第五十二話「最悪の事態、再び」
ギリギリと爪を噛みながら、“影”に隠れた者はそうぼやいた。その後、そこから姿を消す。
――次の日。学校。一年一組教室。
「っっっっ!!」
ザワザワ…。
自分の机を見た雨音は、口に手を当てて、驚いていた。
何故なら机の上には『バカ』、『死ね』等の暴言が、大文字で複数描いてあったから。
「何…これ……」
それ以外にも、やられていた。
昨日、雨音が学校に置きっぱなしにしていた一冊のノート。
どろどろに濡れていて、更には汚れがついていて。しかもビリビリと中身が敗れているではないか。
唖然とした雨音の隣に居た揺は、『誰がやったんだ?』と堂々と言う。
ザワッッッ!!
その所為で教室中は更に驚いた。
「誰が、水音の机に落書きして、ノートぐちゃぐちゃにした??」
怖い顔をして揺は言う。
教室内の空気がぴりぴりと痛んだ。まるで静電気の様に。
「っっ…」
ザワザワザワ……。
喋ろうとするものは居ない。
と言うことは、このクラス内には居ないのか、と思った揺。
しかし、喋らないから犯人、と言うこともある。次は都子の席へと近付いた。
「あら、倉本さんどうしたの? まさか友達になってくれるのォ?」
わざとらしい口調で都子は言った。
「お前らだろ?? 机に落書きしたりノートぐちゃぐちゃにしたのは」
「やーね。疑う気?」
「お前以外、誰がやるっていうんだ??」
「あらやだ倉本さん。水音さんにああいうことする人は、このクラス中……――いいえ、この学校中の人殆どがしているでしょう? この前なんか教頭先生に呼び出されて、校長に怒られてたんだから。演技の悪い事言わないで」
あたしやってないもーん。そんな表情で、都子は言った。
わざとらしいから都子がやった、と言う面もあるが、なんとなく違う気がする揺。
がしかし、一番いじめているのは都子。都子がやったという可能性が、一番高いのだ。
揺はもう少し都子から話を聞き、様子を伺うことにした。
都子は、にっこりとわざとらしい微笑みで、じーっと揺を見つめ、雨音を睨んでいた。
「じゃあ、お前犯人見てないか??」
「やーねー。そんな早く学校来てるわけないわよ。倉本さん。そんなことより一緒にお楽しみをしない? 倉本さんならきっと上手く行くわ。フフッ」
「………お前がやってないっていうんなら、風樹と、秋背。他に奈種や鈴城とかは、どうなんだよ?? お前の仲間じゃないのか?」
ニヤリ、と勝ち誇った笑いを見せ、揺は腕組しながら言った。
流石にそういわれると都子もカッとなる。
カッとなったが、まだ怒りの頂点に達してない為、暴力等は振らなかった。
「(流石にこうとなればヤバいわね…)――あたし、犯人知ってるわよっっ!」
「! 誰だ」
「あたし、見たんだから! 本当に見たのよっ!! 水音の机とノートメチャクチャにしたのは、水音自身なのよ!!! あたし昨日見たわ! 夕方部活で帰り遅くなった時、教室には水音が立ってたのよ!」
「なっ……」「え…!?」
雨音と揺はどうじに驚きの声を上げる。
そんな2人を見て、都子はクスクスと心の中で笑ってた。
それと同時にクラス内は更にざわめき始めた。
ザワッ!!
「やだ。自分でやったんだって」
「そういえばずっと前、自分の下駄箱に押しピン入れてたって噂よ」
「じゃあ自業自得、ってヤツ??ww」
「何、だっさ〜〜ww」
「「「キャハハ!!」」」
最後には必ず下品な笑いで盛り上がるコソコソ話。とは逆に、
「やだ……水音さん自分でやったんだって」
「たしかにちょっとウザいから皆いじめしちゃうかもだよ?」
「だけど自分でやるのにも程ある……」
「サイテー」
「キチク」
「ゲドウ」
本格的に盛り下がっているコソコソ話もあった。
皆、都子の言うことを完全に信じてしまっていた。
「私そんなこ」
雨音がそういいかけると、最後まで聞かずに都子が更に声を出す。
「それにね!! コイツ、この前倉本さんの悪口言ってたわっ! 陰口叩いてたのよ!
『あんなヤツ早く死ねばいいのに』とか『なんで友達になったんだろ』とか『酷い目にあわすならもうちょっと酷くしとけばよかった』、とかね!!」
「なっ……ちょ、待ってよ! 私そんな……」
「そうかよっ!!」
「くら…」
「触るなっっっっ!!」
パァン…。
揺の肩に触れようとしていた雨音。頬を勢いよく引っ叩かれてしまう。
「おい古河っ!」
「なぁに、倉本さん」
「今日から……今日からアタシがいじめにあってやるよ!!」
「「!!」」
ザワッッ!!
「そのかわり、水音を開放してやれ!!!」
「…………フフ…フハハハハハハハハハハハハ!!!! 面白いじゃない。いいわよ、たっぷりといじめてあげるっ!!」
――そんなっ……。倉本さん、なんで……。どうして――!? |