第六十一話「桜花の過去 〜屋上=地獄〜」 3
そのまま連れてかれてしまった、いじめを受けていたコ――。
桜花は――言っていたわ。
“屋上=地獄”
――と。
でもまあこれはね……いじめられてるコにとって、らしいのよ。桜花は何故かいじめる側のことも、いじめられる側のこともよく知っているのよ…。
それでね――
「ホンッマ目障り。なんなん。あんた何様のつもりなん。ウチのまねして楽しいんか? マネの何が楽しい言うんや」
「まねやないって言うとるもん…」
「ハァ? もう聞き飽きたわ。その言い訳。これからお遊びが出来るわぁ。なぁみんな!!」
みんなの答えは――同じだったわ。「イエス」だった。
それで続きなんだけれども
「――!! お前なんなん!!」
いじめられてるコの名前を呼んだ桜花。
ビク!! としながら返事をしたいじめられてる子。
今回は二人きりになったらしいの。
「探し物しとるんか?」
「……別に」
「これんことやろ??」
「あ! 私の…星のアクセ!」
「返してほしけりゃとってみぃや!!」
いじめられてるコをバカにしながらそのコが持っていた星のアクセを、窓から思い切り投げ飛ばしたの――。
勿論、そのいじめられっ子は、ショックで涙流して、そこをみんなで馬鹿にした。
“――そんなことが何度あったことか。
あたしは後悔したよ。
なんでそんなことしたのかなって。
いじめなんてして意味あるのかな?
今あたしの友達でいじめられてるコがいるんだけど……そのコをいじめてる人たちに注意してる。
けれども人のことは言えないんだよ――”
桜花はそう言っていたわ。
“――どんな理由があっても。どんなことがあっても。恨みがあっても。
いじめなんて、絶対にしちゃいけないんだって、あたしは思う。
お母さんだってそうでしょ? 悪いことしてない人、酷い目にあわせるのは、よくない。
それを『あんたのせい』って言うのもおかしいんだって、思う。
『虹ノ空色学園』はいじめのない学校って言うけれども……あたしは、嘘だと思う”
とも言っていたわ。
水音さん。聞かなかったかしら?? 桜花の口癖。
『いじめなんて、大嫌い』とか『いじめはおかしい』とか。
――そう。言っていたのね。
やっぱり雨音ちゃんと桜花は友達ね?
――違う?
まさか。
桜花はあなたのこと、『ずっと友達』って言ってたわ。
大丈夫よ。
続きなんだけれども…。
ある日突然、“倉本”さんてコが近所に引越してきて、石火山小学校に転校してきたの。
でね、どうでもいい話なんだけれども、その倉本さんてコ、桜花の親友なの。
小学校時代と、高校時代。
中学時代はね――学校が別れてしまってあまり会えなかったそうよ。
けれども交流はしていたって話ね。
「なんなんあんた。しぶとそうやなぁ?」
「フン。いじめなんてバカなことしてるお前らと話してる時間なんてないよ」
「なっ……んなん!! いい加減にせぇへんか!! うちお前のこと気に入らん!!」
「て、その“倉本”さんに向かって言ったのよ。」
雨音は驚いた。
“倉本”さん――それは…揺の、いいや。揺と同じ苗字だったから。
気になった雨音は『倉本さんて、倉本 揺さん…のことですか?』と訪ねる。
「そうね。そのことは話しを聞いてければ分かると思うわ」
そういわれたので雨音は分かる時を待つことにした。
でね、それからと言うものの、そのいじめられていた女の子はいじめられ続けたの。
「あんたブスやね」
「…そ…それがどないしたって言うんっ」
「ウチのまねして腹立つわぁ」
“マネ”と疑われた次は“ブスだ”って馬鹿にしてたみたいで……。
そのことを話してた時、桜花は言っていたわ。
『“あの子”は――ブスなんかじゃなかった。
ううん。あたしのほうがブスよね。
大事なのは見た目じゃなくて中身……。
あの頃も今も、あたしの心は汚れていて、“ブス”だった』
てね。
私も……その言葉も『大事なのは中身ね』って思ったわ。
雨音ちゃんもそう思わない?
大事なのは見た目じゃなくて心って。
あ、桜花が『そう』だってわかったのは、その時こんなことがあったから。
「ブスは学校来んでもエエんで?」
「そうそう!!」
「つーかお前ウザいし。――ってうぜぇよな!」
『コイツはブスだ』
『もしかして全体的にブス?』
『将来期待できないよね』
『ていうか気持ち悪くない? うじうじしてるし、トロイし』
『見てるだけでムカつくよねー』
そんな悪口や暴言が続いたらしくてね……。あの頃の桜花はそれを楽しんでいた。
そんなとき…。
「おい! お前ら!!」
「あ、転校生の倉本か。なんなん? お前も遊びに参加したいん?」
パァン!!
転校生の“倉本さん”は、桜花を思い切り叩いたわ。
その時、“倉本さん”は本気で怒っていたらしいの。
雨音ちゃん――、あなたをいじめているって言うのもあるし、いじめをしているって言うのもあったみたいなのよ。
だけど、桜花の話だと違ったみたい。
「な…何すんねん!!!!」
「うるさい!! お前ら、いい加減にしろよ!! いじめなんてして楽しいのか!?」
「あ、あんたには関係ないやろ!!」
「いいや。関係あるね。クラスメートのことだからな。もしかしてお前ら、友達が1人も居ないからいじめなんてバカなことしてるのか? ――そうだったら、かわいそうだな」
“倉本さん”は、桜花にきっぱりはっきりとそういってやった――。
桜花はその言葉にかなり怒り狂った。
そのあと、桜花と“倉本さん”は、殴り合いをし始めたらしくてね……。
それから数十分後。担任の先生が来て、二人は物凄く怒られたって話よ。
「なんなん、アンタ。しつこいわ。あんたんせいでウチまで怒られてしもた」
「知るかよ。丁度よかったんじゃないのか?」
「っ…うっさいわ!! ボケ!!」
「うるさくないよ。アタシは。だいたい。先に手だしたのはお前」
「うっさいって言うとるやろうが!! 死ね!」
桜花は……あの頃の桜花は……。口が悪かったわ。
私たちにもどうしようも出来ないくらい、ね。
『死ね』――なんていわれたけど、倉本さんは
『死ねって言うの。やめたほうがいいぜ?』。
『何時か後悔するのは自分だから』。
『現在の自分のためにも未来の自分の為にも、なおしたほうがいいんじゃないのか?』。
『“死ね”って言葉は。いうのもいわれるのも辛いからな』。
って。色々桜花に言ってたみたいなの。
桜花はその言葉が励ましの言葉でもあった……。
だけどそれは今の桜花にとっては。昔の桜花には全然励みにもならなかった。
そこで……
「もう本気で切れたわ!! アンタちょっと来てくれへん?」
「な…なんなんよ」
桜花たちがいじめてるコを、屋上に連れてった。 |