第六十話「桜花の過去 〜いじめ総隊長〜」 2
――ええ。そう。いじめ総隊長――いじめのリーダーね…。
雨音ちゃん――貴方なら知っているでしょう? この言葉。
あ。ごめんなさいね。こんなこと聞いちゃって。
――いじめ総隊長。それは石火山町でのみ使われているのかしら?
石火山小学校では、いじめのリーダーは『いじめ総隊長』と呼ばれているらしいの。
桜花は……それになったって言ってたわ。
だけど、小学生の頃は、言わなかった。ただ『総隊長になった』だけ。
言ってきたのはつい最近。
「桜花? 総隊長って何?」
――つい最近言われた時は驚いたわ。
『関係ない』とは言われたけど、やっぱり気になるじゃない?
子供のことですもの……。
「うっさいわ!! お母さんには関係ないやろうが!!」
訊くと、そうやって桜花の肩に触れようとした私の手は、すぐに叩かれたわね…。
あ、桜花はね……小さい頃、私の夫。つまり父を亡くしてしまったの。
その所為で、甘やかして育てた所為なのよ。こんな性格になってしまった……。
ちょっと悪口っぽく聞こえるけど、雨音ちゃんには関係ないだろうけど、やっぱり――。
“やっぱり”――までは言えないんだけれども。
これが桜花が教えてくれた“すべて”――。
「“全て”?」
「ええ。そう。全て、よ」
桜羅は言った。一旦目を閉じ、もう一度あけると、桜羅は再び話を始めた。
「あんた、もう学校来んでくれぇへん? 目障りやねん」
「そんなこと言われたって……私…」
「何。ウチに逆らう気? だいたいなんやねん。ウチが転校してきた次の日…つまり今日、ウチのまねして関西弁使ぉとる。ほんとなんやねん」
「…私だって………関西弁もともと使っておったもん…」
「そぉかいや。中途半端な関西弁使うのが腹立つんや。なあ? みんな」
桜花がある1人の女の子にそう言った。
でね……『なぁ?』って桜花が聞いたあと、周りに居た子皆そうそうって言ってたそうよ。
『ある1人の女の子』って言うのは、あとで話すわね……“雨音ちゃん”。
「じゃ……じゃあなんなん? 関西弁は香咲さんのもんなん? それに、私は関西弁使ぉとったのは元々やし…別に香咲さ――」
「うるさいうるさいうるさーい!!!」
叫んだ瞬間、1人の女の子はびっくりしたみたいなの。
「あんた昨日関西弁使ぉてなかったやろうが!!!!」
「……使ってたもん!」
「そうなん? みんな」
桜花がそう質問した瞬間、答えは
『えー? そうだったっけ?』
とか
『使ってた…と言うか、初めて訊くぜ?』
『だよね。だいたい――さんに関西弁にあわなーい』
って言ってたの……。他にも色々。
名前は…さっきの風の所為で聞こえなかったみたいね。だけど、雨音ちゃん。今はまだ聞かないほうがいいわ。
「ていうか、本来ならあんたん口調なんてどうでもいいねん。でもウチのまねしてることに腹が立つわ」
「……まねじゃないって言っとるやん!」
「ぷっ…。――さん、主張もいいとこだよ。まねじゃないまねじゃないって言ってるってことは、まねなんでしょ?」
「そうだぜー、――よぉ。俺は、お前が嘘を幾つもついてること知ってるぜ!!」
「いじめ総隊長だったって言う話の一部がこれよ」
桜羅は雨音をじーっと見つめながら言った。
このとき、雨音はなんだか似たようなことを知っている気がした。
けれども、小学校のことは思い出したくもなかった。
そして――“1人の女の子”の名前は、風によって聞こえない。
それでね……しばらくそんな日々が続いたみたいなのよ。
そこである日…。
「はっ。ほんまウザいにも程があるわ。わーっとる? ――。あんたの居場所なんて、ここにあらへんのや!!!」
「っ……知っとるわ! んなこと!!!!」
「!」
「アンタんほうがうっさい!! うちがあんたになんかしたって言うん!? だいたいうちは元々関西弁なんや!! 真似だって証拠、見せてやろうか!?」
1人の女の子は、今までの人格が嘘だったかの様に、そう叫んだみたいなの。
だけど、これが原因でいじめは悪化したみたいで、桜花は酷くしたみたいで。
普段やっていたことは、ちょっと悪戯で呼び出したり、無視したりとか……そのくらいのことだったらしいのよ。
だけど桜花は――。
このことにかなり腹立てたらしくてね……。もし私が、あの時、このことを知っていれば、きっと、そのいじめられてる子と…桜花を助けたわ。
いじめってね……意味もなくやるって言うのが、大半なんだろうけど、両方苦しんでるって言うのもあるらしいのよ。
いじめっ子。いじめられっ子。
どっちも……。
さっきも言ったけれど、これは一部の人たちのこと。大半が面白がってやっているらしいのよ。
ある日突然……。
『 バカ ブス 死ね 二度と学校来るな』
赤いペンキで…桜花はいじめられてる子の机にそう書いた。
いいえ、そう書くよう。他の子に言ったみたいで……。
クラスの者は、助けるとか、慰めると言うより、クスクスと、馬鹿にするように笑ったみたい…。
「な…酷い……なんなんこれ」
「ハッ。いいザマやなぁ? ――さん? ちょっと来てもらおうか?」
って言われて、とりあえずそのいじめらてた子は……そのまま桜花や桜花の仲間に言われるがまま連れてかれた。 |