「なっ…」
「“人が傷つく”? そんな簡単な理屈あったらなぁ、この世にいじめなんて存在せぇへんねん。
だいたい、生きてる限り誰かを傷つけるなんて四六時中や。
お前やて過去に傷つけたりした人居るんやないか??」
桜花にそういわれると、揺ちゃんは“黙れ!”。そう言い返したんだって。
これがきっかけでね……揺ちゃんがいじめられることになった。 |